第129話 炎のレガリア
リオネの体から放たれる炎がさらに激しく燃え上がる。
「…………」
そして、リオネの背中から巨大な獣のオーラが噴き出した。
「――――ッ!!」
炎
そして
獣神
二つの力が一つになる。
レオニダスが呟く。
「獣神化……」
「…………」
「そうか……貴様は……炎のレガリアに選ばれたか」
リオネが顔を上げる。
その瞳にもう迷いはなかった。
「…………」
ライトが見つめる。
「リオネ……」
リオネはライトを見る。
「ライト……見てて」
「これが……」
炎が爆発する。
「私の力よ!!」
「――――獣神化!!」
ドゴォォォォォン!!
炎の柱が天井を突き破る。
その時、アルヴァニア王都全体がその咆哮を聞いた。
「――――ッ!!」
獣人達が空を見上げる。
「何だ!?」
「炎が……!」
「王宮からだ!」
その炎の中心には一人の少女が立っていた。
獣人国アルヴァニア第一王女……
リオネ・アルヴァニア
炎のレガリア。
そして。
新たなる獣神化。
「…………」
レオニダスが笑う。
「見事だ」
リオネが大剣を握る。
いや、折れたはずの大剣。
その刃が炎に包まれていく。
「私……」
リオネはライトを見る。
「強くなった?」
ライトはしばらく何も言わなかった。
そして
「フッ……」
笑った。
「ああ、すごく……」
ライトは静かに答えた。
「強くなったよ」
リオネの顔が、ぱぁっと明るくなる。
「本当!?」
「ああ」
「ライトより?」
「…………」
「…………」
「そこは……」
ライトは苦笑した。
「まだ俺かな」
「何よ!」
「でも」
ライトはリオネを見る。
「もう……俺が守らなくても大丈夫そうだ」
「…………」
リオネの顔が、少しだけ寂しそうになる。
ライトは慌てて続ける。
「いや、そういう意味じゃなくて!」
「…………」
「これからは――」
ライトは笑う。
「一緒に大切な人達を守れるってことだよ」
「…………」
リオネの瞳が大きく見開かれる。
そして……笑った。
「うん!」
その二人を、レオガルドは静かに見つめていた。
ライト……光と闇のレガリアを宿す者。
そして。
リオネ……炎のレガリアに選ばれた者。
「…………」
レオガルドは空を見上げる。
「三つ目……」
世界に存在する七つのレガリア。
水
風
火
土
雷
光
闇
そのうち……
水のレガリアはルミナス。
風のレガリアはアイリシア。
そして今……
「炎のレガリアは……」
レオガルドは孫娘を見る。
「リオネか」
「…………」
だが、その顔には喜びだけではない。
不安もあった。
レガリアを巡る戦い。
アストリア王国。
ツヴァイス神聖国。
七つのレガリアを集めようとしている者達。
「…………」
レオガルドは拳を握る。
「やはり……戦いは避けられぬか」
その時。
「おじい様!」
リオネの声。
レオガルドが振り返る。
「私……」
リオネは。
ライトの隣に立つ。
「ライトと一緒に戦う!」
「…………」
「私は……」
炎のレガリアを宿した拳を握る。
「この力を……獣人国を守るために使う!」
そして、ライトを見る。
「そして……ライトの大切な人達も守る!」
「…………」
ライトの瞳が揺れる。
「リオネ……ありがとう」
「だから!」
リオネは笑う。
「早く結婚しましょう!」
「…………」
「…………」
「何でそうなるんだよ!!」
ライトの絶叫が、再び獣人国アルヴァニアに響き渡った。
――こうして一人で強くなるために旅へ出た少年は、この地で新たな力を得た。
そして……
新たな仲間を得た。
光と闇、そして炎。
三つのレガリアが、今……同じ場所に集った。
だが、それは同時に世界のどこかで新たな動きが始まったことを意味していた。
――アストリア王国。
地下深く。
七つのレガリアを示す巨大な魔法陣。
「…………」
その中で。
一つ。
「火」の魔法陣が赤く輝き始める。
「――――反応を確認!」
研究員が叫ぶ。
「炎のレガリアです!」
「…………」
「まさか……!」
「新たな器が誕生した!?」
その報告を聞いた男。
レイヴンは静かに笑った。
「…………」
「炎のレガリア……新たな器が現れたか」
レイヴンの視線が、漆黒の結晶が無数に突き刺さった空間へ向く。
そこには七つの石像。
その石像に刻まれた
水
風
火
光
闇
五つの紋章が、僅かに輝いている。
「…………」
「残るは二つ」
「土」
「雷」
レイヴンは笑う。
「……光と闇の器は、すでに見つけた」
「炎の器も……」
「ならば」
レイヴンの瞳が冷たく光る。
「そろそろ狩りを始めよう」
――同じ頃
獣人国アルヴァニア。
レオニダスの思念体は静かに消え始めていた。
「…………」
ライトが尋ねる。
「レオニダス王」
「…………」
「あなたは……」
「レガリアについて、何か知っているんですか?」
「…………」
レオニダスはライトを見る。
そして、リオネを見る。
「知っている」
「…………」
「だが、今はまだ……全てを語る時ではない」
「…………」
「貴様らは、もっと強くなる必要がある」
ライトとリオネ。
二人の顔を見る。
「光と闇」
「そして炎」
「いずれ貴様らはこの世界の運命を左右する」
その言葉にライトの表情が変わる。
「運命……」
レオニダスは、最後に一言だけ。
「忘れるな」
「レガリアは――力ではない」
「意思だ」
その瞬間、レオニダスの姿が。
光となって消えていく。
「意思……」
ライトは、その言葉を胸に刻んだ。
そして、その隣でリオネが拳を握る。
「ライト」
「何?」
「私達なら絶対に大丈夫よ」
「フッ……」
ライトは少しだけ笑った。
「そうだな」
一人で強くなるためにこの国へ来た。
だが、今は違う。
自分の隣には炎を纏う少女がいる。
そして、彼女だけではない。
いつか、この旅の先でもっと多くの仲間と出会う。
そして、その仲間達と……そして家族と共に世界を守る。
ライトは空を見上げる。
「俺は……もう失わない」
その呟きを。
リオネだけが聞いていた。
そして、リオネは小さく笑った。
「当り前よ」
「え?」
「これからは……私がそばにいるんですもの」
「…………」
ライトは、何も言えなかった。
ただ、少しだけ……笑った。
――獣王の試練
それは、二人の新たな力を目覚めさせた。
そして、世界に散らばる七つのレガリアを巡る戦いは
今、新たな段階へと突入する。
光と闇のレガリア、そして炎のレガリア。
三つの意思が、再び同じ世界に集まった。
――だが、その一方で。
まだ誰も知らない。
土のレガリア。
雷のレガリア。
その二つを宿す者達もまた、この瞬間運命の歯車に巻き込まれ始めていたことを……




