第13話 俺専用の剣を作ろう①
初めての作品で、手探りで執筆しておりますので内容において、度々改変などがされております。
ご不便をお掛け致しますが、温かい目でご覧頂けると幸いです。
魔王代行に就任して以降、ライトは王国の情報収集を進める傍ら、自身の鍛錬にも一層力を入れていた。
父――魔王ガルスを救い出すため。
その想いだけを胸に、来る日も来る日も強さを求め続けている。
そして今日もまた、魔王騎士団長ベイルとの剣術訓練が行われていた。
訓練場の隅では、相棒のハクが気持ちよさそうに日向ぼっこをしている。
完全に観戦モードだ。
羨ましい。
俺もそっちに行きたい。
そんな現実逃避をしながら、目の前の相手を見据える。
魔王騎士団長ベイル。
闇夜を思わせる漆黒のフルプレートアーマーを身に纏った暗黒騎士だ。
見た目は人族とほとんど変わらないが、薄い蒼色の肌と鋭い目付きが特徴的で、鼻筋の通ったかなりの男前である。
いわゆるイケメンだ。
だが問題はそこではない。
ベイルの手には、自身の身長ほどもある巨大な両刃の大剣が握られていた。
その大剣を――。
まるでオーケストラの指揮者が指揮棒でも振るかのように軽々と振り回している。
意味が分からない。
重さの概念が仕事していない。
しかもその剣は、魔王ガルスから授かった魔剣。
その名も――魔剣スレイブ。
刀身からは禍々しい闇のオーラが溢れ出し、柄に埋め込まれた巨大な目玉がギョロギョロと動いている。
そして何故か時々目が合う。
怖い。
本当に怖い。
こっち見んな。
昔は刃を潰した訓練剣で模擬戦をしていた。
だが今は違う。
魔剣スレイブである。
非常に危険だ。
何なら命の危険を感じる。
念のため、ベイルのステータスを再確認してみる。
――――――――――――
名前:ベイル
レベル:131
称号:魔王騎士団長
ジョブ:暗黒騎士 Lv.45
(種族特性につき進化以外の変更不可)
専用武器:魔剣スレイブ
熟練度:
剣術 Lv.42
盾術 Lv.38
槍術 Lv.38
斧術 Lv.32
特性:
魔剣に認められし者
剣術の才
オールラウンダー
忠誠の騎士
――――――――――――
うん。
強い。
知ってた。
レベルも高いし魔剣も持ってる。
これ絶対切られたら死ぬやつじゃない?
そんなことを考えながらも模擬戦は続く。
ガキィン!!
ギャリィィィン!!
激しい剣戟が訓練場に響き渡る。
互いに高速移動を繰り返し、周囲からは姿すらまともに見えない。
ただ火花だけが絶え間なく散っていた。
そして――。
ガキィィィィンッ!!
甲高い金属音が響く。
次の瞬間。
俺の剣が真っ二つに折れた。
「くぅぅぅ~!! 負けたぁぁ!!」
折れた剣を見ながら叫ぶ。
するとベイルが満足そうに頷いた。
「いやいや、お見事ですライト様」
穏やかな笑みを浮かべる。
「十歳にしてこの剣筋。末恐ろしい才能です」
本当にこの人は褒め上手だと思う。
普通なら剣をへし折られて心が折れそうになるところだ。
だがベイルに褒められると不思議とやる気が出る。
やる気スイッチ押されまくりである。
押されすぎてそのうち壊れそうだ。
「よしっ! もう一回!」
気合を入れて構え直す。
だが――。
ベイルは剣を構えなかった。
何かを考え込むように顎へ手を当てている。
そして数秒後。
何かを思いついたように顔を上げた。
「ライト様」
「ん?」
「そろそろ専用の剣をお造りになられてはいかがでしょう?」
「……へ?」
予想外の提案だった。
「既製品の剣では、もはやライト様のお力についてこれておりません」
そう言って足元に転がる折れた剣を見る。
確かに最近は折れる頻度が増えていた。
しかし。
俺の脳内では別の部分が反応していた。
専用の剣。
専用武器。
主人公専用装備。
「――ッ!!」
心臓が跳ねる。
「欲しい!!」
即答だった。
「絶対欲しい!!」
専用武器。
何という甘美な響きだろう。
これぞロマン。
これぞファンタジー。
主人公なら一度は憧れるやつだ。
「実は勇者殿がライト様を連れ帰られた際、ある物を置いていかれまして」
「ある物?もしかして聖剣とか?」
「はい」
ベイルが頷く。
「聖剣フロンティアです」
「え?」
思わず固まる。
冗談半分で口にした。
聖剣とか置いていってくれてたら嬉しいな〜
くらいの気持ちだった。
まさか本当に聖剣とは。
親父。
置き土産が重すぎる。
「ただし問題がございます」
「問題?」
「折れております」
「えっ」
「真っ二つです」
「えぇ……」
衝撃だった。
聖剣が折れるとかあるのか。
聖剣ってもっとこう、不滅とかそういう感じじゃないのか。
「勇者殿がライト様を救出された際に破損したようです」
なるほど。
だから置いていったのか。
少し納得した。
少しだけ。
「そこで提案なのですが」
ベイルが続ける。
「その聖剣を打ち直し、ライト様専用の剣として再誕させては如何でしょう」
なるほど。
それは熱い。
かなり熱い。
だが問題もある。
「でも半分しかないなら短剣くらいしか作れなくない?」
するとベイルは当然のように答えた。
「材料を追加しましょう」
「材料?」
「魔王様の愛用されていたダガーがあります」
嫌な予感がした。
「ちなみにそれは?」
「五百年前に魔王様が討伐した魔竜王の角から作られた魔竜剣イビルエッジです」
「待て」
即座に止める。
「今さらっととんでもないこと言ったよね?」
「はい?」
「魔竜王の角だよね?」
「そうですが」
「貴重だよね?」
「大変貴重です」
「じゃあ駄目だろ!」
流石に怒られる。
絶対怒られる。
だがベイルは平然としていた。
「ご安心ください」
何も安心できない。
「魔王様は昔こそ気に入っておられましたが、魔法主体で戦われるので途中から使わなくなりました」
「あー……」
分かる。
何となく分かる。
父ちゃんそういうところあるわ。
「よし」
「よし?」
「使おう」
「そうしましょう」
即決だった。
もし怒られたら。
全部ベイルのせいにしよう。
そうしよう。
奇しくも。
生みの親である勇者の聖剣。
育ての親である魔王の魔剣。
二人の遺した武器が一つとなり、新たな剣として生まれ変わろうとしていた。
「それで、これからどうするの?」
俺が尋ねると、ベイルは自信満々に答えた。
「鍛冶長に依頼しましょう」
「鍛冶長?」
「はい。バルドロックです」
聞いたことがない名前だった。
「誰それ?」
「我が国最高の鍛冶師です」
ベイルは胸を張る。
「ドワーフ族でして、普段は鍛冶工房に引きこもっております」
「ドワーフ!?」
思わず叫ぶ。
「魔王国にドワーフいるの!?」
「おります」
ベイルは当然のように頷いた。
「魔王様が直々にドラムガルドへ赴かれ、スカウトされました」
また父ちゃんか。
「スカウト……?」
少し疑わしい。
「拉致じゃなくて?」
「滅相もございません」
ベイルは即座に否定した。
「むしろ貴重な鉱石や素材が山ほどあると聞いて大喜びで来られました」
資源外交だった。
やるな父ちゃん。
「じゃあ行こうか」
そうして俺達は。
折れた聖剣と魔王の秘蔵品を抱えながら、魔王国最高の鍛冶師――バルドロックのもとへ向かうのだった。
新たな相棒となる剣を生み出すために。




