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16話 削り切られる前に

 ——バチィッ!!


 雷が弾ける。


 サトリの拳が、ナリマサへ叩き込まれる。


 空気が裂ける。


 衝撃が地面を砕く。


 だが——


「……軽いな」


 ナリマサが、片手で受ける。


 止まる。


 そのまま。


 まるで、最初から決まっていたみたいに。


「……っ」


 サトリが踏み込む。


 間髪入れず、次。


 蹴り。


 拳。


 雷を纏った連撃。


 ——バチッ バチィッ!!


 だが——


 届かない。


 すべて、受け止められる。


 流される。


 逸らされる。


「いいね」


 ナリマサが、少しだけ笑う。


「さっきより全然いい」


 その瞬間——


 サトリの足が、わずかに揺れる。


「……っ」


 血が、落ちる。


 ぽたり、と。


 地面に。


 肩。


 脇腹。


 傷口が、開いている。


 無理やり動かしている。


 その証拠。


 それでも——


 止まらない。


「——うおおおッ!!」


 雷が膨れ上がる。


 もう一撃。


 叩き込む。


 だが——


「無駄だって」


 ナリマサが弾く。


 軽く。


 簡単に。


 その瞬間——


 サトリの身体から、血が吹き出す。


「……っ、は……っ」


 呼吸が乱れる。


 視界が揺れる。


 それでも——


 前に出る。


 止まらない。


 止まれない。


 だが——


 その一歩が、重い。


 確実に。


 削られている。


 命を。


 その時——


 サトリは、理解する。


 ——まずい。


 空気で分かる。


 このままでは、削り切られる。


「……ライ」


 サトリが低く言う。


「このままじゃ、押し切られるな」


「……ああ」


 ライも短く返す。


 状況は同じように見えて。


 確実に、差がある。


 崩されるのは——時間の問題だった。


「……一度、立て直す」


 サトリが言う。


 その瞬間——

  纏っていた雷が、わずかに揺らぐ。


 「……戻れ、ライ」


 低く、言う。


 ——バチッ


 雷が弾ける。

 サトリの身体を覆っていた光が、ほどける。

 剥がれるように、離れていく。


 代わりに——

 ライが、その場に“形”を取り戻す。


「……無理すんなよ」


 短く、言う。


 サトリは答えない。


 ただ——

 わずかに、息を吐く。


「……分かってる」


 即座に動く。


「メイ」


 呼ぶ。


 柔らかな光が揺れる。


「はい」


 メイが応じる。


「シュンを優先しろ」


「……承知しました」


 メイが頷く。


 そのままシュンへ向かう。


 傷ついた脚。


 深い。


 だが——


 手をかざす。


 光が降りる。


 傷が、閉じていく。


「シュン」


 サトリが呼ぶ。


「メイを乗せろ」


 シュンが低く鳴く。


 理解している。


「回復を切らせるな」


 それだけ。


 命令は、十分だった。


 メイがシュンの背に乗る。


 そのまま走る。


 戦場を駆ける。


 止まらない。


 回復の流れを、維持するために。


「……へぇ」


 ナリマサが、少しだけ目を細める。


「それで?」


 頭をかく。


「何も変わってないと思うけど」


 心底どうでもよさそうに言う。


 サトリは答えない。


 ただ——


 ライに手を置く。


「……変わるさ」


 小さく言う。


「——ライ」


 その名を呼ぶ。


 空気が変わる。


 ——バチッ


 雷が収束する。


 集まり、凝縮される。


 ライの姿が歪む。


 輪郭がほどける。


 少年の姿が、解ける。


 そして——


 現れる。


 白と黒のメッシュの髪。

 赤いジャケット。

 黒のスキニー。

 鋭い金の瞳。


 足元の土が、わずかに砕ける。


 寅の召喚——ライ。


 その場に立つだけで、


 空気が張り詰める。


「……は」


 ナリマサが、わずかに笑う。


「やっとか」


 次の瞬間——


 消える。


 ——パンッ!!


 撃たれる。


 だが——当たらない。


 ライが、既にそこにいない。


「遅ぇよ」


 背後。


 ——バチィッ!!


 雷撃。


 ナリマサが、初めて腕で受ける。


 重い音。


 衝撃。


「……おお」


 少しだけ感心したように。


「いいじゃん」


 だが——崩れない。


 それでも。


 変わった。


 確実に。


 ——パンッ!! ——パンッ!!


 撃たれる。


 だが——


 ライが弾く。


 避ける。


 踏み込む。


 ゴウが支え。


 メイが繋ぎ。


 シュンが動かす。


 連携が回る。


 初めて——


 拮抗する。


「……なるほどね」


 ナリマサが呟く。


「やっと戦いになってきた」


 その時だった。


 サトリの背筋が凍る。


「……っ」


 違和感。


 いや——確信。


 肌が、覚えている。


 あの力。


「……猫」


 嫌な感覚が走る。


 月縛の力が、使われた。


 あの気配。


 視線が、勝手に向く。


 家の方へ。


 遠く、小さく見える。


 コトリの姿。


 家から、離れていく。


「……」


 理解する。


 一瞬で。


 遅すぎるくらいに。


「……そうか」


 声が低く落ちる。


 静かに。


 壊れる。


 感情が。


「……お前がやったのか」


 ナリマサを見る。


 目が違う。


 怒り。


 純粋な。


「……は?」


 ナリマサが眉をひそめる。


「何の話?」


「ふざけるな」


 低く、重く。


 押し潰すように。


 その瞬間——


 ライが動く。


 手をかざす。


 雷が収束する。


 巨大な光。


 圧倒的な出力。


「——消えろ」


 放たれる。


 ——ドォンッ!!


 すべてを呑み込む雷撃。


 だが——


 ナリマサは、立っている。


 そのまま。


 片手を上げる。


 弾く。


 打ち消す。


 まるで最初から、


 なかったみたいに。


「……だからさ」


 少しだけ、ため息をつく。


「違うって言ってんじゃん」


 視線が冷える。


「人の話は、聞いた方がいいよ」


 その一言で——


 空気が変わる。


「……もういいや」


 ぼそりと。


 興味を切る。


「ちょっと本気出すわ」


 静かに。


 手が動く。


「——三段撃ち」


 次の瞬間。


 ——パンッ パンッ パンッ


 音が、重ならない。

 すでに、終わっている。


 速い。


 今までと、違う。


「——ゴウ!!」


 前に出る。


 だが——


 ——ドンッ


 一撃。


 貫かれる。


「……っ」


 ゴウの身体が崩れる。


 消える。


 間もなく——


 次。


 視線が動く。


 シュンと、メイ。


 ——パンッ


「……っ!」


 シュンが前に出る。


 庇う。


 撃ち抜かれる。


 そのまま——消える。


「……シュン!」


 メイの声。


 だが——


 もう一発。


 ——パンッ


 光が弾ける。


 メイの身体が揺れる。


 致命。


「……っ」


 崩れる。


 残る力で、立つ。


 だが——限界。


 静寂。


 立っているのは——


 サトリと、ライ。


 それだけ。


 ナリマサが息を吐く。


「……ほら」


 少しだけ面倒そうに。


「もうやめようよ」


 視線は、まっすぐ。


 そして——


 わずかに、口元が歪む。


「さぁ、選べよ」


続きが気になったら、ブクマで追ってもらえると嬉しいです。

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