30. 霊視鑑定コラボ動画2
いや。
いやいやいや。
何いってんだこいつ!?
「男性?」
「ええ。そもそも映像を見る限り、この部屋に元からいる霊はいません。
……魂は肉体とは違い、形が固定されているわけではありませんので。自由に姿形を変えることができるのです。
女性の腕に見えますが、これは山戸さんのこの場に抱く恐怖とそのイメージに寄せて姿を変えているのです」
『いや変えられませんが!? 物もろくに触れないのにTS能力なんて使えるわけないだろ!!』
「元々は山戸さんに相当執着している男性の生霊で、おそらく山戸さんが不安がっていたのを見てちょっかいをかけるのと、自分を意識してほしくて触ってきたのだと思います。
芸能人や人目に付くことの多い職業の方は生霊が憑くことも多いですし、珍しくありません。
ここの場所自体は本物のようですから、生霊が活性化したのでしょうね」
「じゃあこの腕の霊はここに入る前からずっとりんこちゃんに憑いてたんですか!?」
『憑いてないですよ!?』
「はい。そうなります。今も憑いてますね。元の男性の姿です」
『おいこのセーラー服と胸が見えないってのか!!』
「え、今もまだいるんですか?」
『ちかちさん!! 信じちゃダメだって!! そいつ絶対詐欺師だよ!! ただのろくでなしだよ!!』
「ええ。今も山戸さんの後ろにべったりとくっついているのが見えます」
『いないよ!! 見えてないじゃん!! 百歩譲って詐欺師じゃなくても節穴だよこいつ!!』
ホラースポットにはDQNしかこない!!
霊能力者は節穴しかいない!!
この世のオカルト業界はどうなってるんだいったい!!
いやまぁ見えないからこそそういう詐欺が蔓延りやすい業界なんだろうけど!!
期待してた分下げ幅がデカすぎる!
りんこさんとゆとさんは完全に狩野の言うことに怖がっている。
ちかちさんとあややさんも怖がりこそしてないけど、四人一緒に身を寄せ合っていた。
「こ、これだめなやつです? そのままだと危ないやつですか!?」
「そうですね。それほど強くはないですが、今回のように状況が合えば実害も考えられます。
悪いことに変わりはないので、祓っておいたほうがいいでしょう」
そう言って狩野は三十センチはある巨大な線香のようなものを取り出し、火をつけると四人の周りを払うように煙をくぐらせた。
「線香は幽霊にとって死を受け入れ、あの世へと向かう標になるものです。
皆さんが有名人だと言うこともあってちょっと周りにいる霊の数が多いので、特別な邪気払いの線香を使わせていただきました。
元から憑りついている霊以外は今全員去りましたね」
『……そもそも他に幽霊なんていないし、線香の匂いだなとしか感じませんが?』
いや、小山田さんが言っていたことが確かなら、もしかして別の層にいるとか……だめだ! ない!! どう頑張っても私にはこいつが詐欺師にしか思えない!!
「ちなみに軽く祓うだけなら普通の線香で十分効果はありますよ」
「え、じゃあ何かあったら線香つけたら除霊できるんですか!?」
「除霊というより、なんとなく興味を持って寄ってきた霊を追い払うぐらいですね。
ただ、元から憑いている生霊はこの程度では無理ですね。本格的にお祓いをしましょう」
そう言うと狩野の指示に従って、四人とスタッフは別室に移動する。
そこには机の上に並べられたお香置き。その横に置かれた謎の白い皿。さらにその奥の小さい祭壇の様な棚の上には、怪しげな白い粉の上に置かれた水晶があった。
なに。なにこの、THE霊感詐欺と言わんばかりの部屋。
狩野に案内されるまま四人は用意された席につく。
「今から山戸さんに憑いている霊を一度こちらの水晶に移し、邪気を浄化します。
邪気さえ祓えば元の体へと自然と戻っていきますし、こうやって憑りつくようなことはないでしょう。
では、はじめます。目を閉じて、心静かにしてください」
「はいっ!」
神妙な顔でりんこさんたちが目を閉じる。
すると狩野は先ほどと同じ線香に火をつけて、山戸さんの頭から水晶に向けて払うように腕を振った。
「今、生霊がそちらへ向かっています」
『……』
「よほど思いが強いみたいですね。香をもう一つ使います」
『……』
「生霊が今、完全に離れました」
ぽんと、水晶に触れてみる。
まぁいつも通り触れない。そしてなんも感じない。
もっかいぽんぽんと叩いてみる。
ついでにいっそぶっ壊す勢いでばんっと殴ってみる。
『……なんともないけど』
……うん。まぁ、水晶ですね。
何の変哲もない、水晶ですね。幽霊的にも。
「じゃ、じゃあもうこれで大丈夫ですか!?」
「ええ、あとは自然と元の体に戻るでしょう。
ただあくまで今憑いていた霊を祓っただけです。
有名人は霊を引き寄せやすいですし、心霊スポットなどに行くと霊を活性化させることになります。
ですので、今回はちょっとしたお守りを用意しました。浄化の力が込められていますので、多少悪いものでしたらこれで祓いのけることができます。
どうぞ」
狩野が渡してきたのはビー玉ほどの小ぶりな水晶を黄色い巾着袋に入れたもの。
喜んで受け取っているりんこさんの横にちょこっと近寄り、触ってみる。
うん。
……うん。なんともないし、まぁうん。
普通に水晶ですね。
『詐欺じゃん!!』
完全に詐欺じゃん!!
霊感もないし持ってくる道具はパチもんだしただの詐欺師じゃん!!
ねえ!! 自称素人霊感俳優の小山田さんのほうが詳しかったし力強かったよ!! ねえ!!
「じゃあこれがあれば心霊スポットとか行っても安全なんですか?」
ちかちさんがそう聞くと、狩野はたいそうぶって首を横に振った。
「いいえ、浄化の力には限界があります。危険なところに頻繁に行くとあっという間に力を失ってしまいます。あくまでお守りは日常的な生活において霊による干渉を抑えるだけです。
なのでそもそも、危ないところには行かないようにしてください」
『詐欺師のくせに正論ぶち込んでくるなこいつ』
「いきません!!」
勢いよくりんこさんが宣言したことで、場にちょっと笑いが起きた。
あくまでプレゼントだから、効きもしないお守り売って金をむしり取ろうってわけじゃないけど……いや、これアイドルのりんこさんたちを餌に線香やお守り売ろうっていう腹じゃないだろうな!?
あああああでもりんこさんが元気になってるプラシーボぉ! だけどぉ!!
ここで変なことするとお祓い効いてなかったんだってりんこさんがまた不安になるだろうけどこの零能力詐欺師を野放しておくのはいち幽霊としてもやもやするというか普通に許しがたいっていうか男の生霊呼ばわりされたの地味にいらっときてるっていうかうぐぐぐぐぐぐ……!
力の限り、全力で力を込めて。
カメラめがけて、ぶちまけてやるんだという強い意志を持って!
りんこさんには聞こえないように届け!!
「この詐欺師!! 痛い目見ろバーカ!!」




