事件・前章Ⅱ
日本に帰ってきて一番最初に聞いたことは誰が私を引き取るかだった。親戚自体があまり私を引き取ることに積極的ではなかったからだ。
私を日本に連れて帰った若い夫婦と親戚の人々が日本で私たちが住んでいた家の居間で叫び声や怒号を飛ばしながら話し合っていた。その間、私は自分の部屋で若い夫婦の間に生まれた一人娘と遊んでいた。
しばらくした後だった、いきなり扉を開け若い夫婦が入ってきた。そして私の肩をつかみこう言った。
「あなたは、私たちが引き取ります」
こうして私は両親と仲の良かった若い夫婦、朝比奈智花・朝比奈大吾に引き取られたのである。
それから何事もなく私は育てられた。どこにでもいる普通の家族のように、自分の家族が死んだことなどなかったかのように、しかし、そんな幸せはある出来事のせいで変わってしまった。
中学2年のときだった。休み時間に友達と談笑した後の授業に起きた。
突然全身が痛くなり、胸が苦しくなったのだ。クラスメイトが心配して駆け寄るが私は倒れてそのまま病院に運ばれた。私が目を覚ましたのは病院での診察が終わった後であった。医者や看護師、そして父さんと母さん、つまり智花さんと大吾さんががきて何が起こったのかを説明された。
「はっきり、言わせてもらいますとあなたの体は異常です」
「いったいどういうことですか」
「全身に癌が転移しているのです。しかも、もう助からないほどに」
言葉がでなかった。どうしてそんなことになっているのか分からなかった。1か月前の検査では癌の一つもなかったのに。
「そんな息子はもう助からないんですか?」
「それが癌の成長が止まっているのです。なので今はまだ大丈夫だと思われます。」
「それは大丈夫だといえるのですか」
母さんがそう言うと、みんな怪訝な顔をした。
「そうですね・・・確かに大丈夫ではありません。しかし、今の状況から癌が生命活動に影響し始めるのには6年かかると考えられます。その間に全身に転移したがんを除去する治療法が見つかれば助かるかもしれません。」
そのあと、説明を色々受けて帰宅した。医者は治療法がみつかれば助かるかもしれないと言ったが、それは逆に今の医療では助かることはないと言っているようなものだった。今日癌があるのにっも関わらず帰宅しているのも癌の侵攻が止まっているから大丈夫であるだろうという判断されたからである。
そんな自分はが帰り際に考えていたのは、まだ親に恩返しが出来ていないことだった。あと6年で何ができるのか、どうしようか考えていた。家に帰って父さんと母さんに聞いてみた。自分はまだ何もできていないと、そうすると父さんと母さんは私たちに構わず自分のために生きなさいと言った。
数日間、悩んだ。本当に自分がしたいことをしてもいいのか、また6年でできる事なのか、親に恩返しできることはないのかと、悩み続けた。
ある時、一つの記事を見た。それは、煌生大学という大学の付属高校である煌生高校での希望者が受けることができるテストに合格すると高校の出席と単位を免除し、大学に試験なしで入学できるものだった。さらに、特典として、職業見学や職業体験もできるというものだった。私は、両親にこの高校に入学してもいいかどうか聞くといいよと言ったので、2年の夏休みから入試対策を始めた。私がこの時期から入試対策を始めたのは、この高校がレベルが高く、倍率がとても高いということもあるが、それ以上に高校に入ってからテストを受けるために知識を付けなくてはならないことが大きかった。
そんな、俺の姿を見ていたからかクラスメイトの一部が私に同調して試験勉強をし始めた。そして、私たちはその高校に合格した。
高校に入ってからも勉強が続いた。しかし、一つ変化があった。それは、入学式のときである。
「ついに来たか」
「あぁ、特に入試一週間前からは地獄だったぜ」
と、一週間徹夜で必死に勉強していた幼なじみが言う
「おっ、クラスは同じようだな」
「ほんとだな、じゃあさっそく行こうか」
その時であった。入口に向かおうとしたところ
「きゃ!」「おっと!」
一人の少女とぶつかった。当たり方が弱かったので私も少女も倒れることはなかったが、謝ろうと思い声をかけた。その時だった。
「大丈夫ですか」
「いえ、大丈夫です」
一目惚れだった。彼女のあまりの可愛さに胸が高鳴った。
教室に着いて少しゆっくりしていた。入学式前ということもありクラスの中では元々同じ中学であったであろうグループだけで話しており、クラス全体は初々しかった。すると幼なじみが
「なぁ、さっきのめっちゃ可愛かったな」
と鼻息を荒くしていった。
「あの娘とても可愛かった」
と上の空で返答すると返事が帰って来なかった。気になって顔を向けると幼なじみはとても驚いた顔で見ていた
「・・・中学時代に恋愛をかなぐり捨てたように女子に興味を持たなかったお前が・・・なんという」
失礼な
そんな会話をしていると男子が騒がしくなった。
「なんだ?何事だ?」
「おいおい、あの娘めっちゃ可愛くね」と言う声がそこら中から聞こえる。なんだと思うと、教室の入口にさっきぶつかった少女がもう一人の女の子と話しながら入ってきた。
「んもぉー、教室間違えすぎだよー」
「ごめーん、ここに来れたのがうれしすぎて浮かれちゃった」
どうやらあの娘は教室を間違えていて、友達に連れられてこの教室に入ってきたようだった。・・・男子の目があの娘にすべて向いていた。
その後、入学式に向かい。次の日にみんなの自己紹介すると、担任の先生が言って解散となった。
そして、次の日自己紹介が行われた。
「それじゃあ出席番号順にお願いします。」
出席番号順、ちなみに教室の席も廊下側の一番前から1番である。そして、その1番は私であった。私は一番緊張する一番手となってしまった。
「えー、朝比奈真司です。趣味は音楽と・・音楽と・・・・勉強です!よろしくお願いします!!」
(やってしまった・・・・焦って変なことを言ってしまった。絶対浮く・・浮いてしまう)
クラスはあっけにとられた顔をしていたがクスクス笑う人も出てきた。顔が熱い、絶対耳まで赤くなっている。あの娘も笑ってる。幼なじみはゲラゲラ笑ってる。あいつは後で絞めよう。
そんなことを考えながら自己紹介を聞いていると幼なじみの番が回ってきた。
「俺の名前は佐藤和人だぜ。趣味はゲームと小説。高校に入ってからの目標は彼女を作ることと友達100人作ることだ。」
男子にやや受け、女子は冷笑していた。そうしていると今度はあの娘の番だ。
「鈴井彩菜です。趣味はお料理で、いつか好きになった人に食べてもらえるよう頑張っています。」
あの娘、鈴井彩菜はやや茶色の背中に少しかかるぐらいの髪を右側だけ上げて縛り、150cmぐらいしかないだろう身長でクラスのみんなをその赤い瞳で見ていた。
男子が盛り上がった。どことはいわないが・・・
その次に鈴井彩菜と一緒に教室に入ってきた女の子が自己紹介を行った。
「空野秋葉って言います。スポーツが大好きなので、どの部活に入ろうか迷っています。どなたか一緒に部活に入る人はいませんか?」
きれいな緑色の髪と少し落ち着きのないところにプラスして、どこか興味津々に輝いている緑の瞳と鈴井彩菜と同じくらいの身長から、子犬のようであった。
と、このように自己紹介は各々短く終わった。
短く終わったのは一番手の私の自己紹介のせいではないと思いたい。




