第125話 修行の日々
――それから
ライトとリオネの修行は続いた。
来る日も
来る日も
「――――ッ!!」
ドンッ!!
ライトが大地を蹴る。
身体が消えた。
「そこっ!!」
リオネの大剣が振り抜かれる。
しかし
「――――」
空を切る
「いない!?」
「こっちだよ」
「え?」
背後……ライトが立っていた。
「…………」
「いつの間に!?」
「今のは獣闘術の足運び」
「…………」
リオネが目を細める。
「まだまだね」
「え?」
「今の動き」
「…………」
リオネはニヤリと笑った。
「私なら、もっと速く動けるもん」
「…………」
「もう一回!」
「えぇ……」
「もう一回!!」
「分かったよ……」
「よし!やるわよ!」
二人は再び構える。
「――――ッ!!」
「――――ッ!!」
ドンッ!!
大地が揺れる……二人の姿が同時に消えた。
「…………」
「…………」
少し離れた場所。
その光景を見つめている者達がいた。
獣人国王レオガルド・アルヴァニア。
そして、その側近達。
「…………」
「……陛下」
「何だ?」
「もう……一年半になります」
「そうだな」
「ライト殿がこの国へ来てから……」
レオガルドは空を見上げる。
「一年と半年か……」
「…………」
「そんなに……」
側近が呟く。
「まだ、あの二人は修行を続けるおつもりなのでしょうか?」
「当然だ」
レオガルドは即答した。
「リオネがいる限りな……」
「…………」
その瞬間。
「ライトォォォォ!!」
遠くから叫び声が聞こえた。
「今のは卑怯よ!!」
「卑怯じゃないって!」
「背後から攻撃するなんて!」
「戦闘中だよ!?」
「正面から来なさいよ!」
「それじゃ獣闘術の意味ないだろ!」
「…………」
レオガルドは目を閉じる。
「……相変わらずだな」
「はい……」
側近が苦笑する。
だが、レオガルドは知っていた。
この一年半、ライトがただ遊んでいたわけではないことを。
◇
――一年半前
「獣化」
ライトはその言葉を何度も繰り返していた。
「獣人族は……」
リオネが説明する。
「身体の奥にある獣の力を引き出すの」
「魔力で呼び起こして、身体そのものを変える」
「…………」
ライトは考え込んだ。
「なら……俺の場合は?」
「…………」
「獣人の血はない」
「でも」
ライトは自分の胸に手を当てる。
「俺には……光と闇のレガリアがある」
リオネは首を傾げる。
「それを獣化みたいにするの?」
「そう」
「…………」
「できるかしら?」
「分からない」
ライトは笑った。
「だから試すんだよ」
◇
最初の頃
ライトは何度も失敗した。
「――――ッ!!」
ドンッ!!
「ぐっ……!」
身体が吹き飛ぶ。
「ライト!」
「大丈夫だよ……」
「大丈夫じゃないわよ!」
「もう一回やってみる……」
「駄目!」
「でも……」
「今日は終わり!」
「…………」
「ライト!」
「…………」
「聞いてる!?」
「……聞いてる」
「なら休みなさい!」
「…………」
「絶対ダメよ!」
「…………」
「返事!」
「……はい」
「よろしい!」
◇
次の日
「…………」
ライトは再び立っていた。
「光」
身体の内側から、白い魔力。
「闇」
そして、黒い魔力。
二つの力が同時に流れ込む。
「――――ッ!!」
ドクン。
「…………」
一瞬、ライトの瞳が変わる。
右目が白く。
左目が黒く。
「…………」
「ライト?」
リオネが目を見開く。
「今のって……」
「いや、まだ駄目だ」
ライトは首を振る。
「維持できない」
「…………」
「一秒も持たない」
「でも」
リオネが笑う。
「前より長いじゃない」
「…………」
「だから、少しずつよ」
「…………」
「一年かかっても」
「二年かかっても」
「三年かかっても」
リオネは拳を握る。
「出来るまでやればいいじゃない」
「…………」
ライトはリオネを見る。
「……そうだな」
リオネの前向きな言葉にはいつも救われる……ライトは、ふとそう思った。
◇
そして、季節が変わった。
春
夏
秋
冬
再び春
一年
そして、一年半
その間、ライトは獣闘術を学び。
獣人族の身体操作を学び。
自分の魔力を研究した。
光と闇
聖魔王の力
そして
今の自分自身に何が出来るのか……
「…………」
ライトは気付いていく……
獣人族の獣化とは、獣になることではない。
「自分の中にある力を……自分自身の肉体へ引き込む」
「…………」
ならば自分も……
「光と闇の力を肉体に引き込む……」
それは……
単なる変身ではない
力を借りるのではない
力を放出するのでもない
「俺自身が……光であり闇に成る」
必ず成し遂げる……ライトの瞳には、強い決意の炎が灯っていた。




