第31話 深夜まで続く会議
魔王軍幹部たちとの会議は、夜更けまで続いた。
議題の中心は、魔竜の洞窟勢力の協力を得て行う新たな強化訓練。
だが、強くなることだけを考えていればいい状況ではない。
敵は宣言などしてくれない。
こちらの都合などお構いなしに、ある日突然攻め込んでくる。
そのため会議では、訓練と国防を両立させるための体制づくりについても徹底的に話し合われた。
最終的に決まったのは――
魔王軍を複数の班に分けること。
訓練組と駐留組をローテーションしながら運用する方針だ。
もちろん、その分だけ国防戦力は薄くなる。
だが幸いにも、国を覆う結界の拡張は完了している。
防壁工事も順調。
さらに魔導兵器の開発も着実に進んでいた。
もし王国軍が動いたとしても、援軍が集結する時間くらいは十分に稼げるはずだった。
そして編成されたのは四つの班。
ライト班。
ホイズ班。
ベイル班。
アローラ班。
まずライト班は――
ライト、ハク、ヒメル。
たった三名。
だが質だけなら間違いなく最強だ。
ライトは元勇者フランジュと先代魔王レイドから直々に指導を受ける予定。
ハクは白狼王シュバルツ。
ヒメルは魔竜王デッカー。
それぞれが規格外の師を持つことになる。
ちなみにシュバルツにはまだ話を通していない。
だがデッカーが、
「貸しがあるから大丈夫だ」
と豪快に笑っていたので、きっと大丈夫なのだろう。
俺も貸しがあるから大丈夫なはず……多分。
一方、ホイズ班・ベイル班・アローラ班は持ち回りで訓練と国防任務を担当する。
親衛隊、騎士団、魔法師団を均等に混成し、どの班でも戦えるように編成した。
万が一、王国軍が襲来しても対応できるようにするためだ。
斥候部隊は別枠。
諜報活動を継続しながら独自に訓練へ参加する。
そして各班が挑む訓練場所こそ――
魔竜の洞窟。
かつて三十一階層を支配していたエンペラーツリー。
その存在が、洞窟攻略の最大の壁だった。
だが今は違う。
ライトが討伐したことで道は開かれた。
未知だった深層階層。
そこには今までとは比較にならないほど強力な魔物たちが待ち受けている。
だが同時に、得られる経験値も桁違いだ。
目標は五十階層到達。
魔王軍全体の戦力底上げである。
ちなみにホイズだけは既に最下層へ到達している。
もっとも――
四十階層から四十九階層まではワイバーン便によるショートカットだったので実質未踏破だ。
よって再挑戦決定。
そしてもう一つ。
誰にも知られていない極秘任務があった。
ブラッドグリズリーとストロングホーンの追加確保である。
将来の肉供給を考えれば、絶対に外せない重要任務だ。
ちなみに連れ帰った数頭は既に飼育を開始している。
目指すは魔王国名物。
最高級赤身肉と究極霜降り肉の安定供給だ。
誰よりも本気なのは、多分ライトである。
会議が終わる頃には、すっかり深夜になっていた。
進むべき道は決まった。
後は実行するだけ。
なぜなら――
時間がない。
エドからも気になる報告が上がっていた。
アストリア王国が周辺諸国で暗躍しているというのだ。
実力者たちが次々と姿を消している。
しかも、どうやら秘密裏に攫われているらしい。
不穏だった。
あまりにも不穏だった。
強者を集めて何をするつもりなのか。
その真意は分からない。
だが碌でもない企みであることだけは確信できる。
幸い、今は王国の視線が他国へ向いている。
ならばその隙に力を蓄える。
来るべき決戦のために。
必ず魔王ガルスを取り戻すために。
そう決意を新たにし、それぞれが修行の準備へと向かっていく。
そして――
全てが終わった後。
自室へ戻ったライトは、ベッドへ勢いよく飛び込んだ。
「はぁぁぁぁぁ……」
どっと疲れが押し寄せる。
会議。
説明。
調整。
説得。
訓練計画。
真面目な話ばかりで頭がパンクしそうだった。
ライトは隣にいたハクへ視線を向ける。
するとハクもこちらを見ていた。
『ワフ?』
「よし」
『ワフ?』
「今日はお前をモフモフして寝る」
『ワフッ!?』
次の瞬間。
ライトは全力でハクへ抱きついた。
ふわふわ。
もふもふ。
極上。
「最高だ……」
『クゥ~ン……』
こうして魔王代行ライトは、明日から始まる地獄の修行を前に、束の間の癒やしを堪能するのだった。




