第1話 転生案内係
初めての作品で、手探りで執筆しておりますので内容において、度々改変などがされております。
ご不便をお掛け致しますが、温かい目でご覧頂けると幸いです。
『もしも〜し』
『起きて下さ〜い』
女性の声がする。
俺は目を開けて辺りを見回すと、天使の格好をした薄ピンクの髪色でツインテールの美しい女性がこちらを覗き込んでいる。
『ん?あれ?俺は階段から落ちて...』
『はい〜死にましたね〜』
天使のような美しい女性はおっとりした感じで匠の死を告げた。
『いや、そんなユルフワな感じで言われても...』
『でも、何となく自分が死んでるのは分かる気がする...』
俺は意外にもすんなり死を受け入れられている自分に少し驚きはあるが、生前にいつも感じていた疲労感や体の痛みなどが一切無い事から、自分は死後の世界にいるのだと理解した。
死んだ方が健康というのはおかしな話ではあるが…
死んだ事は理解できたが、遺してきた妻や子供、そして残25年の住宅ローンを想いながらも、疑問になっている事を口にする。
『ていうか、ここはどこですか?』
真っ白な部屋、目の前にはカウンターがあり、どことなく市役所の受付のような雰囲気の場所だ。
すると、カウンター越しに佇んでいるフワフワとした雰囲気の天使のような見た目をした女性は、俺方を見ながら
『ここは、天国の転生受付係です〜』
『は?』
屈託のない笑顔で訳の分からない事を言われて、思わずアホな声が出た。
『転生って漫画とかラノベとかにあるアレ?』
ここが天国であるとか色々気になることはあるが、俺は普段から転生ものの漫画やアニメ、ラノベなどを好んで読んでいた事から1番気になった転生という言葉に食いついてしまった….
『そうですね〜』
『あっ!自己紹介が遅くなりました〜。私は転生案内係員のラフィーユと申します〜。今回三神さんを担当させて頂きます〜。どうぞ宜しくお願い致します〜』
『あ、ご丁寧にどうも、こちらこそよろしくお願い致します』
何やらユルフワ天使に自己紹介され、生前サラリーマンだった時の癖からか奇妙な状況にも関わらず、当たり前のように挨拶をしてしまった….
『ちなみに死んだ人は皆んな転生するんですか?』
死後の世界の事などは、生前には知る術はない。
もし、亡くなった方が全員転生をしているのだとしたら凄い事実だ。
『いえいえ、特別に選ばれた方のみですね〜』
『おぉ〜選ばれた人間ですか…』
幼少期から物語の主人公に憧れていた俺は、選ばれた人間という響きに少し気分が高揚する感覚を覚えた。
『早速ですが三神さんには、今から転生先を選んで頂き、新たな人生を歩んで頂きます』
なるほど、選択式か...
俺の予備知識では、いわゆる転生ものには『いきなり見ず知らずの他人や物に転生するもの』と『事前にある程度の転生先や条件を指定出来るもの』があったはずだ。
あくまでも漫画やアニメ、ラノベから得た知識だが….
どうやら今回の転生は、後者の選択式のようだ。
『早速ですがこちらのボードにある転生先から、お好きなところをお選び下さい』
ボードに目をやると何やら書いてある。
『どれどれ...』
【転生先候補】
・異世界の初期村付近にいるゴブリン
・異世界のデカいバッタ
・異世界の川を流れる流木
・異世界の畑を耕す牛
・異世界の勇者の子供
ボードには5つの選択肢があった。
『ゆ、勇者の子供で...』
俺は困惑しながらも即答した。
見る限り、勇者の子供への転生以外に魅力を感じなかったからだ。
いや、むしろ一択だろこんなもん...なんだよ流木って...
勇者の子供以外、人ですらねーじゃねーか。
するとユルフワ天使のラフィーユは待ったをかけてきた….
『せっかくの転生のチャンスですので、もう少しよくお考えになられた方が良いと思いますよ〜』
ラフィーユは相変わらずのユルフワな口調でよく考えて決めるよう促してくる。
『パッと見だけではよく分からないと思いますので、それぞれの候補について軽くご説明させて頂きますね〜』
『先ずは、1つ目の異世界の初期村付近にいるゴブリンさんです〜』
『こちらはご両親がゴブリンキングとゴブリンクイーンとなっおりまして、その間に生まれた玉のように可愛いゴブリンプリンスへの転生となります〜』
『ゴブリンはゴブリンでもエリート中のエリートですので、将来はゴブリンキング、更にはゴブリンヒーローにも到る可能性がありますよ〜』
いくらエリートといえどゴブリンはゴブリン...
初期村付近でビギナー冒険者を相手に生涯を懸けて戦い抜けということなのか?そんな事はごめんなのでパスだ。
『続いては、異世界のデカいバッタさんです〜』
『転生直後は幼虫となりますので体長は3メートルほどですが、成虫となりますと体長が30メートルほどになりますよ〜』
『最終的には進化を果たすと、人型のバッタモンスターに到る可能性があります〜』
デカいの規模が自分の想像を遥かに超えており言葉にならない...
しかも、人型のバッタモンスター...某ヒーローライダーの姿が頭をよぎる。
しかし、所詮はバッタなのでパスである。
『お次は、異世界の川を流れる流木さんです〜』
『こちらは川を流れている世界樹という特別な樹木の枝です〜』
『世界樹の枝は、川を流れている間も成長を続け、進化に成功すると世界樹の木人となり、自由意思を持つ事も自由に動き回る事も出来るようになります〜』
異世界ファンタジー好きの俺には、世界樹という言葉は刺さるが、それでも自分が転生するとなると話は別だ。
所詮は流木、パスだな。
4つ目は、異世界の畑を耕す牛さんです〜』
『両親が闘牛チャンピオンのパワフルな子牛で、広い畑もなんのその〜!あっという間に耕せる、将来は異世界の田畑の未来を背負うかもしれない牛さんです〜』
『こちらの牛さんは、頑張り次第ではミノタウルスに進化可能です〜』
田畑の未来など背負わんでもいい!もちろんミノタウルスもパスだ。
『最後は、異世界の勇者のお子さんです〜』
『勇者と聖女の間に生まれた子供ですが、とある事情で親元を離れています〜』
『・・・・・』
『え?以上ですか?』
『はい〜、以上です〜』
いやいや、なぜ勇者の子供だけ説明が蛋白なのだ...
何やら勇者の子供には訳ありな感じがあるが、それでも勇者の子供以外を選ぶ気はない...
何より幼少期より、特別な存在に憧れていた俺にとっては、勇者など大好物以外の何者でもないのだ。
しかし、滅多にないであろう転生の機会だ、失敗はしたくないので、出来ればもっと詳細を教えて欲しかった….
しかし、他の選択肢を考えてもやはりこれ以外の選択肢はないと意を決して口を開く。
『やっぱり、勇者の子供で...』
『・・・・・・』
『・・・・・・』
何故だか2人の間に沈黙が流れる。
『.....分かりました〜、異世界の勇者の子供への転生を承認致します〜』
案内係のラフィーユは含みがある雰囲気で話を進め始める。
なんか含みがあるな….
しかし俺はもう決めたのだ、勇者の子供に転生する事を…
後は転生後の事を聞いておかなければいけない….
『なんか転生後は、やらないといけない事ってあります?』
俺の予備知識では、大体の転生ものは神様や悪魔のような強大な存在から使命を受けてするものだというイメージがある。
『いえ、特にないですよ〜!お好きなようにに生きて下さい〜』
『あ、分かりました...』
気の抜けた返答に少し戸惑うが、まぁ気ままに生きれるならそれも良いかと思う。
『それでは、勇者の子供への転生!いってらっしゃ〜い!』
ラフィーユがお見送りの言葉を告げると、匠の身体は眩い光に包まれて、姿を消した...
『よし、三神さんの転生完了っと!』
『ふぅ〜やっぱり、勇者の子供を選んじゃった〜』
『今回の勇者の子供は色々と訳ありな状況なんだけどな〜』
『まさか、敵さんにはならないよね〜...』
ラフィーユは匠を見送った後に独り言を漏らす...
実は、案内係の規則として転生先のマイナスな情報は伝えてはいけないという決まりがあった。
ラフィーユは今回、匠が転生先に選択した勇者の子供が特殊な状況にあり、場合によっては自分達に不利益な存在になる可能性があると考えていた。
その為少し含みのある説明をしたが、匠は結果的に勇者の子供を選択したのだった。
これから波瀾万丈な人生が待ち受けている生まれて間もない勇者の子供を….




