第128話 獣人国の王女
レオニダスの魔力が膨れ上がり、戦いの合図が打ち鳴らされる。
「――――開始!」
ドンッ!!
「――――ッ!!」
リオネが大地を蹴る。
「獣闘術――!」
一瞬で加速。
「瞬牙!!」
レオニダスの懐へ。
「――――ッ!」
大剣を振る。
だが……
「遅い」
ドゴォォォン!!
拳……ただそれだけの攻撃で、リオネの身体が吹き飛ぶ。
「リオネ!」
「――――ッ!!」
地面を転がる。
「…………」
ライトが駆け寄ろうとする。
だが……
「来ないで!」
「…………!」
リオネが立ち上がる。
口元から血。
「…………」
「私は……」
大剣を握る。
「一人で……」
「…………」
「勝つ……!」
「無理だ!」
ライトが叫ぶ。
「相手が悪すぎる!」
「…………」
リオネが睨む。
「あなたは……黙って見てて!」
「…………」
「これは私の戦いよ!」
リオネが走る。
「――――ッ!!」
攻撃
回避
反撃
「――――ッ!」
「――――ッ!」
リオネの身体が吹き飛ぶ。
何度も
何度も
それでも
「…………」
立ち上がる
「…………」
また倒される
「…………」
それでも立ち上がる
「…………」
「どうして……」
ライトが呟く。
リオネは立ち上がる。
「どうして……諦めないんだ……」
その時、リオネが笑った。
「だって……」
「…………」
「私は……」
大剣を握り締める。
「獣人国の王女よ」
「…………」
「次の獣王よ」
「…………」
「だったら……」
身体が震える。
「こんなところで……負けられない!」
そこへ、レオニダスが迫る。
「終わりだ」
リオネへと拳が迫る。
「――――ッ!!」
リオネが大剣を構える。
「…………!」
ドゴォォォン!!
「リオネ!!」
リオネの身体が吹き飛ぶ。
手にしている大剣は折れていた……
「…………」
地面に倒れるリオネ。
それを見たライトが駆け出す。
「リオネ!」
「来ないで……」
「…………」
「まだ……」
「…………」
リオネは震える身体を起こす。
「まだ……私は……」
「…………」
「負けてない……」
「リオネ!」
「私は……」
立ち上がる
足が震える
身体は限界
魔力も残っていない
武器もない
それでも……
「私は……」
その瞬間……リオネの胸の奥で、何かがドクンと鼓動した。
「…………」
「え?」
ドクン!
胸の奥から。
熱が生まれる。
「…………」
それは、怒りではない。
憎しみでもない。
ただ……
「負けたくない」
「諦めたくない」
そして……
「守りたい」
ライトの姿が、脳裏に浮かぶ。
一年半、共に修行した。
何度も笑った
何度も喧嘩した
何度も決闘した
いつも、ライトは先を歩いていた。
強くなって
新しい力を手に入れて
そして今も自分の前に立っている。
「…………」
「私も……」
リオネの拳が震える。
「私も……」
「ライトの隣に……立ちたい!!」
その瞬間
――――ドクンッ!!
「――――ッ!!」
凄まじい炎が、リオネの身体から噴き出した。
「なっ……!」
ライトが目を見開く。
「リオネ!?」
炎
赤い炎
それが、リオネの全身を包む。
「――――ッ!!」
「何だ!?」
レオガルドが立ち上がる。
「この魔力は……!」
獣人国の重臣達が騒然となる。
「まさか……そんな……!あり得ない!」
レオガルドの瞳が見開かれる。
「――――炎のレガリア……!」
「…………」
ライトが息を呑む。
「レガリア……?」
リオネの身体から。
炎がさらに激しく燃え上がる。
「…………」
「熱い……」
「…………」
「でも……」
リオネは、笑った。
「力が……湧いてくる……!」
炎が、リオネの身体を包み込む。
そして……
「――――ッ!!」
全身の毛が黄金色へ変わる。
髪が炎のように逆立つ。
瞳が燃えるような紅へ変わる。
「…………」
「リオネ……?」
ライトが呟く。
その背後。
巨大な炎の獣が姿を現した。
「…………」
レオニダスが、初めて驚愕の表情を浮かべた。
「その力は……炎のレガリア……」
リオネの胸元。
そこに、赤く輝く紋章が浮かび上がる。
「レガリア……」
リオネが呟く。
「これが……私の力……?」
獣人国の王女、リオネ・アルヴァニアが真の力に目覚めた瞬間であった。




