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勇者の息子に転生したら育ての親が魔王でした~最強に育って無双します~  作者: ララ
第二章 ジューダス帝国編

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第105話 踏み躙られる尊厳

――神樹の国シルヴァリス


戦場を覆っていた絶望は、少しずつ形を変え始めていた。


「押せぇぇぇぇっ!!」


ベイルの咆哮が響く。


魔王竜騎士団が左右から剣王の特殊個体を包囲する。


その真正面では、魔竜王デッカーが巨大な翼を広げていた。


「今度は逃がさねぇぞ!」


竜爪が振り下ろされる。


剣王の特殊個体は双剣で受け流そうとするが――


「遅ぇ!」


巨大な尾が横薙ぎに叩き込まれた。


ドゴォォォォン!!


剣王の特殊個体は大地へ激突し、何本もの古木を薙ぎ倒して転がる。


その隙を逃さない。


「終わりだ!」


ベイルが飛ぶ。


漆黒の魔剣が一直線に振り下ろされた。


深淵断罪(アビスジャッジメント)――!」


魔剣が胸部装甲を完全に破壊する。


装甲が砕け、その奥…..管に繋がれた剣王の傍で蠢いている魔力炉が露出する。


「……剣王カイゼル」


誰にも聞こえないほど小さく呟き、ベイルは魔力炉を断ち切った。


眩い光。


剣王の特殊個体は静かに崩れ落ちた。



一方。


「邪魔だぁぁぁ!!」


デッカーの咆哮が天地を揺らす。


盾王の特殊個体が巨大な盾を構える。


しかし今度は違った。

ガルスとの戦いで勇者が引き付けられ、聖女も離れている。


修復が届かない。


「砕けろ!」


竜王咆焔。


黒金の奔流が真正面から盾へ叩き込まれた。


バキッ――


一本


二本


亀裂が走る。


「まだだ!」


デッカーは翼を羽ばたかせ、そのまま巨体ごと突撃した。


轟音。


盾ごと特殊個体を押し潰し、大地へ叩き付ける。


そこへエルフ近衛軍が一斉に放った神樹の根が絡みついた。


「今です!」


アローラが両手を掲げる。


数百の雷槍が一点へ集中する。


轟ッ!!


魔力核が爆ぜ、盾王の特殊個体もまた動きを止めた。



続く相手は。


魔導王の特殊個体


「メフィルド……」


アローラは静かに前へ出る。


かつて同じ時間を過ごした者。


生体兵器として利用される姿など、見ていられなかった。


「今は…..眠りなさい」


魔王軍魔法師団。


エルフ魔導師団。


二つの魔法陣が完全に重なる。


「融合術式――」


紫黒と翠緑の光が一本の光柱となる。


天樹雷鳴(てんじゅらいめい)


轟ッ!!


天から落ちた雷は魔導王の特殊個体だけを包み込んだ。


結界


装甲


魔力炉


その全てを焼き尽くす。


やがて煙が晴れる。


膝をついた魔導王の特殊個体は、静かに崩れ落ちた。


アローラは小さく目を閉じる。


「……メフィルド」


戦場に残った特殊個体は、二体。


勇者アレンと聖女エレナの特殊個体。



勇者はなおもガルスと剣を交えていた。


聖女は静かに二人の後方へ立ち、淡い光を纏っている。


「あと二人……!」


エルフ兵達に希望が戻り始める。


しかしガルスだけは表情を崩さなかった。


「油断するな」


低く呟く。


「一番厄介なのは、ここからだ」


勇者と聖女。


勇者パーティの中心。


最も強く、最も連携していた二人だけが残ったのだから。



その頃――

帝国学院。


夜の帳が学院を包む。


闇に紛れ、黒い外套の集団は学院結界をすり抜けた。


「侵入成功」


「第一段階完了」


黒曜の紋章を胸に刻む工作員達。


その中心に立つ男が、小さな金属箱を取り出した。


「対レガリア拘束装置」


カチリ、と蓋が開く。


中には漆黒の結晶。


「起動」


魔力が流れ込んだ瞬間。


ブゥゥゥゥン……


耳鳴りにも似た低い振動が学院全域へ広がった。



学院長室。


ルミナスの身体が突然揺らぐ。


「……っ!」


右手へ浮かんでいた蒼い紋章が、不自然に明滅した。


水の精霊達が苦しげな声を上げ、一斉に霧散する。


「これは……!」


ルミナスが膝をつく。


「レガリアの魔力が……遮断される……!」


エリオスの顔色が変わった。


「そんな馬鹿な!」


ルミナスは必死に魔力を巡らせる。


しかし応えない。


湖のように満ちていた魔力が、底へ吸い込まれていくように消えていく。


「魔力が……」


「レガリアが反応しない……!」


ルミナスはすぐに理解した。

王国は何らかの方法でレガリアを封じたのだと。


コン。


静かな足音。


学院長室の扉が、ゆっくり開く。


黒い影が十数人。


「発見」


「対象確認」


「水のレガリア保持者、ルミナス・ネレイア」


「捕獲を開始する」



「誰だ!」


エリオスが前へ出る。


学院副学院長としてではない。


一人の魔導士として杖を構えた。


「ルミナスには指一本触れさせん!」


炎が奔る。


雷が迸る。


一瞬で三人の工作員を吹き飛ばす。


しかし。


「第二装置、展開」


黒い球体が床へ落ちた。


ブゥゥン!


空間そのものが歪む。


エリオスの魔法陣が音もなく崩壊した。


「魔法まで……!」


「レガリアだけではないのか!」


学院中の魔力そのものが乱されている。


「しまった……!」


背後へ回り込んだ工作員が短剣を振るう。


エリオスは身を挺してルミナスを庇った。


ザシュッ!


肩から鮮血が舞う。


「エリオス!」


ルミナスが叫ぶ。


「大丈夫……だよ」


息を切らしながらも、エリオスは立ち上がる。


「ルミナスだけは……」


だが次の瞬間。


四方八方から拘束鎖が放たれた。


ガシャン!!


エリオスの両腕と両足を縛り上げる。


「くっ……!」


さらにルミナスの足元にも黒い鎖が巻き付く。


魔法が使えない。


精霊も呼べない。


レガリアも封じられた。


「対象、無力化完了」


工作員達が一斉に二人へ迫る。


その時――

研究棟の廊下から、静かな足音が響いた。


コツ


コツ


コツ


誰かが、ゆっくりとこちらへ歩いてくる。


そして学院長室の扉の向こうから、一つの声が静かに響いた。


「お前らは……どれだけ人の尊厳を踏み躙れば気がすむんだ」


その聞き慣れた声に、ルミナスとエリオスは同時に顔を上げた。


「ライト……!」

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