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勇者の息子に転生したら育ての親が魔王でした~最強に育って無双します~  作者: ララ
第二章 ジューダス帝国編

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第109話 激化する神樹の国防衛戦

――神樹の国シルヴァリス。


戦況は、再び絶望へと傾いていた。


「ぐっ……!」


ガルスの身体が吹き飛ぶ。


天使化した勇者の特殊個体の一振り。


それだけで魔帝王の鎧は砕け、胸元から鮮血が噴き出した。


「ガルス!」


デッカーが咆哮し、巨体ごと突撃する。


巨大な竜爪が勇者へ振り下ろされる。


しかし。


「──排除」


感情のない声。


純白の翼が一度羽ばたいた。


ズガァァァァッ!!


光の衝撃が炸裂し、デッカーの巨体が空中で弾き飛ばされる。


「がぁぁぁぁぁっ!」


岩山へ叩き付けられた魔竜王は、大地を何百メートルも滑り、ようやく止まった。


黒金の鱗は砕け、左翼は完全に裂けている。


それでも立ち上がろうとする姿に、魔王の軍勢は息を呑んだ。


「デッカー様まで……!」


勇者の特殊個体は止まらない。


黄金の光剣が次々と空へ生まれ、それが雨のように降り注ぐ。


轟音


斬撃


神樹の枝が切り裂かれ、巨大な幹へ無数の傷が刻まれていく。


「結界を張れ!」


長老が叫ぶ。


エルフの魔導師たちが神樹の力を借りて結界を展開する。


しかし……


パリン――


一振り。


たった一振りで結界は砕け散った。


「そんな……」


長老は膝をつく。


神樹さえ悲鳴を上げるように枝葉を震わせていた。



「まだだ……!」


ガルスは血を吐きながら立ち上がる。


「アレン!」


漆黒の魔力を全身へ纏い、再び拳を握る。


「俺は、お前を見捨てねぇ!」


魔帝王の魔力が爆発する。


真正面から勇者へ飛び込む。


しかし。


黄金の剣が振るわれる。


拳と剣が激突した瞬間、ガルスの拳は押し返され、その身体は再び宙を舞った。


「がっ……!」


勇者の特殊個体は追撃を止めない。


翼を広げ、まるで流星のような速度で肉薄する。


「ガルス!!」


デッカーが割って入る。


巨大な身体で勇者を押し潰そうとするが、勇者は片手で竜爪を受け止めた。


「……な」


魔竜王が初めて絶句する。


勇者の特殊個体はそのまま竜爪を掴み――


投げた。


山ほどもある巨体が軽々と放り投げられ、神樹の根元へ叩き付けられる。


ズガァァァァン!!


神樹全体が激しく揺れた。


「くっ……!」


ガルスは歯を食いしばる。


理解していた。

このままでは勝てない。


神樹の国も、ここにいる全員も滅ぶ。



その頃――


帝国学院・研究棟。


リーパーの映像を見つめる研究室には、重苦しい沈黙が流れていた。


誰も言葉を発せない。


画面の向こうでは、ガルスもデッカーも追い詰められている。


ライトだけが、静かに拳を握っていた。


「……父ちゃん」


その声は震えていた。


デッカーが倒れる。


ガルスが立ち上がる。


また倒れる。


その姿を見続けることはできなかった。


「ライト君……」


ルミナスが呼び掛ける。

だが、その言葉は届かない。


ライトはゆっくりと立ち上がった。


「もう……限界だ」


静かな声。


しかし、その身体から溢れ始めた魔力は、研究室全体を震わせるほどだった。


漆黒の魔力。


そして。


神白の魔力。


二つが混ざり合い、螺旋を描き始める。


「ライト様……?」


シュプールが後退る。


見たことがない。


いや、一度だけ見た。


以前、王国が侵攻してきた時、その姿を…..


「すまない…..」


ライトは静かに呟いた。


「分かってます」


シュプールは小さく頷く。


「俺がここを離れたら、俺や魔王国にかけられた疑いが深まる事になる…..」


「それでも――」


その瞳へ宿るのは、怒りだった。


「家族を見殺しにはできない」


次の瞬間。


純白の光が爆発する。


白銀一色だった髪に漆黒の筋が走り、背中から神々しい白と黒、二対の翼が広がる。


そして、その瞳は蒼く光を放つ。


聖と魔。


二つの力を併せ持つ存在。


――聖魔王。


研究室にいた全員が息を呑む。


「ライト様……」


フィオレリアが震える声で呟く。


ライトは静かに窓を開く。


「父ちゃん……デッカーさん……待ってて」


翼が一度羽ばたく。


その瞬間姿が消えた。


音すら置き去りにする速度。

光そのものとなって、神樹の国へ飛び去っていった。



その様子を学院が見える時計塔の屋根から、一人の男が見ていた。


アストリア王国参謀レイヴン。


彼はライトが飛び去る光の筋を見て、静かに笑う。


「……掛かった」


近くの工作部隊員が視線を向ける。


「対象が帝国学院から離れました」


レイヴンは満足そうに頷く。


「最初から神樹の国を滅ぼすことが目的ではない」


「ライト君を学院から引き離すことが目的……本来であれば、ライト君を捕える為の策だったが……まぁいい」


彼はゆっくりと立ち上がる。


「さあ」


「水のレガリアを迎えに行こうか」



――帝国学院


ライトが飛び去ってから、わずか数分。


学院結界の一角が、音もなく揺らいだ。


黒曜計画実行部隊。


そして、その中央を歩く一人の男。


黒い外套。


鋭い灰色の瞳。


アストリア王国参謀――レイヴン。


彼は学院長室を見上げ、小さく笑った。


「ルミナス・ネレイア」


彼の背後では、黒曜計画実行部隊が静かに武器を構える。


狙いはただ一つ。


水のレガリア。


学院から最強の守護者が離れた今、王国は再びその牙を剥こうとしていた。

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