第20話 魔竜の洞窟攻略戦①
初めての作品で、手探りで執筆しておりますので内容において、度々改変などがされております。
ご不便をお掛け致しますが、温かい目でご覧頂けると幸いです。
洞窟の入り口で震えていた少年の姿は、もうそこにはなかった。
魔王代行ライト。
そして王狼の子ハク。
二人は今、戦うことそのものを楽しむかのように笑みを浮かべながら、魔竜の洞窟を駆け抜けていた。
第1階層で経験した初めての実戦。
あの一戦が大きかった。
恐怖を乗り越えたことで二人の動きは明らかに変わったのだ。
元々実力はあった。
だが実戦経験だけが圧倒的に不足していた。
それが今、一気に埋まり始めている。
経験が経験値となりレベルへ変換されるこの世界では、初めての経験こそが最も大きな成長をもたらすのかもしれない。
実際、いつも二人を見守っているホイズですら驚くほどの成長速度だった。
――魔竜の洞窟 第十一階層。
巨大な蛇型モンスター。
イビルスネーク。
ライトは視界の端に表示されたステータスを確認する。
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名前:なし
レベル:88
ジョブ:イビルスネークLv.11
熟練度:神経毒Lv.5
噛み付きLv.7
巻き付きLv.8
ーーーーーーーーーーー
「よし」
確認は一瞬。
次の瞬間には地面を蹴っていた。
閃光のような踏み込み。
振り抜かれた剣が空気を裂く。
ズバァッ!!
イビルスネークの胴体が三つに分かれ、地面へ崩れ落ちた。
「よっし! 殲滅完了っと」
ライトは満足そうに剣を振って血を払う。
十一階層まで来た今となっては、この程度の魔物では相手にならない。
一~十階層
そこはスケルトンやゴースト、ゾンビが徘徊するアンデッド地帯だった。
しかし十一階層から様子が変わる。
蛇。
蛙。
毒虫。
毒を持つ生物系モンスター達の縄張りとなっていた。
どうやら一定の階層ごとに生態系が切り替わるらしい。
「ホイズ~」
「なんだべ?」
「この洞窟って何階層まであるの?」
ホイズは少し考えて答えた。
「魔王様の話だと五十階層が最後らしいだ~よ」
「五十!?」
思わず声が大きくなる。
「ちなみにオラの最高記録は三十一階層だべ」
「三十一か……」
ライトは思わず唸った。
ホイズは魔王軍最強格。
そのホイズでさえ三十一階層。
ならばその先は想像以上の難関なのだろう。
だが同時に。
胸の奥からワクワクが湧き上がる。
魔王ガルスしか到達していない最深部。
そんな場所があるなら行ってみたい。
行かない理由がない。
そこから三人は破竹の勢いで進撃した。
十五階層
巨大蜂や巨大蟻が支配する虫系エリア。
群れで襲い掛かる魔物達をライトとハクが蹴散らしていく。
たまにホイズへ飛んでいく個体もいたが――
パシッ。
それだけで爆散した。
まるで人間がハエを払うような雑さである。
ライトは改めてホイズの強さを思い知った。
二十階層
水辺エリア。
魚型モンスターやマーマン達が現れる。
途中、小腹が空いた三人は魚型モンスターを捕獲し、その場で焼き魚にして昼食にした。
その様子を見たマーマン達が震えながら岩陰へ隠れたことを、三人は知らない。
二十五階層
ガーゴイルを中心とした悪魔系エリア。
高い機動力。
魔法攻撃。
厄介な相手のはずだった。
だが――
食後の運動には丁度良かった。
三人は暴れ回った。
ガーゴイル達は学習した。
逃げた方がいいと。
進むにつれて遭遇率が激減したのはそのためである。
「魔族と魔物か……」
戦いながらライトは考える。
魔族と魔物。
両者は本来ほぼ同じ存在だ。
知性があり言葉を話す者を魔族。
それ以外を魔物。
ただそれだけ。
中には魔物から魔族になる個体もいるらしい。
ならば――
ここにいる知性ある魔物達も。
将来的に魔族になる可能性があるのではないか。
ライトは小さく呟いた。
「魔王軍の人員拡大……ありかもしれないな」
そして…
ついに三十階層。
ホイズの記録目前。
そこは巨大な森林地帯だった。
出現するのは樹木型モンスター。
巨大な幹を持つ怪物達である。
「フンガァッ!!」
ボギィィィィッ!!
ホイズの拳が炸裂する。
木の魔物がへし折れる。
「ホイサッ!!」
メギィィィィッ!!
また一本。
また一本。
次々と大木が倒れていく。
もはや伐採作業だった。
ライトは火属性魔法で援護する。
ハクは高速で駆け回り敵の注意を引き付ける。
ホイズが粉砕する。
完璧な連携だった。
もっとも、火力を出し過ぎると森林火災になりそうなので、ライトはかなり加減していたが。
それでもあちこちから煙が上がっている。
少し怖い。
そして、激戦を越えた先。
三人の前に下層へ続く通路が姿を現した。
『三十一階層』
洞窟に潜ってから既に一日半。
ついにホイズの記録へ並ぶ瞬間が訪れた。
ライトは剣を握り直す。
ハクも隣で低く唸る。
そしてホイズは豪快に笑った。
「いよいよだべな!」
「ああ!」
ライトの口元にも笑みが浮かぶ。
未知の領域。
魔王軍最強のホイズですら到達できなかったその先。
何が待ち受けているのか。
恐怖より期待の方が大きかった。
「行こう!」
魔王代行ライト達は、新たな階層へと足を踏み入れるのだった。




