545 火喰い鳥
「結界!」
とりあえずスーリアが親鳥に食べられないように、雛と一緒に結界で守る。
ピイ!
ぴっきゃ!
結界の中では、無事に卵から出られた雛が、スーリアの聖魔法に包まれて、幸せそうにスーリアに甘え始めた。
戸惑ったのは親鳥だ。
白い小さな羽根あり小龍が、我が子を食らうのではと血相変えて飛んできたものの、雛はその見慣れぬ生き物にぴったりと身を寄せて、なついているのだ。
しかも、ほわわんとした光る結界の中にいる。
この結界はどう見たって邪悪には見えない。
キュルルル…
親鳥の声を聞いて
「ピイ!」
と鳴く雛。
親鳥はすっかり僕たちを追うのを辞め、雛とスーリアの結界のそばで、戸惑いながらも見守り始めた。
僕とシンハは少し離れたところに着地し、様子を見守った。
「なんか、スーリア、すっかりお姉ちゃん気分だねえ。」
『…。普通なら火喰い鳥も雛を奪いにきた敵として攻撃するだろうに。あれを見たら、さすがにスーリアを襲う気がそがれたようだな。』
だが、そんなのどかな風景に、あの大アリジゴクがブウンと飛んできた!
「げっ!あいつ飛ぶんだ。」
その姿はまるでGの化け物みたいで、印象が最悪だ。
『まだ雛が諦めきれぬらしい。』
「しつこいな。これこそまさしくお邪魔虫だ。」
僕はフルサイズの杖を出していた。
大アリジゴクが砂のバレットを、雛たちを見守る火喰い鳥にボボボボッと撃ちだした。
ギャギャ!キュルル!!!
火喰い鳥はスーリアと雛のいる結界に覆い被さるようにしつつも、火炎放射器のような炎をゴオッと吐いて応戦した。だが、大アリジゴクはそれが届かぬ位置にひらりと移動し、またしてもボボボボッと砂バレットを撃ちだして親鳥を攻撃する。
はては一気に滑空し、自慢の角で火喰い鳥を直接攻撃する手段に打って出た!
僕の結界はかなり頑丈ではあるけれど、このままではスーリアも安全とは言いがたい。
「レーザービーム!」
僕は大アリジゴクに強い光と熱のビームを発射した。
ビームは大アリジゴクの角の一本と羽根を吹き飛ばした!
キシャッ!
断末魔の雄叫びとともに、大アリジゴクが落下。
そこへ火喰い鳥が襲いかかり、勝負はついた。
キュルルルルルル!!!
火喰い鳥は雄叫びをあげて、勝利をアピールした。
「ふう。なんとか子供たちは守れたね。」
『スーリアは、戻ったら説教だな。』
「ふふ。まあ気持ちはわかるけどね。さて、いいかげんスーリアを回収しないと。」
火喰い鳥の親がスーリアと雛を見守っているため、容易には近づけないが、僕は雛とスーリアを守っていた結界を解き、ピウィ!と指笛を鳴らしてスーリアの注意を引いた。
ぴっとスーリアが顔をあげてこっちを見る。
親鳥と雛も僕とシンハのほうを見た。
緊張しながらも、
「スーリア、おいで。」
とわざとのんびりした口調で言ってみた。
スーリアはぴっきゅ!と鳴いて、雛から離れ、ぱたぱたと僕のところに飛んできて肩に着地した。
親鳥は、僕たちを警戒していたはずだったが、即座に雛のもとへ行き、雛も親鳥に甘えてピイピイと鳴いて餌をねだった。
すると親鳥は、今倒したばかりの大アリジゴクを、さっそく雛に与え始めた。
僕やシンハには目もくれず、である。
『今のうちに此処を離れた方がいいな。』
「(そうだね。)」
念話でシンハと話し、静かに数歩後ずさりした時だった。
キュルルル!
親鳥が雛を咥えて僕たちのところに飛んできた。
そして、そっと雛を僕たちの目の前に下ろすと、
まるでお礼をするかのように、何度もお辞儀をし始めた。
キュルル
ぴっきゃう!
スーリアが答える。
どうやらスーリアには火喰い鳥の親の言葉というか、感情がわかるらしい。
「(ママ、鳥のママが、お礼したいって。)」
とスーリアが通訳してくれた。
そして、もう一度大アリジゴクへ飛んで行くと、魔石を咥え、角1本を足でつかんで戻ってきた。そして、僕たちの前に、大アリジゴクの魔石と角を置いて、またぺこぺことお辞儀した。
「それをくれるの?ありがとう。」
僕は親鳥にそう言って、親鳥と目を合わせ、彼女に手を伸ばした。
きゅるるる
シンハは警戒したが、僕はかまわず親鳥をなでた。
やっぱり。ふかふかだあ。
親鳥は火に包まれている感じだから熱いかと思ったが、暖かいだけで僕がやけどしたり焦げたりすることはなかった。
おそらくこの火喰い鳥は、火もいろいろと操れるのだろう。
お近づきの印に、ホルストックの干し肉(シンハ用に塩分控えめのやつ)をあげたら、美味しそうに食べた。雛には何をあげようかと思っていると、親鳥が僕からもらった肉を、噛んで柔らかくして与えていた。
試しに僕の魔素水もあげてみると、親子そろって美味しそうに飲んでいた。
ふと気づくと、いつの間にか僕の肩にサラマンダが乗っていた。
クエー
と鳴くと、親鳥はますます頭を低くして何度もお辞儀した。
『火喰い鳥はホウオウの親類とも言われるからな。火の精霊ともつながりがあるのは理解できる。』
「なるほど。そうなんだ。」
ホウオウと火喰い鳥は、シンハと白狼種みたいな関係か。
「となると、火喰い鳥や白狼種は倒せないねえ。」
『そんなことはないぞ。俺たち特にお前に敵意を向けるなら、相手が神獣だろうと神獣の親戚だろうと、俺は容赦しない。』
おっと。シンハさんから怖い発言が。
『ちなみに火喰い鳥も白狼も、俺は倒したことがあるし食べたこともあるぞ。どちらも美味でな』
「ストーップ!それは、今はスーリアには聞かせたくない。」
僕は慌ててスーリアに両耳をふさいだ。
きゅ?
スーリアはシンハの言葉を聞いていなかったようだ。よかったぁ。
親鳥はシンハの言葉がわかったとは思えないが、雰囲気でちょっと警戒したようだ。雛をかばうような仕草をした。
『おう、すまん。こほん。どちらも生存数はかなり少ない。普段は食べないから安心しろ。』
まったく。
すみません。都合により少しお休みします。またねー。




