第25話 食、それは命の源
白狼の王シュバルツを倒し、先に進む事を許された三人は36階層へと足を踏み入れた。
ー36階層ー
36階層は、なんと言うか大平原といった感じで視界を遮るものは余りなく、見晴らしは良好だ。
なぜだか風も感じられる。洞窟内なのに….
所々に樹木が生えてはいるが、基本的には青々とした草が生え広がっており、緑豊かな大草原といった形の階層になっていた。
洞窟の中に大草原....おかしな話だが気にしたら負けだ。
そんな平原をスタスタと足早に進む三人だが、何やら後ろを歩くホイズの様子がおかしい....
『ホイズ!どうした?具合でも悪いか?』
ライトは気になって問いかける。
『ライト様〜、オラ腹減っただーよ』
ライトは恐れていた事態になった事に気付く。
以前、ホイズはこの魔竜の洞窟を単独で攻略した際に、31階層で腹が減って帰ったという実績の持ち主だ。
これは何とかしなければいけない....洞窟攻略の危機だ。
実際この洞窟に潜り始めてかなりの時間が経っている....確かに俺も腹は減っているし、休みたい気持ちもある。
恐らくハクも素振りは見せないが、同様に腹が減り、疲れてもいるだろう。
よし、此処で休息をとるか....
『ホイズ!少し待ってて!何か食べる物探してくるから!』
『すまないだーよー』
元気なく返事をするホイズ。
まるで、アンパ○マンに顔をねだるカバの少年のようだ。
食べる物を探す....手っ取り早いのは魔物を狩る事か。
幸い、35階層はホワイトウルフの領域だったことから、恐らく今までの流れから考えると、ここからは獣系の魔物が出そうだ。
それなら肉が手に入る。
『よし、ハク!魔物を探すぞ!』
『ワンッ!ワンッ!』
何だかハクも嬉しそうにしている....やっぱりハクも腹が減ってるんだな。
休む事にして正解だった訳だ。
『ん?なんだ?』
暫く平原を進むと、前方で何かが争っている事に気付く....
『....魔物同士の喧嘩か?』
ハクは横で首を傾げている....いちいち可愛い奴だ。
争っているところに目を凝らすと、やはり魔物同士が睨み合っているのが見えた。
その姿は、巨大な熊とバイソンのような魔物だった。
縄張り争いでもしているのか....
ステータス....
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名前:なし
レベル:91
称号:なし
ジョブ:ブラッドグリズリーLv.11(種族特性につき進化以外の変更不可)
スキル:閲覧制限
熟練度:爪牙術Lv.9、睡眠Lv.21
特性:食欲旺盛、至高の赤身、縄張り意識
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至高の赤身!!
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名前:なし
レベル:90
称号:なし
ジョブ:ストロングホーンLv.13(種族特性につき進化以外の変更不可)
スキル:閲覧制限
熟練度:突進術Lv.11、角術Lv.15
特性:猪突猛進、防衛本能、究極の脂身、家族愛
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こっちは究極の脂身!!
これは....どちらも絶対に手に入れる!!!
ライトは溢れ出る涎を抑えながら、作成を考える事にした。
まぁ、相手の強さは特段問題ない。
問題は肉を傷める事なく綺麗に仕留めると言う事だ。
ステータスにはどの部位が至高の赤身で究極の脂身かまでは書いていないからだ。
もしかしたら全体的にそうなのかもしれないが、一部だけの可能性もある....用心しなければいけない。
今までになく慎重なライト。
ていうか、コイツらを大量に捕獲して魔王国で育てたら、良い名物になりそうだな....
食欲と金銭欲といった欲にまみれたライトを他所に、ハクは戦闘体制に移る。
何故なら、先程まで睨み合っていた魔物達がライト達の姿に気付き、その視線をこちら側に移していたからだ。
『考えてる時間は余りないか!ハクッ!一体ずつやるぞ!俺は右をやる、ハクは左だ!....後、出来れば一撃で仕留めるんだ!』
『ワオォーン』
ハクの相手はストロングホーンで俺の相手はブラッドグリズリーと....
魔法は使えない....火加減を間違う訳にはいかないからな....
そう考えながらも一気に速度を早め、間合いを詰めるライトと、目にも止まらぬ動きでジグザグに突撃するハク。
勝負は一瞬だった....
視界には収めていたはずの敵が急に視界から消え失せ、慌てた魔物達。
気付いた時には、ライトの横薙ぎ一閃....ブラッドグリズリーの首は飛び、死角からのハクの爪撃によりストロングホーンの喉元は引き裂かれていた。
『まぁ最小限の損傷かな!』
『ワフ!ワフ!』
上々の出来に大満足の二人。
打ち合わせなど最小限でも最大の成果を出す....相棒たる二人の連携力の賜物だ。
『よーし!ホイズが待ってるから、コイツらを運びながら戻ろう!』
『ワフッ!』
互いに獲物を引き摺りながらホイズの元へ戻る二人だった。
二人はホイズが待つ場所に到着すると、ホイズは火を起こして待っていてくれた。
『ホイズー!肉持って来たぞー!』
『ライト様!ハク!ありがとうだーよ!』
そこからは、三人での楽しい焼肉大会となった。
ブラッドグリズリーとストロングホーンの肉は、前世でも味わった事のないくらいの上質な肉で、ヘルシーで旨味たっぶり色鮮やかな赤身と、バランスよくサシが入った芸術作品のような霜降りが視覚的にも食欲を唆る。
その上質な肉を、火の上で塩を少量振りかけながら焼く….
ちなみに塩などの調味料はホイズが常に持ち歩いているので心配無用だ。
質素な味付けだが、それ故に素材の味が活きる….滴るほどの旨味溢れる肉汁に香ばしい油の焼けた香り….
『我慢できん!頂こう!』
ライトの号令で、一斉に焼けた肉にかぶりつく三人。
口一杯に肉を頬張り恍惚の表情を浮かべるライト。
ガツガツ音を立てながら、隠していた食欲を解放して至福の面持ちで食べ続けるハク。
満たされる空腹に命の危機を脱したかのような安堵の表情のホイズ。
辺りは暫く、肉の焼ける香ばしい匂いと三人の楽しそうな笑い声が広がっていた。




