↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「またね。次ね。今度ね」は永遠に来ません ~妹に婚約者を取られた令嬢は、魔法の才能で自由になります~リメイク版  作者: 朝山 みどり
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
2/14

02 環境が能力を芽生えさせた

02 環境が能力を芽生えさせた


 成長するにつれ、これが誰にでもできることではないとわかった。人の顔色を見て気を回すようになっていたリリーは、能力を隠すことにした。


 この能力だって、自分が大事にされていないから芽生えたのだ。


 リリーは自分でもよくわかっているが、不器用で、よく転ぶ。子どもの頃はもっと転んだ。両家が園遊会で話すきっかけになったのも、転んだリリーをライアン様が助けてくれたことだった。


 リリーが転んで膝をすりむいても、乳母も侍女もたいして手当てをしてくれなかった。皆、アナベルのところへ行きたかったのだ。


 そこで、おざなりに「痛いの痛いの飛んでけー」と言い、「はい、大丈夫」とリリーを置いていくようになった。傷口に砂がくっついていても、血が止まっていなくても、行ってしまうのだ。


 リリーは悲しくて、悔しくて、痛かった。


「痛いの飛んでけー。飛んでけー」


 そう繰り返した。毎日繰り返した。


 本当に毎日転んでいたのだ。そして、ある日、痛みがなくなり、すりむいたところがきれいになった。ただ、転んで打ってできたあざは残っていた。だから、転んだ日はもちろん、転ばない日もあざに向かって、「痛いの飛んでけー」「飛んでけー」と繰り返した。すると、あざが消えた。


 本当に、ふっと消えたのだ。


(できた。これで転び放題だ)


 そう思った幼い自分は、今思えばお馬鹿さんだった。


 熱はどうかというと、リリーだって、たまには熱を出す。でも、「ひとりでベッドに寝てなさい。寝てたら治るから」と、そっとしておかれた。


 そこで、「熱よ飛んでけー」とやってみたら、熱が下がった。


 アナベルが熱を出せば、医者が呼ばれ、父は仕事を休み、母もお茶会を欠席して付きっきりになる。侍女たちも廊下をうろうろする。それなのに、リリーはそっとされているだけだった。


 自分の能力があれば、アナベルの熱を下げることができる。それでも、なにもしない。リリーは意地悪だから。


 子どもの頃、ちやほやされるアナベルを見るのが辛くて裏庭へ行ったとき、怪我をした子猫を見つけた。なんと、その子猫をカラスがつついているのだ。


 リリーは一度転んだが、すぐに駆けつけてカラスを追い払った。


 子猫の状態は酷かった。片目がえぐられ、体も血まみれだった。


「飛んでけー」「飛んでけー」「飛んでけー」


 何度も繰り返した。気がつくと、息切れがして目の前が白くなっていたが、霞む目で見た子猫は元気になっていた。


 片目はカラスに食べられたのだろう。つぶれたままだったが、傷はなくなっていた。


 リリーは、この子を部屋に連れていって飼うことにした。


 夕食の席で父に頼むと、簡単に許しが出た。よく聞いていなかったせいだと思う。だって、父はリリーのほうなど見ない。目線はいつも、リリー以外の家族に向いているのだから……


 飼うことを許された子猫に、リリーは毎日「飛んでけー」とやった。


 ひと月で、目が元に戻った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。