544 セレンシアダンジョン スーリアの特訓&熱砂の7階
僕は火を弾丸にして魔兎を仕留めた。
「きゃう!(ママ、すごい!)」
わあ、スーリアに褒められちゃった。
『スーリア、狩るということは、獲物を殺せばいいということではない。魔兎は角も毛皮も高く売れる。無論、肉もだ。だから、自分が危険でない限り、獲物全体を燃やしてはだめなんだ。俺やスーリアの稼ぎは、サキの冒険者としての稼ぎでもあるからな。傷は最小限にするように心がけろよ。』
「きゅ。(はいパパ。)」
それから魔狼や魔兎で、スーリアの狩りの訓練した。最初はうまく弾丸に縮められなかったが、やがて凝縮がうまくなり、回転させることも覚えた。しかも複数の弾丸を同時に作ることができるようになった。
5頭目で魔力切れを起こし、特製上級ポーションを飲ませると、100パーセント回復。そしてその後は効率よく魔力を使うことも次第にできるようになり、10頭目ではほぼ僕と同じくらいに傷を小さく仕留められるようになっていた。
しかも発出する弾丸は、一度に10発まで増えていた!
「スーリア、天才!こんな短時間で出来るなんて!!」
と僕は褒めちぎった。
「きゅう…。」
「はは。さすがに魔力切れだね。飲んで。」
特製上級ポーションを飲ませる。
今日はもうこれ以上の訓練は良くない。
ポーションで無理に魔力を上げるのもよろしくないし、なんといってもスーリアはまだ幼体だ。子供のうちに無理をさせると、あとでどんな反動がくるかわからない。
「ご苦労様。今日の訓練は此処までだね。少し休憩して、7階に行こう。スーリアは眠かったら寝てもいいよ。」
「きゅっきゅ。(もう平気。起きてる。)」
「わかった。とにかく何か食べようね。」
軽く肉入りサンドイッチをつまんだり果物を食べたりしたあとで、6階の階段前にテレポート。そして7階へ。
7階は砂漠階。砂が舞う。酷暑。
「あっつー。」
すぐにバリアして冷房魔法を発動。地表にも空気の層を作り、シンハと僕の靴底や足裏も保護する。スーリアは僕の肩の上。
『ふう。涼しい。』
「シンハも暑いの、苦手だものね。」
『苦手ではない。嫌いなだけだ。』
またまたぁ。強がっちゃって。
「ふふ。はいはい。」
『此処のボスは何だ?』
「砂に潜む大アリジゴク。たまに火喰い鳥の卵が採れるって。」
僕はガイドパンフを亜空間収納内で開き、読み上げた。
「地図はなし。ひたすら北に向かうとやがてボスに遭遇できるんだって。」
『ふむ。飛ぶか。』
「うん。」
『乗れ。』
「いいの?」
『俺の気が変わらんうちに乗れ。』
「はーい。」
きっとバリアと冷房魔法を使い続ける僕を気遣ったのだろう。
まったく。ツンデレなんだから。
北に向けてしばらくシンハに乗って飛ぶと、前方に砂塵が竜巻状になっているところがあった。しかも竜巻は火を伴っている!
「もしかしてあれがボスの居場所かな?」
『む。何か竜巻の中に居るぞ!』
「!もしかして、火喰い鳥!?炎の翼がちらちら見えたよね!!」
『ああ。どうやらボスの大アリジゴクと火喰い鳥が戦っているようだ。』
火喰い鳥はまるで炎の塊のようで、体躯の大きさはよくわからない。だが炎は相当に大きい。スキャンしたが、実態がよくわからない。バリアを張っているのか、あるいは魔法阻害でもできるのかもしれない。
一方の大アリジゴクは、クワガタのような大きなハサミが砂塵の中から見え隠れしている。
遠目でしかもハサミ部分だけでも相当の大きさだから、体長はこちらも相当にでかいようだ。
かなり上空斜め上から見て、くぼみの中央にいる大アリジゴクが確認できたのだ。
「僕たちが飛び込んだら、こっちが2匹の餌食になりそうだよね。」
『まずは戦いの行方を見守るか。』
などと言いつつ、距離を取り、地面に降りて手前の砂山の陰に隠れた。
どうやら砂嵐を起こしているのは大アリジゴクのほうだが、それに火を巡らしているのは火喰い鳥のようだ。
キシャアアアアア!
今のは大アリジゴクの声。金切り声で、それだけで敵が気絶しそうな声だ。
キュルルルル!!!ギャギャ!ギャギャ!
こちらは火喰い鳥の声だろう。
甲高い鳴き声に不快な怪鳥らしい声が混じる。
ふっと竜巻の中から何かが飛び出した。
すごい勢いでギューン!と飛んで、なんと僕たちのいるすぐ近くにボトリと音を立てて落ちた。
『なんか、飛んできたぞ。』
「なんだろう?」
2匹の魔獣は戦いに夢中で、こっちに何かが飛んだことに気づいていない様子。
その隙に、僕とシンハは半分砂に埋もれている落下物に駆け寄った。
「!これ、卵じゃん!」
砂から掘り出したのは、まだら模様のある卵。ダチョウの卵よりも大きい。
僕は卵を持ち上げた。
結構重い。
『火喰い鳥の卵だな。』
僕が鑑定する前に、シンハが言った。
「えっ!やばくない?」
なぜなら、おそらくあの激闘の発端は、この卵を大アリジゴクが奪って食べようとしたからであろうと、察しがつくからだ。
「ということは…。僕たちが持っていると知られたら…。」
『ああ。親鳥は当然、こちらに襲いかかって来るだろうな。』
と言っていると
卵が動き、パリッペキッと殻が割れ始めた。
「げ、生まれそう!」
『ばか!はやくそれをそこに置け!逃げるぞ!』
「ひゃい!」
僕が悲鳴のような返事をし、砂地に卵をそっと置いた時だった。
割れた卵からにゅっと雛鳥が顔を出し、ピィ!!と鳴いた。
すると戦っていた親の火喰い鳥が、さっとこっちを見た。
ギャギャア!!!!
「やばい!敵認定された!」
『走れ!いや、俺に乗れ!』
僕が走りながらシンハに飛び乗り、すぐにシンハは空中へ!
と、その時、僕の目の前を白い何かがかすめた。
「!スーリア!?」
なんとスーリアが、雛鳥のほうへ飛んで戻っていったのだ!!
「やばい!スーリア!戻れ!」
火喰い鳥がすさまじい速さで雛へと滑空してきた!
「ぴっきゃう!」
なんとスーリアは、卵から雛が出てくるのを手伝いはじめたのだ。
いやいや、親が血相変えて飛んできてるっちゅうの!




