17 今年は魔法で出場
17 今年は魔法で出場
待ちに待った競技会が近づいてきた。
(ロバート様に仕返しするぞ!)
リリーは、今回は魔法競技に出場することにしていた。エリザは弓の競技に出るようだった。
また交代してほしいと言いだしたら、今度こそ反撃するつもりだったが、何事もなかった。
(あの大きな杖は、どうしたのかしら?)
リリーには、やはりペン軸が使いやすかった。ロバートからもらったものだったが、それと使い勝手は別の話だった。
(もらったものだから使うのではなく、使いやすいから使っているだけ。それとこれとは別よ)
競技会に向けて、放課後の訓練場で練習していると、アナベルとロバートがやってきた。
「お姉様。その杖は、すごく性能がいいですね。ちょっと貸してください」
アナベルが声をかけてきた。
「アナベル。これは杖として使っているけれど、ペン軸よ」
リリーが答えると、ロバートがペン軸を見た。
「もしかして、それは私があげたもの?」
「ええ。誕生日に。婚約していた頃ですね」
リリーの返事に、周囲で練習していた学生たちが少しざわついた。
「何を言っているんだい。誕生日の贈り物なわけがないだろう。街歩きのとき、ちょっと買ったものをあげただけだよ」
「いえ、誕生日ですわ。粗末なものですが」
リリーが答えると、ロバートは顔をしかめた。
「僕が気まぐれに贈ったものでも、リリーが持っているのは不愉快だ。返してくれ」
「どちらでもいいです。未練がましくて、みっともない。考えなしは、これだから……」
アナベルはそう言いながら、リリーの手からペン軸を取り上げた。そして、地面に落として踏みつけた。
ペン軸はいくつかの欠片に割れた。
リリーの胸に怒りがこみ上げた。
「なんてことをするの? 人のものを壊すなんて」
リリーが抗議すると、アナベルはロバートに抱きついた。
「いやー、怖い! だって……ロバート様からいただいたものに、いつまでもしつこく……」
アナベルはロバートにしがみつき、喚いた。
(私も夕食の席であれだけやったのだから、人のことは言えないけれど、我がミシガン家って、行儀が悪いわね)
リリーはアナベルを見据えた。
「誰からもらったものでも、今は私のものです。それを壊すなんて」
ロバートは言い返そうとしたが、リリーが続けた。
「誰がくれたものかなんて、関係ありません。今は私のものですし、杖として使いやすかったのに」
ロバートは言葉に詰まった。
リリーはさらに続けた。
「誕生日の贈り物だと思っていましたが、気まぐれに買っただけのものだったのですね。おかしいとは思っていました。こんな安物を、と。婚約者への贈り物にしては、安いものばかりでしたから」
周囲の視線が集まっていたが、リリーは構わなかった。
「私からの贈り物は、父の指示を受けた使用人と一緒に買いに行きました。それなりの品でしたから……これがブラックレイク侯爵家の方針なのですね。要は、けちだということですね」
「やめろ」
ロバートが声を上げた。
「私は、お姉様とは違うものをいただいています」
アナベルが言うと、リリーはすぐに答えた。
「では、侯爵家ではなく、ロバート様の方針だということですね」
そう言いながら、リリーはかがみ、ペン軸の欠片を拾った。
「残しておくと、怪我の原因になりますね」
細かい破片は水で包んで回収し、拾った欠片と一緒にハンカチで包んだ。
それから立ち上がり、周囲の学生たちに挨拶した。
「それでは、これで。皆様、練習の手を止めさせてしまい、申し訳ございません。失礼します」
リリーはそう言って、訓練場を出た。




