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勇者の息子に転生したら育ての親が魔王でした~最強に育って無双します~  作者: ララ
第二章 ジューダス帝国編

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第106話 踊る漆輝

――帝国学院・学院長室前。


足音が止まる。


静寂の中、ゆっくりと姿を現したのはライトだった。


腰には、漆黒の刃

愛刀――《漆輝しっき


その表情には、いつもの穏やかさはない。


静かな怒りだけが宿っていた。


「対象確認」


黒曜工作部隊の一人が短剣を構える。


「排除」


「いや」


隊長格の男が首を振る。


「殺すな」


「邪魔なら四肢を折れ」


「レイヴン様は、この男にも興味を示している」


ライトは小さく息を吐く。


「……本当に」


そして、漆輝へ右手を添えた。


「どいつもこいつも、人を物みたいに扱いやがって」


カチリ――


鍔が鳴る。


その小さな音だけで、空気が変わった。


「来るぞ!」


工作員達が同時に動く。


十数本の短剣が四方から迫る。


魔法は使えない。


結界もない。


普通なら逃げ場はない。


だが――


「遅い」


シュンッ


一瞬だった。


ライトの姿が消えたように見えた。


次の瞬間。


キィンッ!!


銀色の軌跡が一閃する。


工作員の短剣が、根元から綺麗に切断されて宙を舞った。


「なっ……!」


さらに一歩。


漆輝が横へ流れる。


ドンッ!


工作員二人が同時に壁へ叩き付けられ、意識を失う。


しかし、誰一人斬られてはいない。


峰打ち。

だが、その一撃は鎧越しでも骨まで響く。


「囲め!」


残る工作員が一斉に飛び込む。


ライトは半歩だけ身体をずらした。


漆輝が踊る。


一人


二人


三人


まるで舞うような太刀筋。

しかし、無駄な動きは一切ない。


気付けば工作員達は全員武器を失い、床へ転がっていた。


「ば、馬鹿な……」


隊長格が後退る。


「魔法が封じられているのに……!」


ライトは静かに答えた。


「誰が」


漆輝を納める。


「俺は魔法しか使えないって言った?」


その一言に、隊長の顔色が変わる。


「剣士……だと」


「違う」


ライトは首を横へ振る。


「必要だから覚えただけだ」



「学院長!」


ライトは拘束されたルミナスへ駆け寄る。


黒い鎖。


魔力を吸い続ける呪具。


「これも王国製か」


漆輝を逆手に持つ。


「少し我慢してください」


キィン。


一太刀。


魔力を帯びた鎖が真っ二つに断ち切られる。


「切れた……?」


ルミナスが目を見開く。


普通の武器では壊れないであろう拘束具。

それを、まるで紙でも切るように。


続けてエリオスの鎖も断ち切る。


「助かったよ……」


エリオスが苦笑する。


「君には借りばかりだね」


「後で返してくださいね」


ライトは短く笑う。


「でも、今はまだ終わってません」


その視線が残る工作員達へ向く。


隊長は歯を食いしばった。


「撤退!」


「対象確保は失敗だ!」


煙玉が炸裂する。


学院長室が黒煙に包まれた。


数秒後。


煙が晴れた時には、工作員達の姿は跡形もなく消えていた。


ライトは窓の外を見る。


「逃げたか」


ルミナスは静かに立ち上がる。

まだレガリアは反応しない。


「ありがとう、ライト」


「でも、これで終わりではないね」


「ええ」


ライトの表情も引き締まる。


「王国は学院まで手を伸ばしてきました」


「次はもっと大規模に来るでしょう」



その頃――

神樹の国シルヴァリス。


戦場は再び静まり返っていた。


勇者アレン


聖女エレナ


二体の特殊個体だけが前へ進む。


その前に立つのは。


魔帝王ガルス


そして魔竜王デッカー


「よう」


デッカーが牙を見せる。


「二対二だ」


「文句ねぇだろ」


ガルスとデッカーは拳をコツンと合わせて見せる。


勇者の特殊個体は無言。


聖女の特殊個体も反応はない。


ただ黄金の瞳だけが二人を見据えていた。


「始めるぞ」


ガルスが拳を握る。


漆黒の魔力が全身を包み込む。


デッカーも翼を広げ、空へ舞い上がる。


「俺は聖女を抑える!勇者は任せるぞ!」


「任せろ」


ガルスは静かに頷く。


「アレン」


その声だけは、どこまでも優しかった。


「今度こそ、お前を連れて帰る」


返事はない。


代わりに。


勇者の特殊個体が剣を構えた。


同時に聖女の特殊個体の背後へ、純白の魔法陣が幾重にも浮かび上がる。


轟ッ!!


勇者の特殊個体が地を蹴る。


ガルスも踏み込む。


同時だった。


剣と拳。


竜と聖女。


二つの戦いが同時に幕を開ける。


神樹の国の空を震わせる衝撃波。


四つの伝説が激突した瞬間、その戦いは、もはや誰にも予測できない領域へと突入していった。

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