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勇者の息子に転生したら育ての親が魔王でした~最強に育って無双します~  作者: ララ
第二章 ジューダス帝国編

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第104話 水のレガリアに迫る影

――神樹の国シルヴァリス


戦場は、もはや一国同士の争いではなかった。


伝説が伝説とぶつかり合う、神話の再演。


轟音が止むことはない。


ガルスと勇者アレンの特殊個体が再び激突する。


拳と剣。


衝突する度に衝撃波が山肌を削り、神樹の枝葉が激しく揺れた。


「目を覚ませ、アレン!」


ガルスの拳が唸る。

しかし勇者の特殊個体は無表情のまま剣を返す。


一撃、一撃がかつて魔王軍を壊滅寸前まで追い詰めた勇者そのもの。


ガルスの肩へ深い斬撃が刻まれる。


鮮血が舞う。


それでも魔王は笑った。


「そうだ……その剣だ」


「だからこそ、お前をこんな姿のままにはしておけねぇ!」


漆黒の魔力が爆発する。


魔帝王へと進化した魔力が大地を包み込み、勇者の特殊個体を押し返した。



「ガァァァァッ!」


魔竜王デッカーが天空を裂く。


四枚の翼が一振りされるだけで暴風が生まれ、王国軍の人造ゴーレムが吹き飛ばされていく。


しかし、その前へ盾王の特殊個体が立ちはだかった。


巨大な盾が竜王咆焔を受け止める。


バチバチと魔力が弾ける。


「まだ耐えるか!」


デッカーは牙を剥き、巨爪を振り下ろした。


盾と竜爪が激突する。


鈍い轟音。

遂に盾王の特殊個体の左腕が弾け飛ぶ。


だが次の瞬間。

後方の聖女の特殊個体が淡い光を放つ。


失われた腕が金属を編み直すように再生していく。


「面倒な女だ!」


デッカーは舌打ちした。


「先にあいつを落とさねぇと終わらねぇ!」



その頃。


「風よ!」


「水よ!」


エルフ魔導師団と魔王軍魔法師団が同時に詠唱を完成させる。


翠緑と紫黒。

風と雷、二つの属性が融合し、巨大な渦となって魔導王の特殊個体へ襲い掛かる。


「今!」


アローラが叫ぶ。


ベイルが地を蹴る。


「魔剣奥義――深淵断罪(アビスジャッジメント)


漆黒の斬撃が一直線に走った。


魔導王の特殊個体は防御結界を展開する。


だが、その結界をエルフ達の精霊術が僅かに乱し、アローラの雷槍が貫く。


そこへベイルの一撃。


ズガァァァァン!!


魔導王の特殊個体の胸部装甲が初めて砕け散る。


「効いた!」


エルフ兵達が歓声を上げる。


しかし。


砕けた装甲の奥から現れたのは、人間の姿だった。


無数の管が絡み付き、苦しげに脈打っている。


「……!」


ベイルの動きが止まる。


「魔導王メフィルド……お前……」


一度は魔王国で共に生活した仲間…..

怒りとも悲しみともつかぬ感情が込み上げる。


アローラも唇を噛んだ。


「アストリア王国……あなた達は、どこまで命を冒涜すれば気が済むの……!」



一方――

帝国学院。


研究棟の騒ぎが収まり始めた頃。

学院の外れ。


人気のない林の中へ、黒い影が音もなく降り立った。


全身を闇色の外套で覆った者達。

その胸元には、黒曜石を模した紋章が刻まれている。


「確認」


「水のレガリア反応、学院内に固定」


「対象――ルミナス・ネレイア」


一人が低く告げた。


別の影が小さく頷く。


「王国参謀レイヴン様の命令だ」


「殺すな」


「生きたまま確保しろ」


「黒曜計画に、水のレガリアは必要だ」


十数人の影が同時に頷く。


彼らは王国が極秘に育成した闇工作部隊。

表の軍にも記録されない、存在しない兵士達だった。


「学院結界は?」


「内部協力者が一部を解除する」


「侵入経路確保済み」


「行動開始」


影達は闇へ溶けるように散開した。


誰一人、その存在に気付かない。



学院長室。


ルミナスは窓の外を静かに見つめていた。


「……嫌な流れだ」


「戦場だけでは終わらない」


エリオスも頷く。


「水のレガリアを公にした以上、王国も動き始めるでしょう」


その時だった。


コン、と小さな音。


窓辺に一羽の青い小鳥が舞い降りる。


ルミナスは目を細めた。


「精霊?」


小鳥はすぐに霧となって消えた。


残されたのは、一滴の水だけ。


その水面へ景色が映る。


黒い外套。


学院へ向かう影。


「……!」


ルミナスの表情が変わる。


「侵入者だ」


エリオスが即座に立ち上がる。


「どこの者だい?」


「分からない」


「だが、狙いは私だ」


静かな声だった。


しかし、その瞳には先程ラザールへ向けたものとは違う鋭さが宿る。


「エリオス」


「生徒達を避難させて」


「私は迎え撃つ」



研究棟。


リーパーの映像を見つめていたライトが、不意に顔を上げた。


「……来た」


シュプールが首を傾げる。


「何がですぅ?」


ライトの表情から笑みが消えていた。


「学院にも戦場が移る」


その一言に、研究室の空気が一変する。


遠く離れた神樹の国では、魔王と勇者が激突している。


そして帝国学院では、水のレガリアを巡る新たな戦いの幕が、静かに上がろうとしていた。

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