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うらめしちゃんはうらめしい!  作者: 花山 花
心霊動画:足をねじ切る女の霊?

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23/44

23. 現役アイドル心霊企画動画2



 え、誰? ここ誰もいなかったでしょどっから湧いた!!

 初めて見る幽霊……? 仲間……? いやでもご同輩とは思いたくないほど私とぜんぜん違う!!


 思わず呆然と立ち尽くしてしまった私をよそに、二人は黒い人影が見えないようで恐る恐る部屋の中へと入っていく。

 置物のように立っていた黒い人影だったが、気づかないりんこさんが影の目の前へと足を進めた瞬間、姿を変えた。


 黒い顔に当たる部分の真ん中に穴が開いた。こぶしほどの穴、いや口。口だ。焼け焦げた舌と欠けた黄色い歯が並ぶ口を大きく開き。


『ア゛ア゛アアア゛ア゛ア゛アアアア』

『へぎゃあああああああ!?』


 まってりんこさん止まって!! そいつ噛、ちょ、にげ――行くな!! 進むな! だか、まっ――


「ちょおおおおおおおおおおお!!」

「きゃああああああああああ!!」

「っ! なになになに!!」


 りんこさんの後ろから太いベルトを引っ掛けるようにして思いっきり後ろに引っ張る。

 何度試してもダメだったのに、柔らかい服と人の体を掴んだ感触が手にあった。


 うそ、まじで!? なんでまた、いやそれよりも逃げて逃げよう撤退撤退撤退ッ!! すぐッッ!!


 掴まれたことで恐慌状態になったりんこさんに続いて、ダッシュで部屋を飛び出そう、として。


『……あれ?』


 部屋から出る直前、思わず振り向いたら黒い影が崩れていた。

 口をゆがめて、砂が崩れるようにさらさらと、私が振り返るとほぼ同時に消滅した。


『……え、消えた?』


 ……いや。いやいやいや。


『意味分かんない!! いなかったはずなのに勝手に現れた挙句にさらっと消えるとかなんのために出てきたんだ!! ていうか本当に幽霊!? 私とぜんぜん違うじゃん!!』


 はじめて出会ったオカルト現象だけど怖いを通り越して理不尽すぎて怒りしかわかない!

 いや本当に何!

 消え方も姿を消したっていうより輪郭から崩れて溶けるような、消滅したって言った方がしっくりくるような消え方だったし!


「どこ? 部屋の中?」

「わ、わかんない! うし、後ろから、すごい力で、ぐって……!!」


 部屋の前でぶちぶち言っていたら、逃げた二人がちかちさんとスタッフさんを連れて戻ってきた。

 相変わらず豪胆なちかちさんが、躊躇もせず部屋の中を覗く。

 しかも何かあっても動けるような姿勢で、かつ左手に三脚らしきものを武器のように構えてだ。

 ……ちかちさん、なんでアイドルやってるんだろう。風体がアイドルじゃなくて完全に戦士なんだけど。


「なんにもいないし、変なところもなさそうだけど」

「本当につか、掴まれて! 後ろに足持っていかれそうになったんだよ! も、もう無理!!」

「か、カメラなにか入ってるかも……まだ録画切ってないから……」

「……よし、あっちで確認してみましょうか」


 ディレクターっぽいおじさんの一言で七人は一階のロビーへと移動し、二人の持っていたカメラの映像をその場で確認し始めた。


『二人とも見えてなかったしなぁ……カメラ映ってるかは正直怪しいけれど……』


 みんなに混じってこっそり小さい画面を覗き込む。

 私自身は鏡やガラスに映ったことはあれど、監視カメラで姿を撮られたことはない。そしてあの黒い謎の人型は二人に姿を見られてすらいなかった。

 だからまぁ、今回もそうだろうなと思ってたんだけど。


「え、なにこれ」

「嘘、こんなの聞こえなかったよ!」

「やだやだ! なにこれぇ……!」


 映らないはずなんだけど……!


「……ちょっと待ってください。ここ……」

「うわ、うそ」

「……誰かいるね」


 ちょっとまって映らないはずでしょなんでこのタイミングでそうなるの!!


 現場を映しているのはゆとさんとりんこさんの手持ちカメラ。それから少し離れたところから二人を追って映していたスタッフさんのカメラの計三つ。

 ただスタッフさんのカメラは二人が室内に入るところを背中から映しており、二人の背中に塞がれて室内までは映っていない。

 ゆとさんの映像は室内の左半分を撮っており、人影がいた辺りは映していない。逃げた時の映像もぶれぶれで、映像の判別もできないほど。


 それをしっかりと映していたのはりんこさんのカメラだった。


《は、入るよ……》

《待って怖い怖い!》


 ベッドだけが残る客室は天井も壁もところどころ剥げており、たまに懐中電灯で照らされるカーペットはくすんで色褪せてしまっている。

 瓦礫ともゴミともつかないものが、室内のあちこちに落ちていて、それがまた廃墟感と恐ろしさを際立たせていた。


《何にもないよね……》

《……でもちょっとここ、変じゃない……頭なんか痛くなる……》


 映像では二人は声を震わせながら、懐中電灯で室内を確認し、一歩一歩中へと入っていく。


 で、問題はここから。

 あの黒い人影は案の定、映像には残っていなかった。

 画面はあの黒い影がいたはずのところへ、りんこさんが一歩一歩近づいてく。


《なんか、鳥肌がすごいする……》


 そう言ってりんこさんがわずかに足を止めた、その時だった。



《ヂョオ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛》



 カメラのすぐ近く。後ろから。あまりの近さと大きさに音が割れるほど、しっかりとした声が入っていた。

 映像のりんこさんはその声には反応しないで、さらに一歩進もうとしたその瞬間。


《きゃああああああああああ!!》

《っ! なになになに!!》


 突如カメラが大きくブレる。定まらない画角に部屋の入口から離れたところで二人を撮っているスタッフが映った。

 スタッフが驚いたようにぎょっとする。しかしそれが逆に彼が何も気づいてない、つまりそこではなにも起こってない、安全な場所に見えた。

 カメラを構えることすら忘れて、荒れに荒れた画面がカーペットや壁、走って飛び出す二人の足など、あらぬものを映したところで映像を止めた。


 ……姿も見えないし声も聞こえなかった黒い人影が映ってなかったのは当然としても。


「ここ、山戸さんが走って逃げだす直前、カメラが下がった瞬間のところ」

「!? うそ、やだ!!」

「え、これ……腕、だよね……?」

「ゆとちゃんいたの左側だよね。右側にいるよね、この人」

「まって……無理……本当に無理……」


 カメラがブレるその直前。なんでか私の姿しっかり映り込んでいた。

 たぶんりんこさんが逃げ出すとき、ちょっと立ち止まって後ろ振り返ったときだ。

 位置的に走り出したりんこさんのすぐ横に、私の胸から腰までがばっちり映ってる。りんこさんのベルトに手を伸ばした腕もしっかりとだ。


 うっそでしょ!! 今までカメラに声も姿も映ったことなかったじゃん!!

 なんでこんな映らなくていいときだけちゃんと映るの!!


『二人とも私も黒人間も見えなかった……のに、なんで私の姿と声だけ入ってるの!!

 おばけ屋敷では一回も映ったことないのに本当に意味わかんない!!』


 意味がわからない黒人間が出てきた挙句、謎が多すぎるおばけルールがまた一つ明らかになってしまった。

 もうこれだけで私の頭はいっぱいいっぱいだったのに、さらに追い打ちがくる。

 たぶん私以上に精神的にいっぱいいっぱいだったりんこさんのせい……いや、せいっていうべきじゃないな。りんこさんも被害者だから……。

 ただそう、りんこさんの一言で、事態がとんでもない方向にひん曲がった。


「これ……足に手伸ばしてない? 引っ張られたのも腰の辺りって言ってたよね……?」

「!! やだ! だってここ、ここ! 足とるって……!!」

「りんこちゃん、どこか違和感とかある……? 大丈夫……?」

「大丈夫だけど大丈夫じゃないぃ……!」

「これ、女性の手だよね……入ってる声もすごい割れてるけど女の人だし……」

「ここ、女の悪霊がでるって噂の部屋だったよな……」

『違う!!』


 仮に本当にいたとしてもあの黒いのだよ!! 私脅かしはしても襲いはしないよ絶対!!

 後ろから引っ張って止めただけなんだって! 止めようとしただけで!! いたんだよ! 黒いヤバイやつが!! 私じゃなくて!!


 思わず力を込めて叫んだ主張も、彼らには聞こえることはなく。


「じゃあ……これが噂にあった、足をねじ切る、下半身の無い女の霊なの……?」

『え――冤罪ッッ!!』


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