第36話 勇者の剣技
魔王国で魅惑のボディーの開発室長シュプールが、その体と同じくらい凶悪な機銃を量産し始めた。
これが多数防壁に配備されれば、おいそれと敵の侵攻を許す事はないだろう。
結界も国を覆うほど大きく広げた事から、相手の遠距離攻撃として用いられる魔法もある程度は弾く事が出来るはず….多分…
したがって、コチラは遠くから一方的に攻撃を仕掛けられるという訳だ。
あわよくばそれで殲滅、出来なくとも数は減らせるだろう。
そうすれば味方の損害も減らす事が出来る….ライトはそう思って防衛設備を整えていたのだ。
防衛設備は完璧になりつつある….後は自身と仲間達がさらに力をつけるだけだ、そうすれば国を守り抜くことも魔王を助け出すことも出来る。
そう、現在行われている魔王軍戦力増強訓練が終われば….
ー異空間ー
何度も何度も繰り返し訓練を行った結果、ライトはディバインアビスフレイムを実戦で使えるまでの速度で放てるようになっていた。
今は訓練の合間の休憩時間だ。
『そういえば聞きたかったんですが、魔王国では魔王ガルスが魔竜王を討ち取って角を戦利品に持ち帰ったという事になってるんですが、どういう事なんでしょうか....』
ライトが気になっていた事を口にする。
『あぁ、それはじゃな....かなり前になるじゃろうか、ガルスとデッカーが十番勝負とか言いよってな、どっちが強いか勝負をしだしたんじゃ。勝負はガルスが5勝、デッカー5勝と引き分けたんじゃが、納得がいかんと言って最後の一戦を行ったんじゃ。その際に力が入っておったガルスがデッカーの角をへし折ってしまってな....それで勝負有りとガルスが勝ち越したんじゃが、ガルスは余程嬉しかったのか国に角を持ち帰ってデッカーに勝ったと言いふらしたんじゃな....それを聞いた奴らが魔王が魔竜王を討ち取ったと伝説のように語り出したという訳じゃ』
『なるほど、勝負に勝ったというのを討ち取ったと、聞いた人が間違えて解釈した訳ですね....』
『その通りじゃ....ガルスもガルスじゃ、へし折った角で短剣なぞ作りよって自慢するもんじゃから、デッカーも怒っておったわ....』
『あの時は宥めるのが大変でしたねぇ....』
フランジュが遠くを見つめながら呟く....
『........あの、その短剣、この刀の材料になってます...』
『え?』
『うそ....』
『ちなみに聖剣フロンティアと混ぜちゃいました....』
『せ、聖剣フロンティア....は、はぁぁぁぁ.....』
元愛剣の変わり果てた姿にフランジュが目眩を起こして倒れそうになる。
『うん、ワシは聞かなかったらことにするわい....デッカーにバレんようにな....アイツは怒らせたらタチが悪いからな』
『はい、気をつけます....』
薄々気づいてはいたが、やはりこの漆輝の材料となった魔竜剣は魔竜デッカーの角で作られた短剣だった…
これがバレたら魔竜王を怒らせかねないので黙っておくことにしよう…そう心に決めるライトだった。
『あと、もう一つ質問いいですか?』
『なんでしょう?』
まだ聞きたいことがあるというライトにフランジュが応える。
『なぜ、元勇者のフランジュさんと、元魔王のレイドさんはデッカーさんのお家に一緒に住んでらっしゃるのですか??』
『それはですね…いえ、やめておきましょう…この世界の理に反している事柄ですので話してしまうとライトさんを巻き込んでしまうかもしれませんので…』
『そうじゃな…それが賢明じゃとワシも思うぞ』
『そうですか…わかりました』
どうやら二人がここに住むことになった経緯には深い理由がありそうだ、恐らく元勇者のフランジュがデュラハンであることにも繋がる事なのだろう…
『さあ、休憩は終わりですよ!次はライトさんに私の剣技を授けることにしましょう』
『はい!宜しく願いします!』
『剣の道は果てのない道と同じです、厳しい訓練になりますがついてきて下さいね』
『はい…頑張ります…』
『それが終わったら、魔王の心得を学んで貰うからな!』
『あ、いや…はい…ははは…』
魔法はレイドとの訓練で色々なコツを掴んだ。
かなり抽象的な教え方だったが、やはり元魔王だけあって魔法の腕前は相当なものだったこともあり、様々な事が学べた。
まだまだ完璧とはいかないが、これからは自分一人でも練習は出来るし、新たな魔法を構築することも出来そうだ。
ここからは勇者の剣技を身に付ける番だ…
なんだかレイドは、俺に魔王の心得を叩きこむと意気込んでいるが、俺は魔王になる気はない…魔王は父ちゃんであるガルスがやるべきだと思っているからだ。
『それでは始めましょう…まずライトさん、貴方にはこの技を覚えて頂きます』
フランジュはそう言うと、腰に差していた剣を肩口から前に向けるように構える…
そして、技の名前を口にする…
『ピアスオブライト!』
すると、フランジュの体が直視が難しいほどの眩い光を放ち、その姿をかき消す…
ライトは必死に目で追おうとするが、眩い光も相まってその姿を捉える事は出来ない…
『ど、どこに…』
『あそこじゃ!まったく、見えてもおらなんだら修行にならんじゃろうが…』
レイドが悪態をつきながら指を指す方向にフランジュはいた…そこはライト達から遥か離れた場所。
『あんな遠くまで、この一瞬で…』
『そうじゃ、あの技は光の力を身に纏って光速を超える速さで相手に向かって突きを放つ…あの技にはワシも手を焼かされたわい…』
『光の速さ以上の速度で突きを放つ…どおりで瞬間移動みたいに見えた訳だ…』
『あぁそうじゃな、先に放たれる光に目を奪われたらまず躱せないじゃろうな…ちなみにフランジュはあそこから様々な剣技に繋げてくるぞ』
『え…ヤバイですね、それ…』
『何を言っておるんじゃ、お主もやるんじゃよ!ガルスを助けるんじゃろ!それぐらい出来るようにならんでどうするんじゃ!』
そうだった、父ちゃんを助け出す為にはそれ位強くならないとダメだ、なんせ相手には実の両親である勇者一行と思われる生体兵器がいる…恐らくこの勇者の剣技も使って来るのだろう。
ならば、それを上回る技と剣術を身に付けなければいけない…幸いこちらには元勇者のフランジュが付いている、カタカタと騒ぐガイコツに諭されるのは少し癪だが、先ずはこのピアスオブライトという技を自分のものと出来るように取り組もう。
千里の道も一歩からだ、強くなれる要素は揃っている…今はとにかく前へ進むのだ…歩きながらこちらに戻るフランジュを見つめながら心に強く誓うライトだった。




