第38話 魔竜王の思惑
魔竜王デッカーに鷲掴みにされ、洞窟内の広い空間に連れてこられたホイズとベイル…
『ほら、着いたぞ』
二人は、その言葉と共に地面に向かって無造作に放り投げられる....
『いだっ!』
『うわっ!』
尻を撫でながら立ち上がるホイズと、ここは何処だとキョロキョロするベイル...
すると、そんな二人に魔竜王デッカーが有無を言わさず訓練内容を言い渡す。
『お前ら二人は、今から一人ずつコイツと戦ってもらう』
そう言ってデッカーが視線を送った先には、サファイヤブルーの髪色をした背に竜の羽を持つ少女がいた。
『おい!ヒメル!こいつらに負けたらライトの所には帰れねぇからな!わかったか!』
『む〜!私は絶対勝って、ご主人様の所に帰る!!』
そう、その少女は魔竜王デッカーに鍛えられて人型のドラゴン、ドラゴノイドへと進化を果たしたヒメルだったのだ。
『へ?ヒメル?お前ヒメルだすか?女の子だったんだすね〜!』
『あ!ホイズのおっちゃん!そうだよ!私、ヒメルだよ!』
『あら~立派になっただな~!オラ嬉しいだーよ』
『えへへ〜!でしょ〜!』
そんな久しぶりに会った、親戚の叔父と姪のようなやり取りをしている二人を見て、次第にデッカーがイライラしだす。
『チッ!オイオイ、お前らはおしゃべりをしに来たのか?くっちゃべってねぇでさっさと戦えや!!』
『でもヒメルは仲間だすしなぁ』
『そうだよね~ホイズのおっちゃん』
二人はデッカーのイラつきもどこ吹く風と、ゆるいトークを続ける。
そして、ついにデッカーは、そんな二人のセリフを聞いて、こめかみに青筋を浮かび上がらせながらブチ切れる....
魔竜王の咆哮と共に。
『ゴルァァァァ!!テメェラ!!それじゃあ俺様が纏めてぶちのめしてやるから、そのままそこで仲良くくっちゃべっとけや!!!』
そんな魔竜王の怒りに呼応するように大気が震え、咆哮交じりの暴言と共に一方的な魔竜王の蹂躙が今ここにスタートした。
怒り狂った魔竜王が放つプレッシャーは先程の比ではない、重力が何倍にも増したような感覚で三人の体を地面に押し付けてゆく。
そして、その動けなくなった三人に容赦なく迫るデッカー
『先ずはテメェだ!』
その言葉と同時にホイズの胴体よりも太い尻尾を、ホイズ目掛けて一直線に振り抜く!
その振り抜いた尾は、まるで強大な鞭のようにしなりをあげて、薙ぎ払うようにホイズの胴体に直撃する。
ズドガァァァァァァァンッ!!
尾撃をまともに食らったホイズは、激しい轟音と共にくの字にその体を曲げながら、激しい勢いで吹き飛んでいく…
『ぶ、ぶはぁ!!』
『次はお前だ!』
そして、次に狙われたのはヒメルだ。デッカーは腕を大きく振り上げ、次の瞬間ヒメルの頭上から圧倒的なスピードと質量を誇る破壊的な拳を振り下ろす。最強の親父のゲンコツだ。
ドゴォォォォォォォォンッ!!
そのゲンコツは、隕石でも降ってきたかのように地面にクレーターを作り出し、直撃したヒメルを地中深くにめり込ませた。
『ギャウッ…』
『お前もついでだ!!』
『え?私も…!!』
え?自分はお喋りしてないのだが....と思ったベイルも見事にロックオンされる。
ベイルに狙いを定めたデッカーは、クルッと後ろ向きに回転したかと思うと、その直後に空気を切り裂くかのような鋭い回し蹴りを放つ!
その回し蹴りは受ける者が、まるで前面から大きな壁が超スピードで迫るかのような錯覚に襲われる....そんな回し蹴りだ。
バキィィィィィィンッ!!
その恐るべき回し蹴りを受けて、まるで猛スピードで暴走する大型車両に轢き飛ばされたかのように吹っ飛ぶベイル
『グ、グハァ…!!』
まさにそれぞれの攻撃が一撃必殺…デッカーはあっという間に三人を叩き潰したのだった
『ふぅ、スッキリした!....オイッお前ら、早く立ち上がって戦え!じゃねぇと俺様がまた動く事になるぜ』
『う、うぅぅ....』
『グ、グルァ....』
『な、何で、私も蹴られたのだ....ぐっ』
魔竜王の檄にフラフラになりながらも立ち上がる三人....
『よし、ヒメルとオークキングのお前!まずお前らが戦え!間違っても手なんか抜くんじゃねぇぞ』
『ホ、ホイズのおっちゃん...い、いくよ!』
『どーんと、こ、こいだーよ....』
やっとヤル気になる二人。
『うわぁぁぁぁぁっ!』
『うがぁぁぁぁぁっ!』
覚悟を決め、お互いを睨み合い雄叫びを上げる....戦いの始まりだ。
体はボロボロ....だが、やらなきゃ魔竜王にやられる....まさに極限状態。
すると、そんな極限状態でホイズの体に異変が起こる....体からドス黒いオーラのようなものが発せられはじめたのだ....
そのホイズの姿を確認した魔竜王が動き出す。
『はい!ストップー!それだよ!それー!オークキングのお前!その感覚を維持しろ!そしたらお前は進化できる...分かったな!』
実は魔竜王はただ闇雲に機嫌の良し悪しで暴れていた訳ではなかった。
ある程度事前にホイズ達の状態を確認して、どのような負荷を与えれば進化の兆しが見られるのか分かった上で、無茶振りや極限のストレスを与えていたのだ。
『不思議な感覚だーよ....』
『ホイズとかいったか?お前はどっかそっちの隅っこで、その状態を維持しながらヒメルと戦っとけ!ヒメル!そいつのためだ、絶対に手は抜くなよ』
『は〜い!わかった〜』
返事をしたヒメルはホイズを連れて、少し離れた場所に移動を開始する。
それを見届けたデッカーは、ベイルに視線を移し不適な笑みを浮かべる。
『ホイズとやらは、ライトと一緒に戦ってたみたいだからよぉ、あんな感じで進化の兆しが現れたが、お前はもっとやらないとダメだな....まだまだ力が足りてねぇ。これから、ちぃとばかし厳しめにやらないとダメなんだが、覚悟はあるのか?』
『ち、力を手に入れる為なら....そして、魔王様を助ける為なら、どんな厳しい試練も乗り越えてみせよう!』
『よーし、良く言った!ここからは俺様の特別訓練だ!泣いても許さねぇから、気張って着いて来いよ!』
邪悪な笑みを浮かべながら特別訓練の開始を告げるデッカー....ベイルの厳しい進化への歩みが始まるのだった。




