09 お代わりの障害馬術
09 お代わりの障害馬術
翌日、リリーが学院へ行くと、教室で生徒会の役員が待っていた。
「ああ、リリー様。お願いが……午前中の障害馬術競技に出ていただきたいのです」
「は?」
リリーが聞き返すと、役員は事情を説明した。
「それが、今朝、選手が階段から落ちて、参加できなくなりました」
「棄権でいいのではないですか? 私、筋肉痛が……」
そこまで言って、リリーは気がついた。
(治せるのでは?)
役員は困った顔で言葉を続けた。
「それが……選手が少なくて、見栄えがしなくて……来賓もたくさんいらっしゃいます。それで、お願いします」
「リリー、出たらいいんじゃない。馬も大きいし」
パトラが言うと、リリーは思わず大きな声を出した。
「大きさは関係ないでしょ」
「ほんと。私、お父様に話をしたら、お父様、見に来たの。とっても褒めてた。いい馬だって。あっ、リリーのことも褒めてた」
ナタリーも口を添えた。
(付け足しで褒めないで!)
パトラはさらに勧めた。
「出たらいいじゃない。あ、そうだ。服はあるの?」
「学院長が用意してくださいました。大丈夫です」
役員が答えると、ナタリーは話を決めてしまった。
「出ますから。リリー、着替えてらっしゃい」
そう言って、リリーを教室から押し出した。
(なんてこと!)
リリーは歩きながら、自分の体を少しずつ治療した。筋肉の痛みが和らいでいくと、改めて感心した。
(私って、たいしたやつなんじゃない?)
着替えを済ませ、リリーは厩舎へ向かった。馬は元気で、リリーを見るとうれしそうに顔を寄せてきた。
騎乗して会場に入ると、ナタリーとパトラが手を振っていた。リリーも手を振り返した。
そのとき、雷の音が立て続けに響いた。
リリーは驚き、鞍の上でびくっと跳ねた。だが、馬は落ち着いていた。
観客席ではパトラも驚いていたし、ナタリーは父にしがみついていた。
会場にいた馬の中には、乗り手を振り落とし、跳ねながら走りだした馬もいた。リリーは巻き添えにならないよう、会場の隅へ避難した。
落馬した選手のうち、一人が棄権した。残った選手たちは、くじで順番を決めることになった。
リリーが引いたのは、一番手だった。
(コースをよく覚えていないから、もう少しあとのほうがよかったのに)
だが、早く終われば、ロバートに会いに行ける。
(それなら、この順番でいいか)
馬はリリーよりも経験豊富だった。
(この馬に任せて乗っていればいいでしょう)
リリーはそう考え、スタートラインに立った。
思ったとおり、馬は迷わず進んでいった。だが、一か所だけ、不自然に変更されたコースで進路を間違えた。まるで間違いを誘うような配置だった。
リリーは懸命に合図を出したが、馬は従わなかった。そこで鞭を使うと、ようやく間違えた場所へ戻り、やり直すことができた。
(ほんと! 一番手は不利だわ)
最後の半周を馬に任せると、すごい速さで走りだした。
曲がり角では、リリーは危うく放り出されそうになった。だが、馬は一瞬足を止め、リリーが背中に収まるのを待つようにしてから、再び走りだした。
競技を終えたリリーは、ぶり返した筋肉痛と闘いながら下馬した。
(私より、この馬のほうが偉いかもしれない)
リリーはそう思いながら、馬を見上げた。
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