29. 霊視鑑定コラボ動画1
もう一年以上あっちこっち浮遊霊していたが、幽霊という身の上なこともあって、実は霊媒師とかお坊さんとか神主さんといった人達に会ったことがない。
いや、気にはなってたんだ。でもお坊さんとか神主さんに会ったら即成仏させられそうでちょっと怖かったし……。
霊媒師に関してはそもそもそんな職種の人見たことがないし、どこにいるかも見当つかなかったので論外だった。
しかしここに来て本物の、霊能を職としてる人と会う機会がやってきてしまった。
『怖いけど……でも気になるし……。できればりんこさんにあれは別に悪いやつがいて、私は悪くない霊だって伝えて欲しい……』
そうは思うけどでも結局私も幽霊だからな……!
ぶっちゃけよく聞く陰陽師とかお坊さんみたいに『破ぁー!!』って祓われないか不安はある。
「よかったね、ちゃんとした人に見てもらえば安心できるね」
「うん。今回コラボする人、チャンネル登録者数二十万人のすごく有名な人らしくて……いろんな人が除霊してもらってるって」
「狩野さんだっけ」
心霊系動画では有名人らしい狩野まさひこさん。
マネージャーさんの資料を盗み見したところ、登録者二十万人を超えるスピリチュアル系Tチューバーとあった。
ちなみに私はスピリチュアル系Tチューバーと心霊系Tチューバーの何が違うのかわからない。資料を見てもさっぱりだった。
活動としては、心霊スポットの霊視をしたり、霊視でその人の魂を見て占いみたいなことしたり、オカルト現象に悩む人の相談を受けたりしてる人らしい……やっぱ心霊系Tチューバーでいいんじゃないの、この人。
ちなみに今回のコラボにはちかちさん、ゆとさん、りんこさん、そして第一弾の動画に参加していたあややさんという人が出るらしい。
「公開した第二弾の動画も再生数すごいよ。この勢いならコラボ動画も伸びそうだね」
「編集に力入れすぎてて怖さ倍増だったもん」
『あれ、だいぶ私が悪霊じみた編集されてて、ちょっと納得いかないんだよね……!』
そう、この間の廃保養所の動画は先日無事に公開された。
前回に引き続いてのガチ映像。しかも手持ちカメラ二台と後方カメラの一台の計三台で撮っており、誰もいないことが証明されてるときた。
第一弾の評判が良かったこともあり、再生数はあっという間に二十万を超えた。
編集の気合もすごかった。
悲鳴を上げるりんこさん。激しく揺れるカメラ。映った私の腕がリプレイされること三回。最後に険しい顔で部屋に乗り込むちかちさんに、ガチ泣きするりんこさん……という、もうぶっちゃけて言ってしまうが、これアイドルが撮る動画じゃないですよね? と言いたくなる事故ってる系心霊動画だった。
一瞬腕が映っただけなのに、演出とりんこさんの反応だけで私ここまで怖くなれるんだ! という思いと、足を引きちぎる幽霊とかいう悪霊扱い込みで怖がられてる部分もあり、ちょっと不本意な気持ちもある。
心霊界隈は『現役アイドルがまたやばい心霊動画撮った』と大騒ぎになった。
ファンの間でも、怖がるりんこさんとゆとさんが可愛いと好評だった。前半までは。
後半は可哀想というコメントで埋め尽くされてたが。
「本当にがっつり腕だもんね。しかもよく見るとお腹あたりも映ってるし。
りんこちゃんのすぐ隣にいた感じだったよね」
「やめてよぉ……!」
「早くちゃんとわかる人に見てもらいたいよね。小山田さんはああ言ってたけど、やっぱり憑いてるって言われると、まぁ、いい気はしないし」
「いい気はしないだけなの、ちかち……」
「首のちぎれた女の子だよ……?」
『怖がらせて申し訳ない……いや、私助けるつもりで引っ張っただけで悪いことはしてないけど!』
「その首が取れた子って、あの動画の腕の幽霊なのかな」
「それもちゃんと見てもらおう!」
そんなこんなで期待と不安がないまぜにされた日々を過ごすこと数日。
狩野さんとやらとのコラボの日がやってきた。
「今日はよろしくお願いします」
現れた狩野さんは四十代くらいの、声は柔らかだけど、顔はなんだかちょっと神経質そうな人だった。
なんていうか大学の教授か研究者のような雰囲気で、霊能力とか動画配信とはまったく無縁そうな人に見える。
挨拶するピンクガジェットの四人からちょっと離れ、気配を薄めて窺うように相手を観察する。
今は夕暮れ過ぎだし、めちゃくちゃ霊感ある人ならこの状態でも訝し気に見てきたりするんだけど……狩野さんは全然気づいてない。
うーん……どれくらい気配強めたら見えるんだろう……。
さすがに霊能力者に見られるのはリスク高いので、試すような真似するのは怖いな。霊能力者という人たちが、幽霊に対してどれだけのことができるのかわかんないし。
よくある『破ぁー!!』がガチでできるなら、今日はもう逃げるしかないし……。
コラボ動画の流れとしては、まず例の廃保養所の動画を狩野さんに見てもらう。そのあと念のためのお祓い。最後に霊視で四人の魂の状態を見る、という流れらしい。
『手当たり次第に幽霊に危害を加えない霊能力者でありますように……! でもって欲を言うなら動画に映ってるのは悪い霊じゃないと気づいてくれますように……!』
霊を親の仇だと思ってるタイプでさえなければ、気配を強めたら噂の足がない女の霊じゃないとは気づいてくれるはず! 私足あるし! 折れてるけど!
小山田さんぐらいの霊感があれば害意はないって伝えてくれるだろう。
「ではまず問題の動画を見せていただきましょう」
四人が固唾を呑んで見守る中、狩野さんも真剣な目で動画をしっかり見ていく。
「……いくつか霊が映り込んでいますね」
「えっ!? 本当ですか!」
「やだぁ!!」
『あの黒いの以外にもここいたの!?』
「この廊下のラップ音は霊が警告で鳴らしている音です。それからここ、遠くから様子を窺っている霊が何体か映り込んでいます」
「え、危ない霊ですか!?」
「どちらかといえば危険な霊ですが、危害を加えようとしているわけではなく、勝手に敷地内に入ってきた人間に警戒している様子です」
『ほえー、そんなのがいたんだ』
もしかして外部霊である私が勝手にドカドカ乗り込んだせいで、元からいた幽霊が警戒して引っ込んでしまってたんだろうか。
狩野さんはその後もいくつかの場所で霊がいると指摘し、また動画で霊ではないかと言われていた箇所を、光の反射や気のせいだとずばっと言い切った。
そしていよいよ最後。問題のシーン。
私の腕と声が映りこんであらぬ誤解を生んでしまった問題の場面がやってきた。
「……これは完全に映っていますね。間違いなく霊です」
「ここでは足をねじ切る下半身のない女性の霊が出るって噂があるんです。やっぱりその噂の霊ですか……?」
「……いいえ、違いますね」
『!! そうだよ、違うんだよ!! すごい! 腕だけでわかるんだ!! さすがプロ!!』
「この霊は現地の霊ではありません。山戸さんに最初から憑いている生霊……それも執着の強い男性です」
『……は??』




