第131話 ドラムガルドへの旅立ち
アルヴァニア王宮
ーー玉座の間
「陛下」
側近が恐る恐る尋ねる。
「早速、ドラムガルドへ使者を送りますか?」
「いや」
レオガルドは首を振った。
「使者だけでは足りぬ」
「…………」
「これだけの情報が漏れている以上……すでに誰かが動いている可能性がある」
「…………」
そして、レオガルドはライトを見る。
「ライト殿」
「はい」
「頼めるか?」
ライトは頷いた。
「分かりました」
リオネが満面の笑みを浮かべる。
「じゃあ!」
「ドラムガルドへ出発ね!」
「うん」
「…………」
「ただし」
ライトはリオネを見る。
「今回は観光じゃない」
「分かってるわ!」
「王様を……土のレガリアを守るんだ」
「任せて!」
「…………」
ライトは苦笑する。
「頼もしくなったな」
「でしょ?」
リオネは胸を張る。
「あなたの未来の奥さんだから!」
「…………」
「それは関係ない」
「あるの!」
「ない」
「ある!」
「…………」
レオガルドは二人を見ながら苦笑する。
だが、その瞳の奥には、王としての鋭い光が宿っていた。
「ライト殿」
「はい」
「一つだけ覚えておけ」
「…………」
「ドラムガルドは……」
レオガルドは低く告げる。
「他国との交流をあまり好まぬ……友好国としている我らアルヴァニアの民であっても、誰でも歓迎されるわけではない……ゆえに歓待は期待するな」
「…………」
「そして」
「土のレガリアの秘密を知る者が少ないからこそ……有力な権力者の中に裏切り者がいる可能性もある」
「…………」
ライトの表情が引き締まる。
「敵は……アストリアだけじゃない」
「ああ」
レオガルドは頷いた。
「油断すると味方に背中を刺される……その可能性を忘れるな」
◇
――その頃
遥か西方。
ドラムガルド公国・王都アイゼンベルグ
巨大な山脈をくり抜いて造られた城塞都市。
無数の煙突から煙が上がり。
地下深くでは、数千人のドワーフ達が鍛冶を続けている。
その最深部にある王の間。
「…………」
新たな玉座に座る男。
若きドワーフ王バルグリム・ドラムガルド。
「…………」
その右手には巨大な王の指輪。
そして。
その身体の奥には――
「…………」
巨大な何かが眠っている。
大地
岩盤
鉱脈
そして……
遥か古代から受け継がれてきた力。
「土のレガリア……」
バルグリムは小さく呟いた。
「俺が……新たな王か」
その時、王の間の扉が開いた。
「陛下」
一人のドワーフが入ってくる。
「何だ?」
「王都の外で……」
「…………」
「不審な者達が確認されています」
「…………」
バルグリムの眉が動く。
「人数は?」
「分かりません」
「…………」
「ですが……」
そのドワーフは声を潜める。
「アストリア王国の紋章に似た模様の装備を身につけていたとの報告が……」
「…………」
バルグリムの瞳が鋭くなる。
「……そうか」
そして、王の身体から。
ほんの僅かに――
大地のような魔力が漏れ出した。
「……早速来たか」
◇
同じ頃。
アルヴァニア王宮。
「準備できた?」
リオネが尋ねる。
「うん」
ライトは漆輝を腰に差す。
背中には白と黒の翼。
「行こう」
リオネも大剣を背負う。
炎のレガリア。
獣神化。
「ドラムガルドへ!」
「…………」
二人は並んで歩き出した。
目的は一つ。
土のレガリアを宿した新王――バルグリムを守る。
だが。
その先に待つものは単なる護衛任務ではない。
新たなレガリアとの出会い。
国家内部の裏切り。
そして。
アストリア王国との、さらなる戦い。
「…………」
ライトは空を見上げた。
「今度こそ……誰も失わない」
その言葉に。
リオネが隣から答える。
「うん、私も一緒だから大丈夫だよ」
ライトは少しだけ笑った。
そして。
二人はドラムガルドへ向けて、飛び立った。
――七つのレガリア。
現在確認されている光・闇・炎・風・水……それに続いてその六つ目。
「土」の物語が、今、始まろうとしていた。




