第12話 魔王代行に就任
初めての作品で、手探りで執筆しておりますので内容において、度々改変などがされております。
ご不便をお掛け致しますが、温かい目でご覧頂けると幸いです。
斥候部隊長エドの帰還によって、魔王ガルスがアストリア王国の捕虜となったことが判明した。
エントランスを重苦しい沈黙が支配する。
だが、その沈黙を破ったのはライトだった。
「よしっ!」
強く拳を握り締める。
「こうしてても仕方ない! 今すぐアストリア王国に行って、父ちゃんを解放するよう交渉してくる!」
そして隣にいる相棒へ視線を向ける。
「ハク! 行くぞっ!」
「ハッ! ハッ! ワンッ! ワンッ!」
待ってましたと言わんばかりにハクが勢いよく吠える。
先ほどまで不安そうにしていたというのに、今は完全に戦闘態勢だ。
主人が進むなら自分も進む。
その青色の瞳には、そんな強い意志が宿っていた。
しかし――
「お待ちくださいっ! ライト様!」
真っ先に反応したのはベイルだった。
「今、王国へ向かわれてはなりません!」
「でも!」
ライトは食い下がる。
「父ちゃんを助けるには、それしかないだろ!?」
握った拳に力がこもる。
「勇者達だってまだ捕まってるかもしれないんだぞ!? それに……一応、生みの親だしさ」
最後だけ少し照れ臭そうに付け加える。
だが、ベイルは首を横に振った。
「それでも駄目です」
その声音には迷いがない。
「今向かえば、勇者殿と同じ末路を辿る可能性が高い」
「だからって父ちゃんを見捨てろって言うのかよ!」
ライトの声が大きくなる。
怒りと焦り。
そして恐怖。
失いたくないという感情が溢れ出していた。
「違います!」
ベイルも負けじと声を張り上げた。
「我々も魔王様を救いたい!」
拳を握り締める。
「今すぐにでも向かいたいのです!」
その手は震えていた。
「ですが、敵を甘く見てはいけません。ゴーレムだけではない……私を傷付けた騎士達のような存在もいます」
ベイルは苦々しく顔を歪める。
「魔王様は生きておられる」
「……」
「王国がライト様を狙っている以上、魔王様をすぐに殺すことはないはずです」
「でも!」
「勇者殿達も、おそらくまだ生きている!」
その言葉にライトの動きが止まる。
「だからこそ……今は耐えてください」
ベイルは深く頭を下げた。
「我々も情報を集めます」
「奪還の準備も進めます」
「ですから――」
震える声で続ける。
「どうか、ご自身を危険に晒さないでください……!」
その姿を見ていたアローラも前へ出る。
「ライト様!」
ホイズも叫ぶ。
「お願いだーよ!」
周囲の魔族達も声を上げた。
「ライト様!」
「どうか!」
「今は耐えてください!」
皆必死だった。
魔王を失ったわけではない…しかし、だからこそ焦っていた。
ここでライトまで失えば、本当に全てが終わってしまう。
重い沈黙が流れる。
やがて――
「……分かった」
ライトが低い声で呟いた。
その場にいた全員が息を呑む。
「でも」
ライトは顔を上げる。
その瞳には強い決意が宿っていた。
「待つのは、父ちゃんを助け出せるタイミングが来るまでだ」
誰も口を挟まない。
「その時が来たら――絶対に助けに行く」
それは宣言だった。
誰にも曲げられない決意だった。
ベイルは真っ直ぐライトを見つめる。
そして静かに頷いた。
「承知致しました」
その声に迷いはない。
「その時は我々も全力でお供致します」
ライトもまた頷き返した。
「よし」
深く息を吐く。
「じゃあまずは情報収集だな」
そして視線をエドへ向ける。
「エド!」
「はっ!」
黒翼を羽ばたかせ、エドが軽やかに降り立つ。
「王国の動き、情勢、噂でも何でもいい」
ライトは真剣な表情で言った。
「とにかく情報を集めてくれ」
「承知致しました!」
エドは片膝をつく。
「その任、このエド率いる斥候部隊にお任せください!」
その姿はまるで王への忠誠を誓う騎士そのものだった。
そして――
ホイズ、ベイル、アローラが顔を見合わせて小さく頷き合う。
次の瞬間、三人もまた片膝をついた。
「えっ?」
ライトが目を丸くする。
さらに周囲の魔族達も続いた。
一人。
また一人。
やがてその場にいる全員が片膝をつき、頭を垂れる。
まるで新たな王を迎える儀式のように。
「ちょ、ちょっと待って!?」
ライトは慌てて手を振った。
「何してるの!? みんな!?」
するとアローラが静かに口を開く。
「我らの主は魔王ガルス様です」
その声には敬意が滲んでいた。
「ですが、今は魔王様がおられません」
アローラは真っ直ぐライトを見る。
「そして我々を導き、魔王様を救い出せる方は――ライト様しかおりませんわ」
続いてベイルも口を開く。
「ライト様には、その資格がございます」
「どうか」
「我々をお導きください」
最後にホイズが勢いよく顔を上げた。
「オラはライト様が生まれた時からずっと一緒だーよ!」
何故か一番興奮している。
「ライト様の凄いところいっぱい知ってるだーよ!」
拳を振り上げる。
「だからオラは付いていくだーよ!」
「いや、だからさ……」
ライトは困ったように頭を掻く。
「俺、一応勇者の息子なんだけど?」
魔王軍のトップになるには属性が真逆すぎる。
だが――
「?」
「??」
「???」
全員が首を傾げた。
本気で何を言っているのか分からないらしい。
ベイルが苦笑する。
「先程、ライト様から放たれた力を見ました」
「そこには光だけでなく闇も存在していた」
「光にも闇にも属する者」
ベイルは断言する。
「そんな存在は、ライト様以外におりません」
「皆、その御姿に希望を見たのです」
真っ直ぐな言葉だった。
逃げ場のないほどに。
「そ、そっかぁ……」
ライトは乾いた笑みを浮かべる。
そして観念したように肩を落とした。
「わ、分かったよ!」
半ばヤケクソ気味に叫ぶ。
「みんな、よろしくな!」
その瞬間、魔族達の表情に希望が灯った。
失われかけていた光が戻る。
ライトは何となく嫌な予感がして、自身のステータスを確認する。
――――――――――――
名前:ライト
レベル:113
称号:魔王代行
ジョブ:魔剣士 Lv.38
スキル:高速移動、危機回避、高速剣、多重魔法
熟練度:剣術 Lv.33魔術 Lv.29魔法剣 Lv.22
特性:勇者の血脈魔王の教え剣術の天才魔法の天才フィジカルモンスター成長限界無効美の化身????
――――――――――――
「やっぱりぃぃぃっ!!」
エントランスに悲鳴が響く。
「称号が魔王代行になってるぅぅぅっ!!」
誰も驚かない。
むしろ当然と言わんばかりだ。
ライトは頭を抱えた。
だが――
その瞳には確かな決意が宿っている。
「こうなったら仕方ない」
ゆっくりと顔を上げる。
そして不敵に笑った。
「徹底的に鍛えて――」
「アストリア王国に魔王の恐ろしさを教えてやるか」
その笑みは、もはや勇者の息子とは思えないものだった。
それを見た魔族達は思った。
――ああ
やっぱりこの方は、ガルス様の息子なのだと。




