↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「またね。次ね。今度ね」は永遠に来ません ~妹に婚約者を取られた令嬢は、魔法の才能で自由になります~リメイク版  作者: 朝山みどり
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
1/18

01 私の立ち位置


01 私の立ち位置


 今日は月に二度設けられた、婚約者との定期お茶会の日だった。

 リリーの緑の目と薄茶色の髪に合うクリーム色の装い。髪飾りには、緑の糸で編んだ花を選んだ。


 婚約者のロバートは、礼儀正しく、約束の時間よりほんの少しだけ遅れて現れた。

 二人は定型どおりの挨拶を交わし、彼のエスコートで庭のあずまやに用意された席に着いた。


 リリーは彼のご両親のことを尋ねた。

「両親は一昨日、揃って領地へ行ったよ」

 彼の生家であるブラックレイク侯爵家の領地は、国内でも有数の豊かな土地だ。王都から馬車で半日もあれば到着する。

 次いで、妹さんの近況を尋ねた。

「相変わらず元気で、毎日遊び回っている。今日も君によろしくと言っていたよ」


 彼の妹ジョシーは、元気いっぱいで運動神経がとても良い。一度、はしゃぎすぎて階段から転げ落ちたことがある。園遊会での出来事だ。いきなり目の前に彼女が転がってきたときは驚いたが、挫いた足をその場でこっそり治してあげた。


 そのとき、門から馬車が出ていくのが見えた。アナベルが出かけたのだろう。

 ここで、ロバートが自分から口を開いた。


「ああ、もう時間だ。すまないが、これから約束がある。ここで失礼するよ。楽しかった。見送りは無用だ」


 そう言われたので、玄関まで行かずに、東屋に座ったまま、遠ざかる彼の背中を見送った。

 いつもより少し砕けた服装をしていた理由が、ようやくわかった。彼はこのあとの予定に合わせた装いで、ここへ来たのだ。

 それでも、リリーは彼の気遣いが嬉しかった。別の約束があるというのに、欠かさず定例のお茶会に顔を出してくれたのだから。


 二人の婚約は、親同士が顔見知りだという理由だけで決まった。

 リリーの実家は、王都の端に小さな領地を持つ伯爵家だ。跡取りの兄、リリー、妹、弟という四人きょうだいである。

 爵位こそ伯爵だが、家柄だけは古い。先祖には外国の王室や、この国の王族の血も混じっている……らしい。ほんの少しだが。

 なんでも、居場所を失った王子や王女を我が家が引き取ったのだと、祖父母から折に触れて聞かされてきた。

 古臭いこと以外にこれといった特徴のない家だが、子爵位を今でも二つ余分に持っているのは、王族を迎え入れた際の「持参金」のようなものだったらしい。元はもっとあったようだが、代々の兄弟たちで分け合い、今は二つ残るのみだという。そのうちの一つは、いずれリリーに譲られることになっていた。


 祖父母の話は毎年同じ内容の繰り返しだが、リリーは、表舞台の歴史だけが真実ではないことを知っている。


 この婚約も、園遊会でたまたま隣のテーブルになった両家が、「子どもたちの年頃がちょうどいい」と軽い気持ちで決めたものだった。


 彼の兄であるライアンは侯爵家の跡取りであり、相応しい令嬢を厳選する必要がある。妹のジョシーもまた、大事な娘を託すに足りる相手を慎重に選ばれるだろう。

 我が家も同じだ。跡取りの兄、美しいアナベル、可愛い末っ子のカール。彼らに適当な縁談などありえない。

 だが、次男のロバートと、姉のリリーは、いわば「片付けばそれでいい」存在だった。だから、たまたま居合わせた相手と、手っ取り早く婚約させられたのだ。


 妹のアナベルは、生まれたときから輝くような美人だった。

 ただ少し体が弱く、頻繁に熱を出す。そのため、両親も使用人もアナベルを最優先に扱い、常に気を揉んでいる。

 リリーは、自分が疎まれているとは思いたくない。けれど、忘れられているのだとは感じる。

(今度ね)

(次はリリーの番よ)

 何度も繰り返されたその言葉は、今では消えてしまった。期待されることもなく、ただ省かれている。


 幼い頃、その不満に耐えかねて口にしたことがある。

「熱くらい、治してしまえばいいじゃない」


 頬を打たれるほど激しく怒られた。

「熱くらいとはなんだ! 治せばいいとはどういう意味だ!」

 痛みと混乱で、何も言い返せなかった。

 リリーには熱を下げることも、傷を癒やすこともできた。自分にできるのだから、誰にでもできることだと思っていたのだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
はじめまして このお話好きだったから また読めてうれしいです! 続きも楽しみにしています
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。