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うらめしちゃんはうらめしい!  作者: 花山 花
廃校の七不思議(元)

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3. 川沿い道の浮遊霊1


 最恐の七不思議になる!! と、決めた私はさっそく新たな滞在地を探すことにした。

 七不思議になるからにはどこかの学校を根城にしようかな、とも思ったけど、それはちょっと断念した。

 というのもこの辺の高校、どこも制服セーラーじゃないんだよね……近場に三校ほど高校はあるけど、ブレザーと私服っていう。

 さすがにここにセーラー服の幽霊はちょっとおかしいっていうか、恐怖より先に「違う学校の生徒なのになんでここにいるの?」が先に来ちゃう気がする。


 あと学校だと噂は学生の中にしか広がらないと思うし。

 標的はすでに社会人なので、学校の七不思議になるとあいつらの耳に入らないだろう。人の七不思議を小ばかにして笑うくらい怪談話とか興味もなさそうだったもんな。屈辱!


 そういうわけでちょっと路線を変更して、最恐の七不思議ではなく、最恐の怪談になることにする!


 幸いというか、学校から離れてそこそこ近辺をうろちょろしてたので、夜になると通るの怖いな~という場所にもだいたい当たりがついている。

 麓の街中ではあるが、暗さも人通りの少なさもばっちりな川沿いの道だ。

 川幅四メートルほどで、三か所ほど橋がかけられているところがあり、そこそこ高い。人が落ちたという噂に事欠かなそうな高さと手すりの低さである。

 一応車道ではあるが狭いため車通りも少なく、街灯の間隔もかなり遠い。

 ショートカットとして使えないことはないし、車の通りもほぼないから夜のランニングで走ってる人も数人いる。


 暗くて、人通りが少なくて、でもまったく人が通らないわけじゃない。

 怪談話が広がりそうな川と橋という要素もある。

 これはもう心霊スポットにするには絶好の場所だろう! 雰囲気もいいし、自分の見た目の怖さには自信がある!!

 丑三つ時ぐらいに気配を消した状態から一気に力んで、姿を現して脅しかけるだけで十分いけるぞ!


 まぁそんなわけでさっそく川辺の道に立ち、通りかかる人を驚かす幽霊らしい活動を始めた。


 が。


『おかしい!! 現代人おかしいよ!!

 なんで!? 私が死んでる間に幽霊の定義に改定入ったりした!?』


 深夜のいい時間帯、一人道を通る人間の前に現れて驚かす、という幽霊らしい行為を試みること一週間。

 この間に私が脅した人間はだいたい両手両足で数えれる数を超えたぐらいだが、その結果は散々だった。


 まず半分以上の人間が夜にも関わらず、私の姿をちゃんと見れなかった。

 それはしょうがない。私の幽霊力が低いか、相手の霊感が零感のせいだ。こればっかは不可抗力なのでどうしようもないが、問題は残りだ。


 まず二人。

 ランニングをしていた四十代男性、同じく三十代女性。

 どちらも一人のところを狙い打ってまず目の前に急に現れてみた。もちろん首プランの足プランの内臓プランのトリプルプラン状態でだ。

 が、この二人は私を横目で見ただけで足を止めることすらせず走り去った。表情一つ変えやしなかった。完全に「急に出てくるなよ危ねえだろ」ぐらいにしか思ってなかった。恐怖どころか驚きすらなかった。

 なんで? 普通、惨殺死体が平然と立って現れたらビビらない? 私はビビって泣き喚いて逃げるぞ!

 ……まぁ心の冷え切ってしまった現代社会。『恐怖』や『驚き』という感情を失ってしまった悲しい人間もいるんだろう。たまたまこの二人がそんな現代社会の闇を代表する二人だったのかもしれない。


 次の三人。

 近くの家からコンビニまでちょっと出かけてるとこですと言わんばかりなラフな格好の三十代男性、それから仕事帰りかスーツ姿の男性、あとウォーキング中の五十代女性。

 ぱっと目の前に現れたら、この三人はめちゃくちゃビビってくれた。喉奥で殺すような悲鳴まで上げてくれた。ここまではよかった。

 しかし「これはいける!」と思って、意気揚々と「うらめしやあ!!」と叫んだ瞬間に彼らは頭のおかしい人間を見る表情に変わって、関わりたくないと言わんばかりにそそくさと逃げていった。


 おかしい!!

 なんで! 首のちぎれた人間が! 動いて喋って恨んでると叫んでるのに! 街で見かけたイカれたヤツみたいな反応をするのか!!

 もっかい言うけど首ちぎれてるんですけど!!

 どう贔屓目に見たって生きてる人間じゃありえないでしょ!!


 ここまででも元七不思議の幽霊として筆舌に尽くしがたいのだが、一番納得いかないのが最後の一人。

 もうちょっとで日付も変わろうかという時間帯に歩いてた大学生っぽいカジュアルな服の女性。

 同じようにトリプルプランで飛び出た瞬間、彼女は「ひっ」と恐怖の悲鳴を上げた。

 ここまでは先ほどの三人と一緒だ。とてもよかった。

 が、「うらめしやあ!!」と渾身の叫びをかました瞬間、彼女は恐怖から一転、敵意満々でこちらを睨みつけて勢いよく防犯ブザーを鳴らし、国道の方へ走って逃げていった。


 だから! おかしいでしょ!!

 なんで首が千切れて内臓だらんして足ぶらんしてる幽霊見て! 防犯ブザーを鳴らすの!!

 幽霊は変質者じゃないんだが!!

 それとも最近の変質者は首が千切れてるんですか!! そこまでいったら変質者は変質者でも変質者の幽霊だよ! おばけだよ!! 防犯ブザーで追い払えないと思うよ!!


『おかしい……さすがにここまで誰も怖がってくれないのは絶対おかしい……』


 いや、見た目は絶対怖いはずなんだ。

 私だっていまだに心構えなく見ると、自分の体だってわかっててもビビるくらいだ。

 工事現場で女生徒の怨霊騒動が起きたぐらい怖い姿には違いない。


 一応、四人は目の前に現れた瞬間は怖がってくれた。

 ……くれたよね? 急に目の前に人が出てきたからびっくりしたんじゃなくて、ちゃんと怖がってたよね? なんか自信なくなってきたな……。 


『……やっぱ「恨めしや」がダメなのかなぁ。江戸時代ぐらいの着物の幽霊ならともかく、女子高生が言うにはちょっと時代錯誤すぎたかな……』


 ぶっちゃけ、記憶がないせいかオカルトや怖い話には詳しくなく、ド定番しか覚えてない。

 だから幽霊の常套句というか、決め台詞のレパートリーを私はあんまり持ってない。

 「恨めしや」「殺してやる」「呪ってやる」「死ね」「一枚足りない」の五パターンしか思い浮かばなかった。


 しかし「一枚足りない」は皿屋敷限定の決め台詞だし、「殺してやる」「呪ってやる」「死ね」という、相手を害す言葉は正直使うのは避けたい。

 一応、自認としては『姿を消す』『存在感を強める』の二つしかできないと思っている。怒りも呪いも太陽建設のコンチクショウどもには欠片も届かなかったし。

 が、万が一ということもある。

 言霊という言葉もあるし、まかり間違って祟り殺すようなことになったら取り返しがつかないし。

 あと例え私に祟る力がなくても、あんまり強い脅し文句を使うと相手が恐怖で精神的に病んでしまう可能性もある。

 なにせこの怨霊感満載の見た目だからな。


『「恨めしや」……恨めしいっていうお気持ち表明が一番無難というか、これよりいい脅し文句、思いつけなかったからな……。

 いやでもちょっと脅し文句がずれてたとして、この見た目なら恐怖百点満点じゃん。

 その程度でみんな変質者に会ったような反応するのおかしくない?』


 いっそ黙って立ってた方がみんなビビってくれるんだろうか……。

 ……いや! たしかにビビるかもしれないけど、それだけで泣いて喚いて逃げるほどビビってくれるとは思えない!

 それに最恐の怪談となって君臨するにはそれ相応の内容がなければ!!

 そこの川辺の道を歩いてると首が取れかけた女の子の霊が出ることがあるんだよ~、程度の怪談でトップが取れるわけがないだろ!!


『殺されて川に遺棄された女子高生の霊が現れて、恐怖のあまり逃げ出すと枕元に現れて殺された無念と恨みを一晩中囁き続ける、っていう設定まで考えたのに……』


 全員恐怖で逃げ出すとこまで行かなかったっていうね……。

 このまま枕元に現れても、普通に不法侵入で警察呼ばれるんじゃってぐらい幽霊と出会った恐怖は皆無だった。


『どうしよう……路線を変えてみる? うらめしや以外でなんかそれっぽい……幽霊が言いそうな怖いセリフ……あ! そうだ!!』


 別に恨み辛みから攻めなくても、私の七不思議みたいに助けを求める方向に行けばいいんだ!!


 夜中に川辺の道を歩いていると、橋の上に今にも身を投げそうな女子高生がいる。慌てて近寄るとその女子高生はすでに首が千切れた死人の姿で、『助けて』と訴えて目の前で姿を消す!!


 これだ!! 


 まぁとは言っても流れはこれまでとそんな変わらない。

 手すりの上に立つ、駆けつけてきたところで首をころんする、相手が恐怖で固まったところで「助けて」と言って姿を薄める。

 もう想像しただけで十分怖い! これは絶対大成功する!!

 で。

 思い立ったが吉日!  と、さっそく方向性を変えて驚かすことにしたわけだけど。


「たす――」

「ッ!! すぐに救急車を呼びます!! 動かないで!!」

「あ、救急車は大丈夫ですもう手遅れですから!」


 血みどろの姿を見た瞬間、流れるように押された119番に、逆に私が叫ぶ羽目になった。

 だからなんで!!


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