第30話 愛刀の完成
魔竜の洞窟の最下層でお茶をしていた元勇者と元魔王、そして洞窟の主である魔竜王に遭遇したライト達は訳の分からぬまま、異色の三人?に鍛えられる事となった…
とはいえ、今すぐ修行を始める訳にもいかない。
きっと魔王城では帰りの遅いライト達を皆が心配しているだろう…
そして、現在行われている魔王軍のレベリングも魔竜王の手助けにより大幅に中身を変える必要がある。
そういった理由から一旦城に戻ることを決めたライト達。
暇を持て余していた異色の3人?はすぐに修行を始めたがっていたが、ライトの説得の末に渋々ではあるが一時帰還を了承し、一行は魔竜の洞窟を後にするのだった…ちなみに帰り道でこっそりブラッドグリズリーとストロングホーンを数体捕獲して帰ったのは内緒の話である。
ー魔王城ー
新たな仲間としてワイバーンのヒメルを引き連れ、城に戻るライト一行。
やはり城門の前ではベイルやアローラが心配そうな面持ちで帰りを待っていたようだ。
『みんな~!ただいま~!』
『『『ライト様!!!』』』
皆が安堵の表情で出迎える。中には涙を流している者もいるようだ。
『ライト様、よくぞご無事で…』
『ライト様…うっうっ…』
帰還したライト達の前に駆け寄ってくるベイルと、くしゃくしゃの顔で号泣するアローラ。
皆に相当心配を掛けてしまっていたようだ…
『うん、出迎えありがとう!魔竜の洞窟、攻略完了だよ!』
『え?最下層まで行かれたのですか??』
『行った行った!途中少しショートカットしちゃったかもだけどね…』
『なんと!それは素晴らしいですね!流石はライト様です!是非、私が倒せなかったエンペラーツリーを倒したお話など、後でお聞かせ願いたいです!』
『了解だよ!その前に、その魔竜の洞窟の最下層での出来事なんだけど、皆に伝えたいことがあるから玉座の間に集まってもらえないかな…』
ライトは早速、魔竜の洞窟での出来事を伝えるため幹部達に玉座の間に集まるように告げる。
その間、普段見る事の少ないワイバーンであるヒメルに、周りの兵士たちがビビり散らかしていたのは言うまでもない。
そうして、ライトは玉座の間に幹部を招集したことから自らも玉座の間に向かおうとするも、そこで一人の人物に呼び止められる…
『坊ちゃん!!』
ライトを坊ちゃんと呼ぶ人物…振り向いてその顔を確認すると、ライトを呼び止めた人物の正体は、筋骨隆々のゴリラ親父…じゃなかった、鍛冶長のバルドロックだった。
『坊ちゃん!ついにカタナが完成したぜぃ!』
バルドロックが口にした言葉はライトが待ちわびた物の完成報告だった!しかもバルドロックはその手に一本の刀を携えている。
『え!マジ?やったぁ!!』
喜び勇んでバルドロックに駆け寄るライト。
『ほらよ!大事にしてやってくれや!』
『うわぁ~…』
手渡された刀を美しい純白の鞘から引き抜くライト…その刀は吸い込まれるような漆黒の刀身、刃文は丁子乱れだろうか、花のように複雑な文様を描いている…そして、穢れのないまるで光そのもののような輝きを放つ神白の鍔と柄、その色調はライト同様に光と闇の力を秘めたような、そんな圧倒的な存在感を放つ刀であった…
『これは…素晴らしいな…』
一瞬言葉を失い刀に見惚れた後、バルドロックに賛辞の言葉を述べるライト。
『今回はいい勉強になったぜぃ!それにしてもカタナってぇのは奥がふけぇな!扱いは少し特殊だが、敵を切る為には素晴らしく実用的な剣の形だ…これからはどんどん造って、魔王軍にも使い手を増やしても良いかもしれねぇな!』
魔王軍の侍部隊か…いいかもしれないな…そう考えるライト。
『いいね!それじゃあとりあえず、これからは刀の製造を増やして貰おうかな!』
『了解だ!任してくれぃ!』
刀鍛冶にハマった様子のバルドロックはそう言うとニコニコしながらその場を後にしていった。
新たに手に入れた自身専用の刀…名前は…そうだなぁ…聖剣と魔竜剣から創られた刀だから順当に考えたら聖竜刀とかそんな感じだけど、なんだか青龍刀っぽいしダメだな。
折角だから少し凝った名前がいいな…漆黒の刃に輝くような白い柄…
…漆輝
その呟きに呼応するかのように一瞬、淡く光を放つ刀…
ライトの愛刀である刀に命が宿った瞬間であった。
『よしっ!行くか!』
そして、その一言と共に愛刀漆輝を腰に携え玉座の間に向かうライト。足取りは軽い。
その頃、玉座の間では魔王軍幹部が既に集まり、魔王代行であるライトの到着を待っていた。
『遅くなってごめん!』
そこに、愛刀を携えたライトが姿を現す。
『おぉ、ライト様…』
その姿を目に留め、ベイルが感嘆の声を漏らす。
ベイル以外の者達もその姿に釘付けとなっていた。
なぜなら愛刀を携えたライトの姿が今までより、凛々しくも威厳のある姿に映ったからである。
それ程までに愛刀、漆輝の存在感は凄まじかった。
『みんな、急に集まってもらってすまない』
『今回集まってもらったのは、これからの魔王軍強化について話をしたかったからだ。そのために、まずは魔竜の洞窟で起きた出来事を説明する』
ライトは魔王軍幹部の皆に、今回の魔竜の洞窟攻略で経験した出来事や最下層で出会った人物達の事、そして急遽決まった今後の強化策の事などについて、皆に順を追って説明した。
『なんと!あの洞窟の最下層にそのような方々がいらっしゃったとは…』
驚きの表情を見せるベイル。
『でも魔竜王は魔王様が討ち取ったのではなかったか?』
ライトも気になっていた事を口にするエド。
『まさか先代魔王のレイド様がご健在とは驚きですわ!』
先代の魔王、レイドの生存に驚くアローラ。
『オラ、腹減っただーよ』
食いしん坊のホイズ…
それぞれが、それぞれの反応を示す中、ライトは口を開く。
『これはまたとないチャンスだと俺は思う…それぞれの訓練は過酷なものになると思うが、魔王ガルス救出の為には一刻も早く俺たちは強くならなければいけない…皆にもその気持ちで訓練に臨んで欲しい!』
『もちろんでございます!もはや我々に負けは許されません!死ぬ気で強くなってご覧にいれましょう!』
『私も同じでございますわ!今よりも強くなって必ず魔王様をお助けいたしますわ!』
『オラも魔王様助けに行きたいから、すっごく特訓するだーよ』
『我ら斥候部隊は情報収集も進めながら、必ずやライト様のお力となれるよう精進することをお約束いたしますぞ!』
ライトの魔王ガルスの救出の為という檄は皆を奮い立たせ、そして幹部全員の士気を高めた。
『よし、ではこれより会議を始める。議題は今後の強化訓練についてだ!』
ライトと幹部達はこれから行われる熾烈な訓練の中身を煮詰めていくのだった。




