第2話 ゴブリンに転生?
初めての作品で、手探りで執筆しておりますので内容において、度々改変などがされております。
ご不便をお掛け致しますが、温かい目でご覧頂けると幸いです。
何やら周囲が騒がしい。
大勢の人が慌ただしく動き回っている気配がする。
ラフィーユは言っていた。
――勇者の子供は事情があって親元を離れている。
ならば、この気配は勇者パーティーの仲間か。
あるいは王城の人間たちか。
どちらにせよ、勇者の息子である俺を保護している人たちなのだろう。
そんなことを考えながら、俺はゆっくりと目を開いた。
そして――。
『――ッ!?』
心臓が止まりそうになった。
目の前に鬼がいた。
しかも至近距離で。
頭には黒くねじれた二本の角。
血のように赤い肌。
口から覗く鋭い牙。
どう見ても鬼だった。
『…………』
危うく漏らしかけた。
だが俺は耐えた。
四十四歳の男としての尊厳を総動員して耐え切った。
褒めてほしい。
ぜひ勇者の父に褒めてほしい。
……いや待て。
勇者の父?
俺は勇者の息子に転生したはずだ。
それなのになぜ目の前に鬼がいる?
導き出される答えは一つ。
ラフィーユさん、転生先間違えてません?
『おっ! 赤ん坊が目を覚ましただーよ!』
鬼は嬉しそうに飛び跳ねた。
怖い。
見た目も怖いしテンションも怖い。
すると別の声が聞こえた。
『おぉ~! やっと起きたか~!』
誰かが近づいてくる。
次の瞬間、俺の体がふわりと持ち上がった。
どうやら抱き上げられたらしい。
そして顔を近づけてきた人物を見て、俺はさらに固まった。
褐色肌のワイルドなイケメン。
額には第三の目。
どう見ても強キャラ。
絶対に必殺技とか撃てるタイプだ。
俺の知っている三つ目のキャラはそういうタイプなのだ。
そう、邪王炎○黒龍破だとか気○砲とか撃ってたイメージだ。
そんな男が笑顔で言った。
『お~! アレンの息子よ~! よ~く寝まちたね~!』
…………ん?
寝まちた?
聞き間違いか?
『今日からここで一緒に暮らすんでちゅからね~! 良い子にするんでちゅよ~♡』
聞き間違いじゃなかった。
赤ちゃん言葉だった。
どういうことだ。
見た目と口調が全然噛み合っていない。
というか今、一緒に暮らすって言ったよな?
俺の混乱は限界突破した。
ここは勇者の家じゃない。
絶対に違う。
転生先、完全にミスってる。
俺の脳裏を転生先候補にあったゴブリンがよぎる…
そんな俺をよそに、周囲には続々と魔物らしき者たちが集まってきた。
『おっ! 起きましたね!』
『アレンさんにもエレナさんにも似てますね~』
みんな友好的だ。
だが見た目が全員怖い。
精神的にはまったく安心できない。
アレン。
さっきから何度も聞こえる名前。
恐らく俺の父親だろう。
その名前だけ妙に爽やかなのが気になるが。
そこで俺は、確認のために自分の手を見た。
透き通るような白い肌。
……緑じゃない。
少なくともゴブリンではなさそうだ。
そうして少しだけ安心しかけた時だった。
『魔王様~』
『ん?』
鬼が三つ目の男に話しかけた。
魔王様。
今、そう言った。
『…………え?』
魔王?
この人、魔王なの?
ラスボスじゃん。
『赤ん坊が起きただーよ。自己紹介と名前を教えねーと』
『あー、そうだな』
魔王は頷く。
『とはいえ、人族の赤ん坊だぞ? 理解できるのか?』
人族。
今、人族って言った。
つまり俺は魔物じゃない。
勇者の息子で間違っていない。
なら余計に意味が分からない。
なぜ人族の赤ん坊が魔王城にいるんだ。
『アレン様の子供だで大丈夫だーよ』
どんな理論だ。
だが説明してくれるならありがたい。
俺は黙って耳を傾けた。
『よし。まずは自己紹介だ』
魔王は胸を張った。
『俺は魔王ガルス。ガルス・グランフェル、この国を統べる王だ』
うん。
やっぱり魔王だった。
『そして――これからお前を育てる父でもある』
…………は?
父?
今なんて?
『続いてコイツがお前の教育係兼世話係のホイズだ』
『オラ、ホイズだ! よろしく頼むだーよ!』
鬼は元気よく手を振った。
いや待って。
そんなことより。
父?
魔王が?
俺の?
『次は名前だ』
ガルスは真面目な顔になる。
『これはお前の父アレンと母エレナが残した名前だ』
勇者の父と聖女の母。
ちゃんと名前は考えてくれていたらしい。
そこだけは安心した。
『お前の名前はライトだ』
ライト。
意外とまともだった。
変な名前じゃなくて本当に良かった。
『俺の息子だから、ライト・グランフェルだな』
『よし! 説明は以上だ!』
ガルスは豪快に笑う。
『改めて魔王城へようこそ! ここを自分の家だと思って好きに育て!』
そうして話は強引に締められた。
俺の名前はライト。
ライト・グランフェル
勇者アレンと聖女エレナの息子。
そして――。
なぜか魔王の養子。
状況はさっぱり理解できない。
どう考えても波乱しか待っていない。
だが、せっかく手に入れた二度目の人生だ。
ならば楽しむしかない。
こうして俺――ライトの新しい人生は、魔王城から始まることになったのだった。




