43. 『坂寄亮児のあれそれどうした?』 心霊スペシャル1
(タイトルカード)
『坂寄亮児のあれそれどうした? 心霊スペシャル ~地上波では流せない最恐怪奇映像~』
坂寄
「どうも、坂寄です! 今日の『坂寄亮児のあれそれどうした?』は特別編、心霊スペシャルとなっております!
セットも今日限定の特別仕様です! まぁちょっと照明暗くして、いつものね、後ろにあるわけのわかんない絵とか花がね、お札とかそれっぽいものに変わってるだけですけど」
(スタジオ、小さな笑い)
坂寄
「いやー、ついにね、来ましたよ、心霊スペシャル!
実は僕、昔からホラー大好きで、いつか自分の番組で心霊特集やりたいって言い続けてはいたんですよ。
ただ最近は、テレビのコンプライアンスがしっかりしてきたのはいいことなんですけど、その影響で心霊番組はもちろん、夏になるたびにあった特番すらほぼ見なくなっちゃったじゃないですか。
だから今回、ネット配信のこの番組で好きにやらせてもらえるってなって、迷わず心霊企画を組ませてもらったんですが……」
(画面:神妙な面持ちの坂寄のアップ)
坂寄
「とんでもないものが撮れてしまいました。心霊番組の歴史の中でも、間違いなく最恐レベルにヤバいVTRです。
テレビでもネットでもここまでの映像はないし、数々の心霊映像を見てきた僕ですら鳥肌が止まらなかった、そんな映像です」
(画面:引いて、ゲスト席全体の映像)
坂寄
「ということで、今日のゲストの『あれそれ調査隊』は心霊ロケに行ってくれた皆さんにお越しいただいております。よろしくお願いします!」
(画面下に名前テロップ【三戸部庄蔵】【ハイクラブ吉原】【ピンクガジェット13 友近千夏】【ピンクガジェット13 山戸凜子】)
坂寄
「どうでした? 正直なロケの感想として。特に吉原くんはこれが初めての心霊ロケだったんでしょ?」
吉原
「いやもう……ロケでこんだけやばいって思ったの初めてです。本当にシャレにならなかったです。正直、こんなことが起こるんだったらそりゃ心霊番組なんて無くなりますよ!」
友近
「私は怖いのは平気な方ですし、これまでのホラースポットのロケも『普通じゃないな』ぐらいは思ったことあったんですが、ここは初めて『これ以上は無理だ』って思いました」
山戸
「もう無事に帰ってこれてよかったとしか……今までの撮影とは次元が違いすぎて、ずっとパニックでした……」
坂寄
「ね? これね、大袈裟に言ってると思うでしょ? 本当なんですよ。冗談抜きで現場はパニックだったんです。
僕もロケ終わったその日に、スタッフから『とんでもないのが撮れました』って連絡をもらって、一番の問題の映像だけ先に見させてもらったんですけどね。
本気でやばいと思った。もう、ガチもガチ。これ以上ないくらいやばい映像だったの。
実は今回のVTR、あまりにも衝撃的すぎて『いくらネット配信でもこれは流せない、お蔵入りだ』って話が上がったんです。
で、上の人間と僕とあと三戸部さんで本当にこれを流すのか、大議論したんですよ」
三戸部
「これほんまにテレビ日ノ本の会議室一個貸切って半日かけて話し合いましたからね!」
吉原
「半日!? え、本当ですか?」
坂寄
「そう! まじで半日議論したの!
規約的にも倫理的にもアウトなんじゃないか、お蔵入りにすべきなんじゃないかっていう意見も当然出ました。でも最終的に『流そう』って決めた最大の理由が、当事者の三戸部さんの強い希望だったんですよね」
三戸部
「今回の映像、普通やったら放送事故扱いで流せんような映像やってのは俺もわかってます。
でもね! でもですよ!
俺、若手の頃から含めたらもう心霊ロケなんて三十、四十じゃきかんくらい行ってるんですよ。でもこれまでは『なんか音したな』とか『ここちょっと寒いな』ぐらいで、はっきりとしたものなんて見たことも起きたこともなかったんです。
だからまぁ、こう言ったらあれですけど、結局見間違いか勘違いやろ、とも思っとったんです。
それがですよ!
起きたんです! もう目に見える形で、絶対ありえへん、起きるはずのないことが!! 冗談抜きで自分のこれまでの何十年の常識が全部ひっくり返るような体験やったんですよ!
それが全部映像に残ってる! なら意地でも出せって言いますよ! ねえ!!」
坂寄
「プロ根性だよねえ。本当に三戸部さんの熱意で今回の公開にこぎつけたと言って過言じゃないからね。
ただね、あまりに現場で起きたことが尋常じゃなかったので……今回番組スタッフがあらゆる伝手を使いに使いまくりまして、業界でも知る人ぞ知る、本物のすごい先生をお呼びしました。
ご紹介します、霊媒師の鳳先生です!」
(画面:坂寄の横に座っていた鳳のアップ。画面下に【霊媒師 鳳 佳菜恵 先生】の名前テロップ)
鳳
「よろしくお願いいたします」
吉原
「ちょっと待ってください坂寄さん!! 今ですか!? 呼ぶの、今なんですか!? ロケの現場に呼んでおいてくださいよ!!」
(スタジオ、爆笑)
三戸部
「そうですよ! なんでスタジオでVTRを高みの見物するためだけに呼んどるんですか! 現地に一番必要やったやろ!!」
坂寄
「いやだってまさか僕の番組でこんな本物のガチ映像が撮れるなんて思ってなかったんだから! 霊媒師の先生をお呼びする予算なんて最初から組んでなかったの! なんなら僕のロケだってついてなかったし、僕なんて一人で行ったんだからね?」
友近
「え? 坂寄さんもロケ行ったんですか?」
坂寄
「行ったよ! なんならこの心霊スペシャルのメインとして使うはずだったロケ!
ホラースポットとして有名な廃墟行って、暗い中いろいろ検証までしたのよ!
でもね、三戸部さんたちの撮ってきた映像がすごすぎて、ディレクターから『坂寄さんのロケ映像、前に入れても後に入れても完全に霞むんで全カットで』って言われて、僕のロケ全ボツ! 今回ダイジェストすら流れません! 完全お蔵入り!」
(スタジオ、爆笑)
吉原
「MCのロケが全カット!?(笑)」
山戸
「そんなことあるんですか……!?」
坂寄
「カットカット、ぜーんぶカット!(笑)
いやでもね、それくらい三戸部さんたちのVTRのインパクトが凄すぎたってことなんですよ。だから僕も自分のロケ映像お蔵にしても、これをメインで、フルで流すべきだって納得したの。
で、ロケが終わった後、皆さんはすぐにお祓いに行かれたと聞いてますが、今回はスタジオで鳳先生にもVTRを一緒に観ていただきながら、現場で一体何が起きていたのか解説していただき、万が一まだ何か憑いていたら改めてこの場でお祓いもしていただきます」
三戸部
「頼みますよ先生! 俺、ロケ終わってから怖すぎて個人的にすでにお祓い三回行きましたからね!?」
坂寄
「三回!?(笑) 三回行ってまだ安心できてないの?」
三戸部
「それくらいやばかったんですって! 何回行っても足りん気がするんです!」
坂寄
「さあ、三戸部さんにそこまで言わせる前代未聞の怪奇現象、日本の心霊番組の歴史が変わる瞬間を、皆さんもぜひ目撃してください。それでは参りましょう。問題のVTRです。どうぞ!」
(画面暗転)
【VTR】
【ナレーション
「怪奇現象。科学では説明のつかない恐ろしくも不可解な出来事。今回『あれそれ調査隊』が解明に向かうのは、そんな恐ろしい目撃情報が後を絶たない、関東郊外にある古民家である」
(テロップ:関東某所――とある古民家)
(ある民家の玄関に立つロケメンバー。玄関以外の場所はモザイクが掛かっている)
三戸部
「どうも、三戸部庄蔵です。今回のあれそれ調査隊は心霊スペシャルでございます」
(吉原、山戸、友近の紹介。軽いトーク。それぞれ背後の民家を振り返り、所感を述べる)
(当時の噂をイメージした再現VTRが流れる)
ナレーション
「今回調査するのは関東郊外にある築六十年の古民家。一見すると風情ある日本家屋だが、かつて解体工事を試みるたびに、関係者の突然の体調不良や原因不明の事故が相次ぎ、幾度となく工事が中断されたと言われている。現在はドラマの撮影などに使われている邸宅だが、現場では度々不可解な現象が目撃されているという……」
三戸部
「お邪魔します……」
吉原
「うわ、広……」
山戸
「あ、なんか全然、綺麗なおうちですね……?」
(画面:玄関から上がり廊下を進む一行。照明は各自の持つ懐中電灯とスタッフのライトのみ。それでも綺麗に整えられた室内が見て取れる)
(各々の表情を映しながら、大広間へと進んでいく)
音「ピキンっ!」
三戸部
「うおおぉぉぉ!?」
山戸
「きゃあああ!」
(テロップ:突然のラップ音)
(先ほどの「ピキン」という音のリプレイ)
ナレーション
「広間に入った途端、誰もいないはずの奥の間から突如響いた大きな音」
(怖がる山戸と三戸部、それぞれを映すカメラ)
(先に進むよう促すスタッフ。あんな大きい音したのに、怖くて行けないと言う山戸。ここはメインの場所じゃないと言われて愕然とする三戸部たち)
ナレーション
「この古民家では数々の怪奇現象が目撃されているが、特に噂が集中しているのが『縁側』『井戸』そして『二階』の三箇所。一行はまず第一の噂の場所、縁側へと向かう」
(画面:怯える山戸を中央に挟み、慎重に奥へと進む一行)
(第一の噂の場所、縁側に到着するも何もない。庭が真っ暗で怖いと漏らす一行。障子の下がガラスになっており、庭が丸見えの構造。ここから『足だけが横切る』『ガラスには何も映らないのに障子にだけ人影が映る』という噂があると聞かされ、恐怖を深めながら次の場所へ)
(台所にたどり着く。昔ながらの古いつくりの台所に、雰囲気が怖いと怯える山戸)
友近
「次は……この勝手口の方ですか?」
山戸
「え、外?」
ナレーション
「続いて一行が向かったのは、台所の奥にある第二の噂の場所――井戸」
(画面:台所の勝手口を抜け、裏庭へ。暗闇の中に佇む不気味な石井戸が映し出される)】
坂寄(ワイプ)
「うわ、見た目からして完全に雰囲気出ちゃってるじゃん」
三戸部(ワイプ)
「今思い出したんですけど、この井戸もやばかったんですよ」
坂寄(ワイプ)
「今思い出したってなに(笑)」
吉原(ワイプ)
「わかります。この後に起きたことがやばすぎて井戸自体はあんまり記憶に残ってないんですよね」
【(画面:井戸の周りを囲む黒い人影のイメージ映像)
ナレーション
「裏庭にひっそりと残る古びた井戸。ここでは誰もいないのに話し声が聞こえるという」
(井戸を見て腰が引ける三戸部と山戸。少し離れた場所で懐中電灯で照らしながらも、誰も近づきたがらない)
三戸部
「いやこれ無理や! 雰囲気からしてヤバいやん!!」
音「ガァン!」
三戸部
「うおおぉぉ!!」
山戸
「きゃあああああ!!」
(突如響いた大きい音に驚き、台所へと逃げ帰る一同)
ナレーション
「突如井戸の底から響き渡った謎の音に全員が台所へと逃げ戻る。しかし真の恐怖は逃げ込んだこの直後に待ち受けていた」
三戸部
「今、井戸の底から音したよな!? 誰も触っとらんやろ! あの井戸やばいで! あんなん絶対呪われとるやん!!」
(三戸部のアップから、台所全体を捉えた引きの画面に切り替わった直後――)
音「バァンッ!!」】
(スタジオ、どよめき)
坂寄(ワイプ)
「なになになに!?」
【(衝撃音が響いた瞬間の全員の表情のアップが連続で挟まれる)
山戸
「きゃあああぁぁぁぁ!!」
友近
「えっ、なに」
三戸部
「い、今誰か扉触ったか!?」
(吉原の顔から急速に血の気が引き、恐怖で固まる様子が映る)
(直後、友近が迷いなく勝手口の扉へと近づいていく)
吉原
「あ、ちょ、開けない方がいいですって!」
友近
「私触ってないです。開き戸なので通ったときの風圧か、当たったせいで勝手に閉まった可能性もありますけど、それにしては閉まる勢いが強すぎました。外に誰かいるかもしれません」
(近くのすりこぎを手に取り、そのまま流れるような動作で友近が扉を開ける)】
坂寄(ワイプ)
「ちょっと待って! 友近さん、動きがホラーじゃなくて警察のガサ入れの動きしてるんだけど!」
(スタジオ、かすかな笑い声)
【(しかし開けた先には誰もいない。カメラが周囲や井戸を映すが、人影は一切確認できない)
友近
「誰もいませんね」
ナレーション
「三戸部が叫んだ直後、勝手口の扉が強烈な音を立てて閉まった。この衝撃の瞬間を複数のカメラが捉えていた。あらためてその映像をご覧いただこう」
(引きの映像、友近の後ろにある勝手口の扉が勢いよく閉まる映像がスローでリプレイされる)
ナレーション
「勝手口全体を捉えていた引きのカメラ、三戸部を捉えていたカメラ、そして手持ちカメラ。どの角度から見ても、扉の周辺には誰も存在しない」
(三画面が並び、どの画角でも扉の近くに人がいないことが強調表示される)
スタッフ
「通ったときに誰か当たった?」
友近
「触ってないはずです。当たったとしても、閉まるの遅すぎますよ」
(スタッフたちがドアの開閉を検証するが、完全に開け放った扉は勝手に閉まらない。構造上、外部から強力な力で引っ張らない限り、あのような轟音を立てて閉まることはあり得ないと実証される)
ナレーション
「現場のスタッフたちが検証を行うも、自然現象でこれほどの強烈な勢いで閉まることは考えにくい。誰かが強い力で引き寄せない限り起こり得ない現象である……」
(不可解な現象に三戸部たちが勝手口前で戸惑っている映像。泣きそうな山戸のアップ後、画面が暗転する)
(暗転後浮かぶ赤い文字テロップ:しかしこれはほんの序章に過ぎなかった……)】




