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勇者の息子に転生したら育ての親が魔王でした~最強に育って無双します~  作者: ララ
第二章 ジューダス帝国編

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第118話 旅立ち

――神樹の国シルヴァリス


「俺は……みんなと一緒に戦う」


そう宣言したライトを、ガルスは黙って見つめていた。


アローラも


リリアナも


エリオスも……


誰もが、その言葉を聞いていた。


ライトの瞳には、もう迷いはない。


父を救う。


ルミナスを取り戻す。


王国の陰謀を止める。


そして、神の顕現を阻止する。


そのために戦う。


その決意は、本物だった。


「……そうだな」


ガルスが低く呟く。


「それでいい」


「父ちゃん……」


「お前はもう、一人で戦う必要はねぇ」


ガルスは拳を握った。


「俺達全員で戦えばいい」


「ああ」


ライトも頷く。


「俺も……そう思う」


その瞬間。


ライトは笑った。


ほんの僅かに。


それは、久しぶりに見せた穏やかな笑顔だった。


だが、その笑顔の奥で、ライトは別のことを考えていた。


――本当に、それでいいのか?



その夜。


神樹の国は静かだった。


昼間の騒がしさが嘘のように、エルフ達の街は静寂に包まれている。


戦いで傷付いた者達は眠り。


聖女エレナ


剣王カイゼル


盾王ガルディオ


三人も未だに目を覚ましていない。


そして、魔導王メフィルドはもういない。


ライトは一人、医療区画の廊下を歩いていた。


足音だけが響く。


「…………」


その足が止まる。


扉の向こう。


そこには、救出された三人が眠っている。


「……ごめん」


ライトは小さく呟いた。


「俺が……もっと早く強ければ」


母、聖女エレナ


剣王カイゼル


盾王ガルディオ


彼女らは救うことができた。


だが……魔導王メフィルドは救えなかった。


そして、アレンも……ルミナスも。


「…………」


ライトは拳を握る。


そして、ゆっくりと歩き出した。



――神樹の国・訓練場


今は修練に励む者もおらず、静かだ。


ライトは一人、そこに立っていた。


手には漆輝。


「…………」


目の前に巨大な岩がある。


ライトは剣を構えた。


「――――」


一閃


ズバッ!!


岩が真っ二つに割れる。


「…………」


さらに


二閃


三閃


十閃


百閃


ライトの剣は、目にも止まらない速度で岩を切り刻んでいく。


最後の一撃。


シュンッ!!


岩が細切れとなり散った。


「……はぁ……」


ライトは息を吐く。


「俺は……強くなった」


確かに以前の自分なら、これほどの力はなかった。


幼いころから魔王国で鍛え。


剣の腕を磨き。


魔法を覚え。


魔王代行となり。


そして。


聖魔王へ至った。


天使化した勇者……父、アレンさえも撃破した。


それでも。


「…………」


ライトは漆輝を見つめる。


「足りない」


あの戦いを思い出す。


天使化個体との戦い。


ルミナスの拉致。


メフィルドの死。


「俺が……もう少し強く聡ければ」


ライトは拳を握った。


「父さんを連れ戻せた」


「メフィルドさんを救えた」


「ルミナス学院長だって……」


そして何より……


「みんなを……戦わせずに済んだ」


ライトの胸が締め付けられる。


自分が戦う……それはいい。


自分が傷付く……それもいい。


だが、自分のために……


ガルスが傷付く


アローラが戦う


デッカーが血を流す


ベイルが命を懸ける


みんなが傷付く。


そして


魔王国も


帝国も


神樹の国も


皆が戦いに巻き込まれる。


「…………」


ライトは目を閉じた。


「俺が……いるから……俺がレガリアだから」


王国は自分を狙う。


ならば、自分が皆と共にいる限り王国は何度でも攻めてくる。


何度でも……何度でも。


「…………」


その時、脳裏に浮かんだ――エリオスの言葉。


『君がここにいる限り、王国は君を狙う』


そして――ガルスの言葉。


『俺達は、お前がいるから戦ったんじゃねぇ』


『お前と一緒に生きたいから戦ったんだ』


「…………」


ライトは目を開く。


「父ちゃん……」


ガルスの言葉は正しい。


間違っていない。


だからこそ、ライトは思った。


「俺は……」


漆輝を鞘へ納める。


「みんなと一緒に戦う」


「そのために……」


夜空を見上げる。


「もっと強くならなきゃ」


今のままでは駄目だ。


今の自分では、ただ皆を戦場へ引きずり込むだけだ。


自分が戦う。


皆が守る。


そんな戦いでは駄目だ。


「俺が……皆を守る」


ライトの瞳に決意が宿る。


「誰も死なせない」


「何も奪わせない」


「そのためには……」


ライトは拳を握った。


「俺自身が強く変わらなきゃいけない」



――翌朝


ライトは、いつも通り朝食の席にいた。


「おはようございます、ライト様」


アローラが微笑む。


「ああ」


「今日は少し顔色がいいですね」


「そうかな?」


「ええ」


ガルスが豪快に笑う。


「そりゃそうだ!」


「昨日まで死にそうな顔してやがったからな!」


「父ちゃん、失礼だな」


「何だと!?本当のことじゃねぇか!」


「お二人とも……」


アローラが呆れたように笑う。


その光景を。


ライトは静かに見つめていた。


ガルス


アローラ


ベイル


デッカー


リリアナ


エリオス


そして、ここにいる全ての人々。


「…………」


ライトは笑う。


「どうした?」


ガルスが尋ねる。


「いや」


ライトは首を振った。


「何でもない」


「そうか?」


「うん……」


「なら食え!」


ガルスが料理を差し出す。


「怪我人は食って寝る!」


「子供じゃないんだから……」


「何だと!?」


「はいはい」


ライトは笑った。


その笑顔は、いつもと何も変わらなかった。



――その日の夜


誰もが深い眠りについた頃。


ライトは一人、静かに目を覚ました。


「…………」


部屋の窓を開ける。


冷たい風が吹き込んできた。


振り返るライトの視線の先には……


必要最低限の荷物。


愛刀の漆輝。


旅用の衣服。


少量の食料。


魔導具。


そして一枚の紙。


「…………」


ライトは机へ向かい筆を取る。


「…………」


何度も迷った。


書いては。


破る。


また書いて。


また破る。


そして、最後に一枚の手紙を残した。


宛先は――家族へ


ライトはしばらく、その手紙を見つめる。


「…………」


本当なら直接伝えたかった。


だが、直接言えばきっと止められる。


ガルスなら怒鳴るだろう。


アローラなら泣くだろう。


ベイルなら一緒に行くと言うだろう。


だから……


「ごめん」


ライトは小さく呟いた。


「俺……一人で行く」


窓の外、巨大な神樹が月明かりに照らされている。


ライトは最後に一度だけ振り返った。


「必ず……帰ってくる」


そして、窓から外へ飛び出した。


白と黒、二対の翼が静かに広がる。


まだ完全ではない。


傷も癒えていない。


それでも、ライトは空へ舞い上がった。


「…………」


眼下を見下ろす。


そこには、自分が守りたい人達がいる。


「みんな……」


ライトは拳を握った。


「待っててくれ」


そして、一人夜空へ飛び立った。



――翌朝


「ライト様!」


アローラの声が響いた。


「ライト様!?」


返事がない。


「……?」


扉を開ける。


部屋には誰もいない。


ベッドも机も全てが整えられている。


ただ一つ、机の上に置かれた紙を見つける。


「これは……」


アローラが手に取る。


そこには


『家族へ』


そう書かれていた。


「…………」


アローラの手が震える。


「ガルス様……」



「……何だと?」


手紙を読み終えたガルスの表情が固まる。


その手には、ライトからの手紙。



父ちゃん、ごめん


直接言ったら、絶対に止められると思った


だから、黙って行くことにしたよ


俺は、もっと強くならなきゃいけないから


父ちゃん達が傷つかなくて済むように


俺がみんなを守れるようにならなきゃいけないから


今の俺じゃ、また誰かを失う


だから、修行に行くよ


必ず帰ってくるから


それまで、みんなのことを頼む


そして――


俺が帰ってくるまで、絶対死ぬなよ


ライト



「…………」


長い沈黙。


「……あの馬鹿」


ガルスの拳が震える。


「一人で全部背負いやがって……」


「ガルス様……」


アローラの目から涙が零れる。


「どうして……」


「どうしてお一人で……」


ベイルも手紙を見つめる。


「ライト様……」


その時。


「……追いかけないんですか?」


リリアナが尋ねた。


「…………」


ガルスは答えない。


「ライト君は……自分一人で戦うつもりではありません」


エリオスが静かに言った。


「力を手に入れて、皆を守れる自分になるまで……帰ってこないつもりでしょう」


「…………」


ガルスは拳を握る。


連れ戻すことは簡単だ、今すぐ追いかければいい。


だが。


「……いや」


ガルスは首を振った。


「行かせてやろう」


「ガルス様!?」


アローラが驚く。


「でも……」


「分かってる」


ガルスは窓の外を見る。


ライトが飛び去った方向。


「アイツは今、自分で答えを見つけなきゃならねぇ」


「俺達が追いかけたら……また、アイツは俺達を守ろうとする」


「…………」


「だったら」


ガルスは笑った。


「待ってやるしかねぇだろ」


「でもよ」


その笑顔は。


どこか寂しかった。


「帰ってきた時は……」


拳を握る。


「今度こそ、俺達全員で戦うぞ」



――その頃


神樹の国から遥か遠く。


ライトは一人、空を飛んでいた。


目的地はない。


師もいない。


修行方法も決まっていない。


ただ、強くなる……そのためだけに。


「…………」


ライトは眼下に広がる世界を見る。


魔王国


帝国


エルフの国


王国


それ以外にも、この世界にはまだ自分の知らない場所がある。


知らない敵がいる。


知らない力がある。


「俺は……」


ライトは呟く。


「まだ知らない事だらけだ」


これまで、魔王国で育った。


帝国学院で学んだ。


それだけだ。


世界の広さを知らない。


自分の力の限界も知らない。


光と闇、二つのレガリア。


聖魔王……その力すら完全には使いこなせていない。


「だったら……」


ライトは速度を上げる。


「全部知る」


「全部覚える」


「誰よりも……強くなる」


その時、遠くに巨大な山脈が見えた。


その向こう。


人の気配は感じない……しかし、魔力の濃度が異常に高い。


「…………」


ライトは進路を変える。


山脈へ向かう。


「まずは……」


その山の中へ一人で降り立った。



――神樹の国。


その夜、ガルスは一人神樹の下に立っていた。


「ライト……」


空を見上げる……もう姿は見えない。


「強くなってこい」


誰もいない空へ向かって呟く。


「だがな……」


ガルスは拳を握る。


「忘れるなよ」


「お前が帰ってくる場所は……俺たちのところだからな」


風が吹いた。


神樹の葉が揺れる。


その一枚が、静かにガルスの肩へ落ちた。



そして、誰も知らなかった。


ライトが一人で始めた修行の旅。


それが、後に世界の歴史を大きく変えることになるとは。


この旅の先で、ライトは新たな力を手に入れる。


新たな仲間と出会う。


そして


自分自身の中に眠る「光」と「闇」二つのレガリアの本当の意味を知ることになる。

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