第1話 転生案内係
初めての作品で、手探りで執筆しておりますので内容において、度々改変などがされております。
ご不便をお掛け致しますが、温かい目でご覧頂けると幸いです。
『もしもーし! 起きてくださーい!』
知らない女性の声が聞こえた。
俺はゆっくりと目を開く。
目の前には、薄いピンク色のツインテールを揺らした美しい女性がいた。背中には白い羽。どう見ても天使だ。
……いや、天使というよりコスプレイヤー?
『ん……? 俺は確か階段から落ちて――』
『はい~。死にましたね~』
おっとりとした口調で、あっさり死を宣告された。
『いや、そんな軽い感じで言われても……』
しかし不思議と動揺はなかった。
体の痛みも疲労感もない。
長年悩まされていた肩こりも腰痛も消えている。
むしろ人生で一番コンディションがいい。
階段から落ちたら健康体になりました――なんて詐欺広告みたいな話があるわけもない。
だからこそ、俺は自分が死んだのだと納得できた。
『ていうか、ここどこですか?』
周囲を見回す。
真っ白な空間。
そして並んだカウンター。
どこか見覚えがあると思ったら、市役所の受付によく似ていた。
『ここは天国の転生受付係です~』
『……は?』
『転生受付です~』
満面の笑みで言われた。
『転生って、あの漫画とかラノベに出てくる?』
『まんが? らのべ? は分かりませんが、三神さんは転生候補者に当選しました~』
当選。
その言葉に少しだけ胸が高鳴る。
転生モノは好きだった。
まさか自分がその立場になるとは思わなかったが。
『あっ、自己紹介がまだでしたね~。私は転生案内係のラフィーユと申します~』
『ご丁寧にどうも』
反射的に頭を下げてしまう。
サラリーマン時代の習性は死んでも抜けないらしい。
『ちなみに、死んだ人はみんな転生するんですか?』
『いえいえ~。特別に選ばれた方だけですよ~』
『おぉ……特別な人間』
その響きだけで少し嬉しくなる。
単純だとは思う。
だが男という生き物は「選ばれし存在」に弱いのだ。
『それでは早速、転生先を選んでいただきます~』
ラフィーユが一枚のボードを差し出した。
【転生先候補】
・異世界の初期村付近にいるゴブリン
・異世界のデカいバッタ
・異世界の川を流れる流木
・異世界の畑を耕す牛
・異世界の勇者の子供
『勇者の子供で』
即答だった。
『もう少し考えませんか~?』
『いや、勇者の子供で』
『説明だけでも聞いてください~』
そこからラフィーユによる候補紹介が始まった。
ゴブリンはゴブリンキングの息子。
バッタは成長すると三十メートル級。
流木は世界樹の枝。
牛はミノタウロスに進化可能。
どれも説明だけ聞けば凄そうだった。
だが結論は変わらない。
ゴブリンはゴブリン
バッタはバッタ
流木は木
牛は牛だ。
『最後は勇者のお子さんです~』
『おぉ』
『勇者と聖女の間に生まれた子供ですが、とある事情で親元を離れています~』
『……以上?』
『以上です~』
説明が雑だった。
圧倒的に雑だった。
むしろ選ばせたくないという意思すら感じる。
だが、それでも。
勇者の子供。
その肩書きだけで他を圧倒していた。
『やっぱり勇者の子供で』
しばし沈黙。
ラフィーユは露骨に困った顔をした。
『はぁ……分かりました~。異世界の勇者の子供への転生を承認します~』
勝った。
何に勝ったのか分からないが勝った気がした。
『転生後にやるべきこととかあります? 魔王討伐とか世界救済とか』
『特にありませんよ~。お好きなように生きてください~』
『自由すぎるな……』
『それでは行ってらっしゃ~い!』
ラフィーユが手を振る。
次の瞬間、俺の体は光に包まれた。
意識が遠ざかる。
そして――。
◇
『よし、転生完了っと』
ラフィーユは小さく息を吐いた。
『やっぱり勇者の子供を選んじゃった~』
本来、案内係には転生先の不利益情報を伝えてはいけない規則がある。
だから彼女は何も言わなかった。
言えなかった。
『今回の勇者の子供、かなり訳ありなんだけどな~』
ラフィーユは苦笑する。
『世界の敵にならなきゃいいけど~』
そう呟きながら、彼女は次の転生者の書類へと手を伸ばした。
これから始まるのは、勇者の子供として生まれた一人の少年の物語。
――そして、世界を大きく揺るがす波乱の人生の始まりだった。




