第32話 白狼王への階段
久しぶりに自室で迎える朝…
目覚めたライトは傍らに寝ているハクを撫でながら、いよいよ始まる訓練…そして、その先にある魔王ガルス救出に向けて静かに闘志を燃やしていた。
準備を整え、予定時刻よりも少し早めにハクを連れて部屋を出る。
珍しく少し緊張した面持ちのライトは、皆の集合場所に指定した城門前に足を進める。
城門前に到着すると、時間前にも関わらず集合メンバーは勢揃いしておりライトの到着を待っていたようだ。
『ライト様、おはようございます!』
『あぁ、ライト様…本日も麗しゅうございますわ…』
『ライト様!おはようだーよ!』
『ライト様!本日もお元気そうで何よりですぞ!』
到着したライトに魔王軍幹部の面々が挨拶をしてきた。
その幹部達の表情には緊張も不安もない…流石は魔王国が誇る強者達だ。
『みんな!おはよう!今日からの訓練頑張ろうな!』
そんな強者達に軽く挨拶を交わすライト。
魔王軍の皆が集まり、綺麗に整列している城門前の広場。
その兵士たちの前に立ち、ライトは口を開く。
『みんな~!おはよう~!いよいよ今日から訓練が始まるけど、怪我とかしないようにみんなで協力して強くなろうね!』
集まった兵士たちに言葉を掛けるライト。
その腰には愛刀の漆輝が存在感を放つ…気の抜けた挨拶には不釣り合いなほどに…
『『『おぉぉぉぉぉぉ!』』』
『『『ライト様ぁぁぁぁぁぁ!!』』』
そんな大したことは言ってないはずなのだが、兵士たちの予想外のテンションの高さにびっくりする…
士気が高いのは良い事だが、なんだろうこの担ぎ上げられているような気恥ずかしさは…
『うん…みんな元気そうだね…そろそろ出発しようか…』
『『『おぉぉぉぉぉぉぉ!!!!』』』
何を言っても士気が爆発する…まぁ悪い事じゃないし…このまま行っちゃうか…
あまり異色の3人?を待たせると後で怖そうだという事もあり、帰還した当日に会議を行い、翌日には訓練を開始する事にしたのだが、急遽予定にぶち込まれた訓練に対してなんの不満も出ないこの魔族の順応性と対応力の高さには驚くばかりだ…むしろ喜んでいるようにも見える…ちょっと怖い位だ。
遠足か何かと勘違いしている訳ではないと思うのだが…
『ライト様~お弁当は持っただすか?』
いや、いた…遠足と勘違いしている奴が…
でも大事だよね…お弁当…特にホイズは腹が減ると帰っちゃうしな…
『よ~し!しゅっぱ~つ』
『『『おぉぉぉぉぉぉっ!!!!』』』
ライトの掛け声と共に士気高く魔竜の洞窟への行進を開始する魔王軍であった。
ー魔竜の洞窟入り口-
『よし、ここからは班に分かれて行動だな!俺たちは一足先に最下層に向かうから、あとの班は順次洞窟へのアタックを開始してくれ!』
『了解だーよ!ライト様、気を付けて行ってくるだーよ』
『ライト様、お気をつけて…』
俺はホイズとベイルの二人と言葉を交わすと、ハクを抱きかかえてヒメルに跨り、洞窟内部へと飛び立った。歩きだと数日かかる道のりもヒメルの背に乗っていればひとっ飛びだ。
ちなみに今回の訓練班はホイズ班とベイル班でアローラ班は防衛係として魔王国に残っている。
訓練を行うホイズ班とベイル班は、まずは食料(ブラッドグリズリー、ストロングホーン)が豊富で見渡しが良く比較的安全な36階層を訓練の拠点とする為に攻略を開始する予定だ。
またあの焼き肉を味わえるとホイズもヤル気十分で、今回はBBQセットや様々な調味料を持参している位だ。
俺達も修行の合間に行って、是非ともBBQをご馳走してもらおう。
そんな事を考えているとすぐに35階層に辿り着いた。
ヒメルの飛行能力はマジで凄い。仲間にして良かったと心から思う。
ヒメルが地面に降り立つと、すぐに多数のホワイトウルフを従えた白狼の王シュバルツが出迎えてくれる。
以前は殺気ムンムンで木の陰からこちらを襲う気満々だった事を考えるとえらい違いだ。
『おぉ魔王代行殿!良く来てくれた!小さき王も元気そうだな!』
『シュバルツさん、お体の調子はどうですか?』
『お陰様で、この通りピンピンしておる』
ハッハッハと笑いながら胸元を叩いて傷が癒えたことをアピールするシュバルツ。
まぁ、やったの俺なんだけどね…
『ところで今日は、我に何か用事でも?』
『あぁ、シュバルツさんのお見舞いにって言いたいところなんですけど、実はお願いがあって…』
『何を遠慮しておる、貴殿は我の恩人だ、何でも申すが良いぞ!』
『ありがとうございます!そのお願いというのはハク…小さき王に稽古をつけて欲しいと思いまして』
『なんと!我に小さき王を鍛えて欲しいと申すのか』
『はい、シュバルツさんは強い…俺はハクにもシュバルツさんのように強くなって欲しいと思っています。なので是非お力を貸して頂けないでしょうか?』
『それはこちらとしても願ってもない話だ!我らは希少な種であることから数が少ない。それ故に古より群れ同士で手を取り合って互いに助け合ってきた。それを考えれば小さき王は我が子も同然!独り立ち出来るよう育て上げるのも我の役目というものだ』
『ありがとうございます!そういって頂けると助かります』
『アォ~ン!!』
『はっはっは!任せておくがよいぞ!宜しくな!小さき王よ!』
白狼の王シュバルツは我が子を見るような目でハクを見つめながら、どこか嬉しそうに快諾してくれた。
『あ、ちなみにハクもホワイトウェアウルフになれるんですか?』
『ん?我のような姿にか?』
『そうです、同族と仰っていたので、シュバルツさんも元々はホワイトウルフだったのかと思いまして…それで、もしそうならハクにもシュバルツさんのようになれる可能性があるのかな…と』
『なれると思うぞ、王たる資質を持っているのだからなれて当然ともいうべきか…まぁある程度の力は付ける必要はあるが、一時的にという事であれば我が稽古をつければすぐにでもなれるであろうぞ』
『本当ですか!それは楽しみです!』
『楽しみ?おかしな事を言うものだな』
『いえ、シュバルツさんのようになれるという事は強くなれるという事です。しかも恐らく言葉も話せるようになるのでしょう?楽しみ以外のなにものでもないですよ!』
『はっはっは!そうかそうか、小さき王は良き友を得たようだな。分かった、我がしっかり稽古をつけてやるゆえ楽しみにしておるのだ』
『はい!では我々はここで失礼しますので、どうかハクを宜しくお願いします!』
『うむ!任されよ!次に会う時には見違えるほどになっておるであろう!はっはっは!』
『ハク…少しの間お別れだ…しっかりと訓練するんだぞ…』
『クゥ~ン…』
『よし、ヒメル!行くぞ』
悲しそうな鳴き声を出すハクに後ろ髪をひかれながらもライトは前に進む…ハクの成長した姿に期待を抱きながら。




