第135話 内乱の終わり
――――ドラムガルド王都。
王宮・玉座の間。
「――――うおおおおおっ!!」
バルグリムの咆哮とともに、大地が大きく隆起した。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!
「な、なんだこの力は!?」
「足元が……!」
「逃げろ!!」
巨大な岩盤が床を突き破り、離反した兵士達を次々と吹き飛ばしていく。
「――――ッ!!」
その隙を……
「逃がさない!」
リオネが駆け抜けた。
全身を紅蓮の炎が包む。
獣神化……その速度は、獣人族の中でも並外れている。
「ぐあっ!!」
「うわあああ!!」
大剣が横薙ぎに振り抜かれる。
炎の衝撃波が敵兵をまとめて吹き飛ばした。
「よし!」
リオネが拳を握る。
「残りは――」
「リオネ!」
ライトの声。
「後ろ!」
「え?」
振り返る。
そこには、背後から迫る兵士。
「――――ッ!」
だが、その兵士が剣を振り下ろすより早く。
「遅い」
ヒュンッ!!
ライトが目の前に現れた。
両手に構えたナインティーンイレブン。
白と黒。
二つの閃光が交差する。
ドゴォン!!
兵士が吹き飛ばされた。
「……ライト!」
「油断するな」
「分かってる!」
「本当に?」
「分かってるってば!」
リオネは頬を膨らませる。
「ライトこそ、私を子供扱いしないでよ!」
「いや……」
ライトは苦笑する。
「ただ心配しているだけなんだが……」
「それはそれで嬉しい!」
リオネの顔が嬉しそうに輝く。
「でも――」
炎がさらに燃え上がる。
「私も戦える!」
「…………」
ライトは一瞬だけリオネを見る。
そして……
「頼りにしてる」
「……うん!」
二人が並ぶ。
その光景を、バルグリムは戦いながら見ていた。
「…………」
――凄まじい。
少年の力。
少女の力。
そして、自分の土のレガリア。
三つの力が重なり、もはや敵が抗うべくもないほどに圧倒的な戦力となっていた。
「これが……アルヴァニアの援軍か」
バルグリムは呟く。
「…………」
その時。
「バルグリム!!」
怒号が響いた。
「――――ッ!」
第一王子。
その手には剣。
周囲には、最後まで彼に従う兵士達。
「まだ終わっていないぞ!!」
「…………」
バルグリムが振り返る。
「……まだやるのか」
「当然だ!!」
王子の顔は憎悪に歪んでいた。
「この国は私のものだ!」
「…………」
「貴様のような平民が王になるなど、認められるものか!!」
「…………」
バルグリムは静かに答えた。
「なら……」
拳を握る。
「俺を倒してみろ」
「――――ッ!!」
王子が突進する。
「うおおおおお!!」
剣が振り下ろされる。
キィィン!!
バルグリムが腕で受け止める。
「ぐっ……!」
「――――ッ!」
王子が押し込む。
「死ねぇぇぇ!!」
だが。
バルグリムの足元。
大地が震えた。
「――――大地よ」
ゴゴゴゴゴゴ……
「俺に力を貸せ」
ドゴォォォン!!
巨大な岩の拳が地面から突き出した。
「なっ――」
王子が吹き飛ぶ。
「ぐああああっ!!」
その身体が玉座の間の壁へ叩きつけられる。
「…………」
王子は立ち上がろうとする。
しかし。
膝が崩れた。
「くっ……」
「…………」
バルグリムはゆっくりと歩み寄る。
「終わりだ」
「…………」
「お前が王になるために戦うのは自由だ」
「…………」
「だが」
バルグリムの目が鋭くなる。
「国を他国へ売り渡した時点で、お前は王になる資格を自ら捨てた」
「…………!」
「俺は王だ……」
バルグリムは拳を握る。
「この国を売らない」
その言葉と同時に。
王宮の各所から歓声が上がった。
「――――敵が退いたぞ!!」
「アストリア兵が撤退していく!!」
「新王が王宮を奪還したぞ!!」
「勝ったぞ!!」
「ドラムガルドは……守られた!!」
◇
――数時間後。
王都アイゼンベルグ。
戦闘は終わっていた。
燃え上がっていた街では、消火活動が始まっている。
崩れた城壁。
破壊された建物。
負傷した兵士達。
だが。
「…………」
ドワーフ達は立ち上がっていた。
「王都は必ず俺達が復興させる」
「俺達の街だ」
「そうだ」
「新王陛下と共に……」
その声を。
バルグリムは遠くから聞いていた。
「…………」
「陛下」
忠臣が隣に立つ。
「ご無事で何よりです」
「ああ」
バルグリムは街を見る。
「だが……」
拳を握る。
「犠牲が多すぎる」
「…………」
その時。
「バルグリム王」
声をかけてきたのはライトだった。
「…………」
バルグリムが振り返る。
「ライト……だったな」
「はい」
「助かった」
「礼ならレオガルド陛下に」
「それでもだ」
バルグリムは頭を下げる。
「俺とこの国を救ってくれた」
「…………」
ライトは少し戸惑いながら頷く。
「……どういたしまして」
その隣で。
「私は?」
リオネが手を挙げる。
「…………」
バルグリムが見る。
「もちろん、お前にも感謝している」
「よし!」
リオネが満足そうに笑う。
「なら、これで友達ね!」
「…………」
バルグリムが少し困った顔をする。
「……そういうものなのか?」
「そういうものよ!」
「…………」
ライトが苦笑する。
「気にしないでください」
「分かった……」
バルグリムも苦笑した。
だが。
その時だった。
「――――陛下!!」
一人の兵士が駆けてくる。
「どうした?」
「王家の墓所から報告が!」
「…………」
兵士の顔は青ざめていた。
「王家の墓所が……荒らされています」
「…………」
バルグリムの表情が変わる。
「何だと?」
「はい」
「誰が……?」
「分かりません」
「警備兵は?」
「全員……」
兵士は唇を噛む。
「戦闘の混乱で持ち場を離れていたようです」
「…………」
ライトの顔からも笑みが消える。
「王家の墓所……?」
リオネも首を傾げる。
「まさか……」
三人は顔を見合わせた。




