03 子猫からのカラス
03 子猫からのカラス
子猫にサンデーと名前をつけて、いつも一緒に過ごした。
ある日、いつものように裏庭で遊んでいると、小さなカラスがうずくまっていた。サンデーはふしゃーと唸って飛びかかろうとしたが、リリーは止めた。
サンデーに怪我をさせたのは別のカラスだ。この子は、その仲間ではないようだった。
「どうしたの? つつかないでね」
話しかけながら、カラスを調べた。
片足の先がなくなっていた。何かに噛みつかれたのだろう。
「飛んでけー、飛んでけー、飛んでけー」
リリーは繰り返した。
少し元気になったカラスは、翼を広げて飛ぼうとした。けれど、翼が折れていた。
(見ただけじゃわからなかったけど、怪我が重いのね)
「治療するから、家に来る?」
リリーはカラスに話しかけた。それから、サンデーにも話しかけた。
「少し我慢できる? 治療が済むまで、一緒に過ごせる?」
返事はなかった。
「返事がないから、勝手にするよ」
そう宣言して、カラスに声をかけた。
「連れていくね。つついたらいやよ」
リリーは侍女の来ない時間を選んで、カラスを部屋に連れて帰った。
「飛んでけー」
治療を続けていると、カラスは本当に飛んでいった。
「あのカラスは、サンデーに意地悪したカラスの仲間じゃないよ。あの時のカラスより小さいもの」
「ニャー」
「そうだね。飛んでいったね」
「ニャオー」
飛んでいったカラスは、裏庭の木に止まったり、窓辺に来たりして、リリーとサンデーを見ていた。
たまに小さく鳴いた。
「カァッカァ」
ビスケットの欠片をやると、羽をバタバタさせた。
(喜んでいるのかな)
「美味しい?」
「コウコウ」
カラスが鳴いた。
「あなたがサンデーと仲良くできるなら、名前をつけます」
「コゥコウ」
「あなたはクーロです」
カラスは羽をバタバタさせながら鳴いた。
「コウコウコウ」
「ニャ。ニャー」
サンデーが鳴くと、クーロは返事をして飛んでいった。
「コーコーカァ」
以来、クーロは窓辺に来たり、裏庭の木に止まったりと、自由なカラスとしてそばにいてくれた。
たまに、一羽と一匹で遊んでいて面白かった。クーロがくちばしに草をくわえてぴょんと跳ぶと、サンデーが追いかける。クーロがサンデーを遊ばせてくれているようだった。
元気そうだったので気にしていなかったが、クーロの足は、まだなくなったままだった。
いちいち捕まえて治療するのも面倒なので、サンデーと遊んでいるクーロに向けて、治療魔法を打ち続けた。
「飛んでけー」
ただ、それだと力が散らばってしまう。落ちていた棒を杖として使ってみると、うまくいった。
それからは、具合のいいものを見つけようと、あれこれ試した。すると、ペン軸がとてもよかった。
それは、ロバート様が誕生日にくださったものだった。
ロバート様は、誕生日のたびに贈り物をくださる。便箋、栞など、花が一輪の時もあった。その花は押し花にして、額に入れて壁に飾っている。その額も贈り物だ。
ペン軸は、リリーの目の色と同じ緑色だった。ロバート様にいただいたペン軸だから、使いやすかった。
そして、クーロの足は治った。
窓辺でビスケットを食べるクーロは、元気いっぱいだった。




