第29話 魔竜の洞窟の主
玉座の後方にある扉…それを開けた瞬間、中から人の気配…というか話し声が聞こえてきた。
中の者たちはコチラに気づいていないようだったのでコッソリと様子を伺ってみる事にした訳だが…
『あ~暇じゃのう~!!』
『最近ガルスも顔を見せんしな~』
『そもそもガルス以外ここまでこれた者など殆どいないですがね~』
中からそんな話し声が聞こえた…
どうやら暇を持て余している様子だ。
しかもガルスという名前を言っているという事は、父ちゃんの知り合いっぽい感じなのだが…
一体誰だ…そう思い、扉から身を乗り出して声のする方向を覗いてみると…
なんと!そこには…
やたらと禍々しい漆黒のガウンを身に纏ったスケルトン?リッチー?
そして、角が一本折れてしまっている巨大な黒いドラゴン
更には、神々しい程に輝く純白の鎧に身を包んだ首の無い騎士、デュラハン?
そんな異色の三人?が大きな丸テーブルを囲んで、和気あいあいとお茶をしているではないか…
とりあえず話しかけてみるか…と更に身を乗り出すライト。
『あ、あの~、すみません…』
『『『!!!』』』
ライトの声掛けに驚き散らかす3人…
『だ、誰じゃ!!』
スケルトン?リッチー?に誰かと尋ねられた…
『あ、私はライトと申す者なのですが、こちらの責任者の方はいらっしゃいますでしょうか??』
なぜか、訪問先の受付に責任者を訪ねる営業マンのようなことを言い出すライト…
『あ、それなら一応ワシだが…』
それに対して普通に黒いドラゴンが手を挙げて返事をする。
『あぁ良かった!あちらの玉座に誰もおいでにならなかったものですから…』
『あぁ、それはすまんな、最近めっきり来客が減っておったものでな、ちと油断しておったわ』
普通に会話を続ける二人。
『というか、あなた方は??』
ここでやっと首無し騎士がこちらの正体を訪ねてきた…
『あ、すみません…先ほども名乗らせて頂いておりましたが、私はライトと申します。一応魔王国の魔王代行をさせて頂いている者なのですが、ちょっと修行でこちらに寄らせて頂きまして…』
『ちなみに後ろにいるのが、私の相棒のハクと世話役のホイズとペットのヒメルです…ほら、みんな!ご挨拶して!』
『ワンッ!』
『ホイズだーよ』
『グルゥッ!』
挨拶を促すライトと元気に挨拶をする三人…
『あぁ、これはご丁寧にどうも…私はフランジュ。デュラハンになる前は勇者をしていた者です。まぁ遠い昔の話ですが』
『それでこちらのリッチーは元魔王のレイドさん』
『こちらのドラゴンは魔竜王のデッカーさんです』
『くるしゅうないぞ』
『よろしくな!』
『ん?元勇者に元魔王に魔竜王…??』
三人の自己紹介に唖然とするライト。
『あの、情報量が多すぎて理解が追い付かないのですけど…』
『あぁ~、そうですよね…まぁ私たちのことは余り気にせず』
そんなこと言われてもめちゃめちゃ気になるよね…と思いながらも話を聞く事にする。
『ところで先ほど修行でこちらにいらしたと仰られていましたが、なぜ修行を?』
『あ、えーとですね、父ちゃ…いや魔王ガルスがアストリア王国に捕まっちゃいまして、それを助けるために力をつけなきゃと思って修行していたんですよ…これでも一応魔王代行でもありますし』
『な!!ガルスの奴、最近来ねぇと思ってたら人族なんぞに捕まってたのか!なにやってんだよアイツは!』
『魔王様はオラ達を逃がすために捕まったんだーよ!悪く言うのは許さないだーよ!』
『あんだとコラ!』
魔竜王の言い草に不快感を覚えてか、反論するホイズ…そして売り文句に買い文句でケンカ腰の魔竜王…
『まぁまぁ、やめんか…あ奴もワシの後継者として立派に魔王国の民を守っておるという事じゃろうて。人族なんぞに捕まるのは、ちといただけんがなぁ』
『ところで小僧は魔王代行といったな、ここまで来るという事はそれなりに力はあるようじゃが、なぜ人族のお主が魔王代行をやっておるのじゃ?』
『あ、それは俺も気になってた!』
『私も…!』
『じゃろう、じゃろう!ワシってば良い質問するじゃろう!』
なんか調子が狂うが一応説明しておいたほうが良いのか…そう思いライトは自分の生い立ちと魔王代行に至った経緯を三人に説明した…
『なるほどのぉ…というかお主凄いのぅ!勇者と魔王両方の資質を持っておるとは前代未聞じゃぞ』
『は、はぁ…ありがとうございます』
『うーん、レイドさん、デッカーさん、どうでしょうここは一つライトさんに協力してみては如何でしょうか?』
なにやら元勇者のデュラハンが協力を考えてくれているようだ…
『レイドの爺さんとフランジュは、そこの小僧に教えてやれることは多いと思うが、俺は特に関係ねぇだろ』
『いやいや、デッカーさん。ガルスには貴方が一番遊んで頂いていたではありませんか!そのガルスが捕らえられているのですよ!それを関係ないだなんて!』
『ま、まぁそれはそうだけどよぉ…分かったよ!協力すりゃあ良いんだろ!』
『で、俺は何をすればいいんだ?』
『そうですねぇ、デッカーさんは魔王軍の皆さんを鍛えて差し上げては如何ですか?』
『まぁ、そうだな…ちょうどここにはシュバルツも住んでるから、そこのホワイトウルフの坊主を鍛えるのにも丁度良いかもな…そこのワイバーンも鍛え甲斐がありそうだしよ…まぁ他の有象無象共はこの洞窟を貸してやるから勝手に鍛えれば良いんじゃねぇか?まぁ、見込みのありそうな奴がいたら俺様が直々に鍛えてやってもいいぜ!』
『良いでしょう。ではその感じでデッカーさんは魔王軍の皆さんをお願い致します』
『ワシは??』
『レイドさんは私と一緒に、ちょっとライトさんの修行に付き合って差し上げませんか?』
『ワシは良いぞ!いい機会だから魔王の心得なんぞ教えてやろうかの』
『じゃあ決まりですね!という事に決まりましたのでライトさん!よろしくお願いしますね』
『え、あ、よろしく、お願いします…』
なんだか分からないが、元勇者のフランジュがどんどん話を進めた結果、元魔王と元勇者に直接鍛えられることが決まったようだ…ハクやヒメル、そして魔王軍のみんなも巻き添え…いや魔竜王に鍛えてもらえるようなので、とりあえず死なないようにみんなで乗り切って貰いたいと思うライトだった…




