44. 『坂寄亮児のあれそれどうした?』 心霊スペシャル2
坂寄
「いやまってこんなことまで起きてたの!? (会議室で)話したときに勝手に扉が閉まったとは聞いてたけど、ここまでとは聞いてないよ!?」
三戸部
「いやほんまここありえへんことばっかり起きましたけど、ここはまだ普通に地上波でも流せるレベルなんですよ」
坂寄
「いやいや! だってこれ、普通の心霊番組ならこれ一本でメイン張れる映像じゃん!
こんなことばっかりだったって言うけど、現場に入ったときの空気とか、実際どうだったの?」
山戸
「私は……前に廃墟の心霊スポットにロケ行ったことあるんですけど、今回はすごく綺麗なお家だったので、最初は『あ、怖くないかも』って思ったんです。でも、中を進むにつれてどんどん圧迫感というか、空気が重くなっていくような気がしました」
坂寄
「で、あのドアでしょ。あれ、どう見ても誰も触ってないよね」
友近
「そうですね。私が一番ドアの近くにいたんですけど、ドアには手が届かないくらい離れてましたし、入ってくるときにドアに当たったせいでもないです。
最後のスタッフさんが入ってからだいぶ時間が経ってましたし、映像見るとわかるんですけど、ゆっくりだんだん閉まっていってるんじゃなくて、誰かが思いっきり力を込めてドアを引かないとあんな勢いで閉まらないんですよ。
でも内開きだから、閉めるためにはあのドアの前にいないと物理的に無理なんですけど……誰もいませんでした」
坂寄
「序盤からすごすぎるね、これ……。
で、今回はですね、この衝撃映像を徹底検証するために、事前に鳳先生に現地へ足を運んでいただき、直接の霊視をしていただいております。先生、この映像と現地での霊視を合わせてみて、いかがでしょうか?」
鳳
「そうですね……通常、映像越しですと相当強い念が残っていないとわかりづらいものなのですが、このVTRからはところどころ非常に強い悪意ある念を感じます」
(スタジオ、小さく騒めきと悲鳴)
坂寄
「現地を直接霊視していただいて、実際にあそこには何かいたんでしょうか?」
鳳
「はい。現地でも確認いたしましたが、この家には女性の霊がいらっしゃいますね。まずVTR冒頭、玄関を入ってすぐのところで、廊下の奥からじっと皆さんを凝視しておられました」
友近
「女性の霊、ですか?」
鳳
「ええ。この家に憑りついているのはその女性おひとりです。おそらく生前あの家にお住まいだった方で、ご病気か何かで亡くなられた方でしょう。家に対する非常に強い思い入れと執着を持っていらっしゃいます。
生前、もしかしたら家に関することでなにかトラブルでもあったのかもしれませんね。大勢の人が家に押し掛けてくると非常に警戒しますし、特に大声で騒ぎ立てる人間に対して強い敵意を向けられるようです」
(スタジオの全員が三戸部へと視線を向けたのち、カメラが三戸部をアップで映す)
坂寄
「三戸部さん」
三戸部
「いやちょっと待ってくださいよ!」
坂寄
「一番狙われるやつじゃん!(笑)
三戸部さん最初からずーっと大声で騒ぎ倒してたよね!?」
三戸部
「いや、ちょ、待って! それが俺の仕事やんか!! リアクション芸人呼んどいて大声で騒ぐなって矛盾もいいところですよ!!」
坂寄
「じゃああの勝手口のドアがすごい勢いで閉まったのは、その女性の霊が怒ってやったことなんですか?」
鳳
「いいえ……その女性の霊は確かに激怒していましたが、扉を閉めたのは別の霊です」
山戸
「えっ」
(スタジオ、驚く声)
鳳
「あの家に取り憑いているのはその女性一人なのですが、このとき、現場にはもう一人女の子の霊がいました。
あの井戸で音を立てたのは、家に憑いている女性の霊です。彼女は三戸部さんたちの騒ぎに激しい怒りを感じ、非常に強い悪意を放っていました。その悪意を遮るように、その女の子の霊が勢いよく扉を閉めて塞いだのです」
坂寄
「つまりその女の子の霊が、怒った霊から三戸部さんたちを守ろうとして閉めたってことですか?」
鳳
「そこまでは分かりかねます。純粋に皆さんを助けようとしたのか、あるいは単に怒り狂った女性の霊が来ることを嫌がって遮っただけなのか……。その女の子の霊も悪意のある霊ではありませんが、かといってあまり良い影響を与える霊でもありませんので」
坂寄
「さっきこの家に憑りついているのはその女性一人とおっしゃいましたけど、じゃあその女の子の霊はこの家とは何の関係もない霊ってことですか? 家に住んでたお子さんとかではなく」
鳳
「ええ。この家にはその女性以外、霊は見かけませんでした。この女の子……女の子とは言いましたが、子供ではないですね。セーラー服を着た高校生ぐらいの年頃です。
家や周囲の土地も霊視しましたがこれと言って霊がいる形跡もありませんでしたので、通りすがりの浮遊霊でしょう。
漂っていたところを大勢の撮影隊に引き寄せられたか、テレビの撮影が珍しくてついてきたのか……もしくはロケに来ていた出演者かスタッフのどなたかに取り憑いて、一緒にやってきた霊かもしれませんね」
(そう言ってちらりと観覧席側へと視線を向ける。観覧席横のカメラマンやAD、番組スタッフたちが映し出される。何人かの顔が強張っている)
坂寄
「ああ、人が多いところには寄ってくるって言いますからね……。
いや、ここまででも十分恐ろしいですし、凄まじいことになってますけども……みなさん、驚かないでください。本番は、ここからです」
(坂寄が神妙な面持ちでカメラを見つめる)
坂寄
「バラエティの枠を完全に超えた『本当の恐怖』がこれから起こります。覚悟してご覧ください。ではVTRの続き、どうぞ!」
【VTR】
【ナレーション
「誰も手を触れていないにもかかわらず、勝手に閉まった扉。スタッフ総出で検証を行うも、自然に閉まる要因は見当たらなかった。異様な緊張感に包まれる中、一行は次の噂の場所へと探索を再開した」
(ダイジェスト映像。続けて客間を探索する一行。綺麗に整えられた客間はがらんとしており、特に気になるものは見当たらず、何も起きない)
(引き続きダイジェスト映像。裏に蔵らしきものを見つける一行。しかし鍵を受け取っておらず、蔵には入れないため入り口前だけを見て回る。中から軋む音がして吉原が驚くが、それ以外には何も起きず)
ナレーション
「一階の探索を終えた一行が最後に向かったのは、三つの噂のうち最後の一箇所。この家でもっとも多くの怪奇現象が報告されている『二階の小部屋』」
三戸部
「うわ、二階真っ暗やん……」
吉原
「しかも階段すごい狭いし急ですね……これ上るの怖いですよ」
(一階から二階を懐中電灯が照らすが、光が奥まで届かず暗闇で何も見えない)
(ギシギシと音を立てる階段を恐る恐る登る一同を、カメラが後方から追う)
山戸
「天井すごい低いですね。物置とかに使ってたのかな」
吉原
「昔の日本家屋の特徴ですね……見た目は普通ですけど、でもなんか空気悪くありませんか?」
三戸部
「うわっ!!」
(三戸部の短い悲鳴とともに、画面が三戸部のアップへ)
(驚く山戸たちの映像を映した後、カメラが三戸部の視線の先へ向く。懐中電灯で照らされた日本人形が映し出される)】
坂寄(ワイプ)
「三戸部さんさっき『大声出すと危ない』って言われたのにまた叫んでるじゃん」
三戸部(ワイプ)
「暗闇の中に日本人形ですよ!? 叫ぶでしょ普通!」
【三戸部
「俺ここで検証すんの無理や! 三十分もこれと見つめ合うとか絶対呪われるわ!!」
吉原
「み、三戸部さん……! しず、静かに……!!」
三戸部
「なんや吉原! またなんか聞こえたんか!? やっぱやばいでこの部屋!」
(その直後、三戸部の後ろ端を勢いよく飛ぶ何かが映る)
音「だぁんっ!!」
山戸
「きゃあ!!」】
(スタジオ、かすかなざわめき)
坂寄(ワイプ)
「え、まって何!? 今なんか飛んだ!?」
【(混乱する山戸と、驚く友近のアップに切り替わる)
スタッフ
「い、今! そっちから何かっ!」
(カメラが先ほど飛んだものの動きを追うように移動すると、そこには手毬がゆっくりと転がっていた)
ナレーション
「衝撃の瞬間をカメラは逃さなかった。友近の後方にご注目いただきたい」
(引きの全員を映していた画面。一番左端の友近の後方から突如手毬が一直線に飛び、向かいの壁に激突して跳ね返る映像がスローで流れる)
(正面から友近を映していた映像。手毬が飛んだ直後、慌ててカメラが手毬を追う映像が流れる)
(二つの画面が並び、それぞれスロー映像でリプレイ)
スタッフ
「なに、なにが起きました!?」
友近
「後ろから何か飛んでいきました!」
(手毬が置かれていた箪笥周辺をアップで映す。周囲には人影はおろか、糸や仕掛けの類も一切確認できない)
ナレーション
「友近の後ろ、箪笥の上に置かれていた手毬が突如、ありえない軌道で飛び、勢いよく壁にぶつかって跳ね返る様子が映されていた」
(飛ぶ前の手毬の確認ができる映像では周囲に人影は確認できない。そこからノーカット映像で、誰も箪笥の近くには移動していないことが確認できる)
ナレーション
「前後の映像を確認しても、手毬の周囲には誰もいなかったことが確認できる。
立て続けに発生する不可解な現象に、現場の撮影はここで一時中断を余儀なくされた……」】
(画面暗転)
(スタジオに画面が戻る)
坂寄
「待って! これ『手毬が飛んだ』って言ってたやつ!? 話に聞いてた十倍くらいすごい勢いで飛んでるんだけど!! ねえ三戸部さん、これ(会議室での)話し合いのときすごいさらっと流してたよね!?」
三戸部
「いや何度も言いますけどね! ここはまだ普通に地上波でも公開できる程度の現象なんですよ!」
坂寄
「だから何度も言うけど普通の心霊番組だったらメインに持ってくるやつなんだって!!」
(スタジオ、笑い声)
坂寄
「いやでも今の明らかに軌道おかしかったよね。勝手に転がり落ちたんじゃなくて、誰かが勢いよく投げなきゃありえない飛び方してたよ。どう見ても自然に落ちたんじゃないよね」
友近
「はい。私の斜め後ろから壁に向かって一直線に飛んで行ったんですけど、あの時、一番端に立っていたのは私で、私の後ろには誰もいませんでした。
それとあの手毬、窪みのある小さい座布団みたいなのの上に置かれてたので、勝手に転がることもちょっと考えられないですし」
坂寄
「だよねぇ……。映像で見ても友近さんの後ろ、完全に何もないものね……。
先生、今の現象はどういうことでしょう?」
鳳
「そうですね……まずこの映像で本当に恐ろしいのは、あの手毬ではありません」
山戸
「えっ、手毬じゃないんですか?」
(スタジオ、騒めき)
鳳
「ええ。三戸部さんが大声で叫んだあの瞬間、先ほどの女性の霊が完全に豹変いたしました。これまでとは比べ物にならない凄まじい悪意が感じられます。完全に三戸部さんに向かって襲い掛かろうとしていますね」
坂寄
「あれがダメだったんですか!? ここリアクション芸人は絶対に入っちゃいけない場所じゃん!」
三戸部
「あんなん芸人関係なしに叫ぶやろ!! 無茶言わんといてくださいよ!!」
坂寄
「いやぁ、そう言われるとずっと三戸部さんだけが叫んでるもんね。完全に狙われてたわけだ。
……あ、でも待って。映像見てて思ったんだけど、吉原くんさ、三戸部さんが大声出すたびに『静かにしてください!』って必死に止めてなかった? もしかして、何か見えてた?」
(カメラが吉原の表情を捉える。吉原は一瞬言葉に詰まらせたのち、神妙そうな顔をする)
吉原
「いや……その、見えていたっていうか……現場に着いた時からなんというか、空気が異様だったんですよ。その、急に重たくなったと言うか……。
三戸部さんが大声を出すたびに、それがどんどん強くなっていって……。正直に言うと、僕、あの古民家に入る前から嫌な感じはしてて、絶対何かやばいことが起きるとは思ってました……」
鳳
「…………吉原さんは、勘が鋭いのでしょうね。霊の強い悪意を、本能的に敏感に感じ取っておられたのだと思います。
そして、あの手毬についてですが。
あの手毬を投げたのは、先ほどお話しした女の子の霊です。襲い掛かろうとした女性に投げたのだと思われますが……ただ手毬自体には霊的な威力はありませんから、意味があるとするなら驚いて投げつけてしまった、ぐらいでしょうか」
友近
「じゃああの手毬、特に意味はなかったってことですか?」
鳳
「ええ、そうですね。ですがこの場で三戸部さんが無事だったということは、この後、何らかの形で女性の霊を追い払ったのでしょう」
坂寄
「先生の霊視でも何があったか分からないんですか?」
鳳
「あいにくカメラが手毬を追って、映像が霊の存在していた空間から外れてしまってますので……画角の外で何が起きていたかまでは。
ですが、あの状況で皆さんが何事もなく無事で済んだということは……そういうことでしょう」
坂寄
「カメラも必死だったからねぇ(笑)
ですがみなさん。無事で済んだのは、ここまでは、です」
(スタジオの照明が一段暗くなり、重い空気に包まれる)
坂寄
「……そうなんです。皆さん、ここからがこのVTRの本番です。正直言いまして、撮影後のVTRを確認した段階で、上層部からも、これはネット番組と言えど流せない、お蔵入りにすべきだと大問題になった部分です。
協議を重ねた結果、本当に画面として絶対に流せない、危険すぎると判断した最低限の箇所だけを慎重に編集、カットさせていただきました。
……ですが、現場で実際に何が起きたのか、その一部始終を皆様にご覧いただきたいと思います。
それでは覚悟してご覧ください。VTRの続きです。どうぞ」




