第37話 追加訓練生の招集
身に纏う純白の鎧の音を鳴らし、ゆっくりとライトの元へ歩み寄ってくるフランジュ。
『如何でしたか?なにか掴めましたか?』
ライトに、コツは掴めたかと尋ねる。
『いえ、全然…目で追う事も出来ませんでした…』
『そうですか…流石に1回では難しいですよね…フフフ』
ライトが見切れなかったことに少し嬉しそうにするフランジュ。
『ですが、この技が勇者の剣技の基本となる技です。光の力を高めるという事においてもそうですが、この技から様々な他の剣技へと繋げていくこともできますので、先ずはこの技、ピアスオブライトを覚えて頂く形になります』
『はい、頑張ります!』
『ですが、先ほど申し上げたように、ピアスオブライトは光の力を高めて放つ技…アビスフレアの時と同様、光と闇のどちらかの力に振り切ることが出来ないライトさんは、恐らく光の力を高め切る事は難しいでしょう…ですので、今度は最初から高め切れない光の力の分を闇の力で補う形で練習してみてはどうでしょうか?』
『なるほど…ピアスオブライトを原型にした新しい技に取り組むという事ですね…』
『そうです、先ずはそれを成さなければ次の技への訓練へと進むこともできません。ですので、当面はピアスオブライトを基にした新技の開発と訓練、そして剣術を磨く事に集中してみましょうか』
『分かりました!宜しくお願いします!』
『はい、こちらこそ宜しくお願い致します』
抽象的なプリプリガイコツのレイドとは違い、分かりやすく丁寧な説明のフランジュ…
そのフランジュを剣術の師として技を習得し、剣の腕を磨いていく…ライトはそう決意したのだった。
一方その頃、ホイズとベイル達は…
『ホイズ!早く先に進むぞ!』
『もう少しここで肉を食べるだーよ!』
『馬鹿者!そう言ってから、どの位の時間が経っていると思う!そんな事では訓練の時間が無くなるではないか!』
『だって、ベイルもハクの所で時間を使っていただーよ!』
『えぇい!それとこれとでは話が違う!先へ進むぞ!今すぐにだ!』
ホイズとベイルはコントでもやっているかのようなやり取りをしていた…
肉を食べたいホイズ、訓練の為先に進みたいベイルの攻防戦が繰り広げられている。
すると、上空から大きな影が二人に覆いかぶさり、それと同時にホイズとベイルが駐留している36階層に息をするのも困難になるほどの重苦しいプレッシャーが放たれる…
『グッ…な、何だ…』
『ぐあぁぁぁぁぁぁ…』
そのプレッシャーに立っていられず片膝をつき、その場にしゃがみ込む二人。
他の魔王軍の兵士たちはもはや気を失う者も出てきている。
『いったい何が起きている…』
そう、ベイルが言葉を漏らした瞬間…その原因が目の前に現れる。
『よぉ!お前らライトの仲間だろ?お前ら二人は少しばかり見込みがありそうだからよぉ、俺様が直々に鍛えてやるよ』
横柄で高圧的な態度をとりながら、そんな言葉を放ち二人の前に姿を現す魔竜王デッカー。
『なっ!!なんだ…こやつは…グァ…』
その巨大な体躯と今にも消し飛ばされそうな圧力に目を見開きながら驚くベイル…
『あ、あれは…魔竜王様だーよ…でも前はこんなに凄い力を放っていなかっただーよ…苦しいだーよ』
前に会った魔竜王は、もっと気軽な感じだったと文句を言うホイズ…
『おぉ!お前は前に会っているな!…よしっ!こんなところか…ふぅ疲れた…』
その言葉と共に圧力を消し去るデッカー….それと同時に押し潰されそうなまでのプレッシャーから解き放たれる魔王軍の面々。
『ハァハァ...ハァハァ、魔竜王…だと』
『魔竜王様〜、酷いだーよ』
滴り落ちるほどの冷や汗をかき、息を荒くするベイルと酷い事をすると怒り出すホイズ。
『そうプンスカプンスカ怒るなよ、お前達が鍛えるに値するか少しばかり試しただけだろうが』
話の流れが掴めず、困惑する二人を他所にデッカーは話を進める。
『まぁ、でもギリギリ合格ってところだな…お前ら二人は、ここから下に進んでいっても大した修行にはならんだろう…だから俺が鍛えてやる!ありがたく思え!』
『私達を鍛えると仰られるのか…魔竜王である貴方が…』
『だから、そうだと言っているだろう!話の分からん奴め!でもそこら辺で伸びてる奴らは知らんぞ!有象無象共はここから下に進むだけでもある程度の力をつける事は出来るだろうから、それで十分だ!だから俺様が鍛えてやるのはお前ら二人だけだ!いいな』
そう言うと、俺様も忙しいのにフランジュの奴はまったくめんどくさい事を押し付けやがって…といった感じでブツブツと文句を言いだす魔竜王。
『しょ、承知致した…』
『仕方ないからついていくだーよ』
『よしよし、やっと理解しやがったか!じゃあさっさと行くぞ!』
魔竜王デッカーの圧に屈して特別訓練の申し出を受ける二人。
二人は辛うじて気を失わずに堪えていた兵士に事情を説明し、今後の訓練を託す。
そして、ガッシリと魔竜王デッカーに鷲掴みにされた二人は36階層に設営された拠点から、あっという間に連れ去られるのだった…
『ふぅ、めんどくせぇ事になってきやがったぜ…でも仕方ねぇ、ガルスの為だ…さっさとコイツら鍛えて助けに行かせるか!』
超高速で飛行しながらデッカーはそう呟いた…
そう、なんだかんだ言いながらデッカーは友人のガルスの事が心配で仕方なかったのだった。




