18 魔法の競技って?
18 魔法の競技って?
帰りの馬車のなかで、リリーは治療魔法を試した。けれど、壊れたペン軸は元通りにならなかった。
家に戻ると、部屋にあるもののなかで杖として使えそうなものを探し、いろいろと試してみた。
壊れたペン軸のかわりに、普段使っているペン軸も悪くない。入学するときに自分で選んだ、木で作られたよくある赤いペン軸だ。予備に自分で買ったピンクのガラス製のものも悪くなかった。ペーパーナイフが意外と使いやすいのは、新たな発見だった。
とりあえず、魔法の杖の問題は解決した。
それにしても、粗末な誕生日の贈り物を喜んでいた自分が情けなかった。
(遅ればせながら、もらったものを返そう)
リリーは壊れたペン軸を紙に包んだ。それから、栞、押し花と額、便箋、ちゃちな腕輪を集めた。腕輪は一目で安物とわかるうえに、金具が変色していた。
それらをすべて箱に詰め、誕生日にもらったものを返すと書いた手紙を添えて送り返した。宛名はブラックレイク侯爵にしておいた。
アナベルを迎えに来たロバートは、いつもより何か言いたそうな様子だった。
リリーは、話しかけられたら思い切り言い返すつもりでいた。話しかけやすいように優しく笑ってみせたが、結局、ロバートは何も言ってこなかった。
(ことごとく期待を裏切る人だ)
そして、競技会の日。
リリーは動きやすさを考えて、乗馬服で学院に向かった。今年は鞭を持っていないが、去年と同じ格好だった。
まず、馬の長距離競技のスタートを見学した。そこで、思いがけないものを目にした。
第三王子が、あの馬に乗っていたのだ。
(良かった)
あの馬は、また少し大きくなっていた。というより、筋肉がしっかりついたようだった。
(いいお家にもらわれたんだ。王子殿下の馬になっているなんて、さすが、王宮はいい環境よね)
隣にいたナタリーも、その馬に気づいた。
「あれ? あの馬! だからお父様は……」
ナタリーはそう言って、胸をなで下ろしていた。
魔法の競技は、その日一日だけで行われた。
リリーはペン軸を使って小さな水の玉を作り、慎重に的へ当てていった。
すべて命中し、決勝戦へ進むことができた。
ところが、決勝戦では的が動くのだった。
出場者十人が丸い輪のなかに入り、その外を騎士団が囲んでボールを投げる。魔法で打ち落とせば得点になり、体に当たれば減点になる。しかも、足を止めてはいけないというルールまで設けられていた。
(鈍い私の弱点に、ドンピシャの競技じゃない)
ボールを避けようと走り回るうち、リリーは二度も転んでしまった。
そして、競技は終わった。
リリーは十人中十位。最下位だった。点数は、なんとマイナスだった。
(二度も転べばねぇ……)




