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勇者の息子に転生したら育ての親が魔王でした~最強に育って無双します~  作者: ララ
覚醒編

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第123話 獣闘術

――獣人国アルヴァニア


ライトがこの国へやって来てから、数日が経過していた。


本来ならば、ただ一人……誰にも迷惑をかけず自分自身を鍛えるための修行の旅。

その最初の目的地として、獣人国を選んだ。


……はずだった


「ライト!」


「…………」


「ライトー!」


「…………」


「ライト!」


「……何?」


ライトが振り返る。


そこには、満面の笑みを浮かべたリオネがいた。


「今日も修行するんでしょ?」


「うん」


「私も一緒に行く!」


「…………」


ライトは無言で歩き始めた。


「ちょっと!」


リオネが追いかけてくる。


「待ちなさいよ!」


「いや、別に一緒に来るのはいいけど」


「ならいいじゃない!」


「でも……」


ライトは振り返る。


「何で腕を組むの?」


「婚約者だから」


「違う」


「未来の婚約者」


「それも違う」


「未来の未来の婚約者」


「何それ」


「つまり、最終的には結婚するのよ」


「しないって」


「…………」


リオネが頬を膨らませる。


「……ライトって、頑固ね」


「君にだけは言われたくない」


「何ですって!?」


「ほら、行くよ」


「待って!」


リオネは慌ててライトの腕に抱きついた。


「だから離れて」


「嫌!」


「…………」


ライトは諦めた。


――修行の旅


そのはずだった。


しかし……

隣を見ると、リオネが満面の笑みで歩いている。


そう――なぜか、獣人国王女が常に隣にいる。


ライトは深くため息を吐いた。



――獣人国・王都郊外


「ここが……」


ライトは目の前の光景を見つめていた。


「獣闘術の修練場よ!」


リオネが胸を張る。


そこには、数十人の獣人達がいた。


虎族


狼族


豹族


熊族


様々な獣人達が、己の身体を鍛えている。


剣を使う者


槍を使う者


そして


「――――ッ!!」


「ハァァァァッ!!」


「ドンッ!!」


武器を使わず、己の拳と脚だけで戦う者達も。


ライトの目が輝く。


「すごい……」


「でしょ?」


リオネが得意げに笑う。


「獣人族は、身体能力が高いだけじゃないの」


「身体そのものを武器にするのよ」


「それを獣闘術っていうの」


ライトは修練場を見渡す。


一人の獣人が拳を放つ。


「――――ッ!」


「…………」


ライトの視線が、その動きを追う。



踏み込み


腰の回転



そして


「…………」


拳を打ち込んだ直後、獣人は即座に身体を捻る。


そして、そのまま相手の懐へ潜り込む。


「なるほど……」


ライトが呟く。


「剣術とは違う」


「ええ」


リオネが頷く。


「獣闘術は、武器を失っても戦える」


「むしろ……」


リオネが拳を握る。


「自分自身が武器なのよ」


「…………」


その言葉を聞いて。


ライトは自分の手を見る。


これまでの自分は



魔法


魔法剣


そして


聖魔王としての力


それらを組み合わせて戦ってきた。


しかし


――もし、武器を失ったら?


――もし、魔力を封じられたら?


――もし、どんな状況でも戦える身体を手に入れたら?


「…………」


ライトの瞳が鋭くなる。


「リオネ」


「何?」


「俺にも教えて」


「…………」


リオネが固まった。


「え?」


「獣闘術……俺に教えてほしい」


「…………」


「どうしたの?」


「…………」


リオネの耳がピンと立つ。


「…………」


そして


「もちろんよ!!」


「うわっ!?」


リオネが突然ライトへ抱きついた。


「ちょっと!」


「やったぁぁぁ!!」


「離れて!」


「ついに私がライトの師匠に!」


「師匠?」


「そう!」


「私がライトを鍛える!」


「…………」


ライトは嫌な予感がした。


「……大丈夫?」


「何が?」


「君、ちゃんと教えられる?」


「…………」


「…………」


リオネの笑顔が消える。


「ライト」


「はい」


「決闘しましょう」


「何で!?」



――修練開始


「まずは構え!」


リオネが叫ぶ。


「こう?」


ライトが構える。


「違う!」


「え?」


「もっと腰を落として!」


「こう?」


「違う!」


「…………」


「獣人族の戦いは、足から始まるの!」


リオネがライトの背後へ回る。


「身体を沈めて!」


「こう?」


「そう!」


「…………」


「でも、まだ違う!」


「…………」


「もっと!」


「…………」


「もっと!」


「…………」


「もっと!」


「…………」


「ライト!」


「何?」


「もっと獣らしく!」


「無茶言わないでよ」


「獣人族なんだからできるでしょ!」


「俺、人族だから」


「あ」


リオネが固まる。


「そうだった」


「忘れてたの?」


「うん」


「…………」


ライトは頭を抱えた。



だが、リオネの教えは想像以上にライトに合っていた。


「――――ッ!」


ライトが踏み込む。


「そこ!」


リオネが叫ぶ。


「今の動き!」


ライトの身体が一瞬沈む。


そのまま地面を蹴る。


「――――!」


シュッ!


身体が一気に前へ進む。


「速い!」


リオネが目を見開く。


ライトは拳を突き出す。


ドゴォォォン!!


巨大な岩が吹き飛んだ。


「…………」


リオネが呟く。


「…………それ」


「何?」


「私が一週間かけて覚えたこと」


「うん」


「なんで一日で出来るの?」


「…………」


「ねぇ?」


「…………」


「私、師匠としての立場なくない?」


「…………」


ライトは少し考える。


「じゃあ……」


「何?」


「教えるのが上手かったってことで」


「…………」


「駄目?」


「…………」


リオネの耳がピクピク動く。


「……許す!」


「何それ」


「だって、褒められたし!」


リオネは満面の笑みを浮かべた。


ライトは苦笑する。


「単純だな……」


「何か言った?」


「何も」



修行は続いた。


獣闘術


身のこなし


体重移動


足運び


反射


そして


「――――ッ!」


ライトが跳ぶ。


空中で身体を捻る。


そして、そのまま着地。


「…………」


「今の!」


リオネが叫ぶ。


「すごい!」


「そう?」


「そうよ!」


リオネは興奮したようにライトの周囲を回る。


「今の動き、私より綺麗だった!」


「そうなの?」


「うん!」


「じゃあ……」


ライトは考える。


「俺の剣術と組み合わせたら……」


「…………」


ライトの脳裏に浮かぶ。


剣を構える


踏み込む


身体を沈める


そして、一瞬で間合いを詰める。


「…………」


ライトの目が輝いた。


「これ……」


「…………」


「使える」


「何が?」


「獣闘術と剣術」


「…………」


「組み合わせられる」


「…………」


リオネが呆然とする。


「また……」


「何?」


「また新しいこと考えてる……」


「うん」


「ライトって……」


リオネは苦笑した。


「本当に修行馬鹿ね」


「そうかな?」


「そうよ」



その頃。


修練場を見下ろす高台。


「…………」


レオガルドは一人、修練場にある二人の姿を見つめていた。


隣には獣人国の側近。


「国王陛下」


「何だ?」


「あの少年……」


「ああ」


「本当に……勇者の息子なのですか?」


「間違いない」


レオガルドは答えた。


「そして」


「魔王ガルスの養子でもある」


「…………」


「それだけではない」


レオガルドはライトを見る。


「魔王代行」


「光と闇のレガリア」


「…………」


「それに加え……聖魔王」


側近が息を呑む。


「……あまりにも、強すぎませんか?」


「だからこそだ」


レオガルドは静かに答える。


「強いからこそ……この少年は危うい」


「…………」


「自分一人で全てを背負おうとしている」


レオガルドの視線が。


リオネへ向く。


「だが」


「…………」


「リオネは……それを許さないだろうな」


その瞬間。


「ライトー!」


遠くからリオネの声が響く。


「次は私と組手よ!」


「えぇ……」


「早く!」


「ちょっと休ませてよ」


「駄目!」


「何で!?」


「だって!」


リオネは笑う。


「私、ライトと修行するの楽しいんだもん!」


「…………」


ライトが少し驚いたようにリオネを見る。


リオネは何でもないように笑っている。


その笑顔を、レオガルドは静かに見つめていた。


「……そうか」


「陛下?」


「いや……リオネに任せてみよう」


レオガルドは小さく笑った。

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