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うらめしちゃんはうらめしい!  作者: 花山 花
心霊動画:足をねじ切る女の霊?

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21. ホラースポットに来る人間


 屈辱のホラースポットでの第一陣から早一ヶ月。

 この一ヶ月間で学んだことは三つ。

 こんな山奥のホラースポットにわざわざ来るやつは少ない。


 でもってそんな山奥のホラースポットに来るやつは同じようなホラースポット巡りをしている輩で、かつそんな行動を続けるほど本当に怖い目にあったことのない――つまり零感が多い。


 最後に。

 廃墟に許可も取らず忍び込んで肝試しとかする輩は、だいたい常識もないDQNである。


『はー! ただでさえあんな廃墟に行く人間少ないってのに、わざわざ脅して怖がらせるのも癪に障るようなクズしかこない!!』


 あの一組目の男子三人組は、不法侵入してたけどまだマシな類だった。

 この一ヶ月の間であの廃墟に向かった人間は五組十五人。

 もしかしたらこのコンビニに寄らず直で向かってる輩もいるかもしれないが、それでも週三組もいないだろう。


 で、こんな山奥にわざわざやってきて肝試しやろうぜ! って言うのは、オカルトマニアかホラースポットを夜に行けるレジャー施設とでも思ってるようなDQNしかいない。

 少なくとも私が見た五組はオカルト好き一組、ちょっとましなKYカップル一組、論外なDQN三組だった。


 まずあの慣れた様子から、心霊スポットを津々浦々回ってるだろう一組目の男子大学生三人組。

 不法侵入がまずアウトだが、彼らは自分たちがしていることが悪いことだという自覚をきちんと持っていた。

 バレないようにこっそりと、場を荒らさず、物もなるべく触らないように行動してたし。

 大人しく、荒らすことなく探索していた分、正直マシと言える。


 で次にちょっとましだったKYカップル。

 ホラー好きな彼女さんと、気が進まないまま付き合わされた彼氏くんだ。

 ともに不法侵入した時点で同罪だろうけど、彼女さんが好き勝手うろうろするのを、危ないからと彼氏くんが諌めているふうだった。

 たぶん悪いことしてる自覚は薄いが、山奥のいつ崩壊してもおかしくない廃墟、すなわち危険な場所だとはわかっていたようで行動はおとなしめだった。


 で。

 残りの三組! 論外DQNども!!


 まず一組目!

 飲み会帰りにやってきただろお前らちゃらんぽらん男四人組!!

 そもそも車でやってきたくせに全員酒飲んでるってどういうことだ!! 酒気帯び運転禁止の交通法消えたの!? なわけないよねえ!! 私が生きてたときより厳しくなることはあってもゆるくなってることは絶対ないはずだぞ!!

 こいつらは酔っ払い特有のテンションとノリで廃墟に入り込み、「これこっちのほうが怖くね?」とか言いながら物壊すわ、ふざけてロビーのテーブルやキャビネットの上に乗るわ、挙句に壁の落書き見て「俺らもなんか残しとこうぜ!」とか言って、落ちてた金具で壁をひっかき文字を書く始末。


 器物! 破損!!

 私が元からここを根城にしてる幽霊だったら一年は苦しめって祟ってるレベル!!


 あまりにも許しがたくて、もう脅しもなんも考えず、その場で力込めて「いい加減にしろよお前ら!!」と叫んでしまったが、このドチクショウどもに聞こえることはなく。

 結局、彼らはずっとそんな調子でホラースポットでふざけ倒し、色んなものを壊して、酔っ払いのテンションのまま帰っていった。

 本当にさあ! こういうことする輩だけ気づかないのさあ!! 気づかないからこういうことするんだろうけどさあ!!


 で次!

 心霊スポットでダブルデートのつもりか男二人、女二人の四人組!!

 こいつらの何が最悪だったかっていったら、女の子の一人が明らかに嫌がってんのに無理矢理連れてきてんだよ!!

 正直態度自体もあんまり褒められたもんじゃなく、常にふざけ倒した態度で、館内に残ってた電話とか人形を見つけてははしゃぎ、ゴミのようにぽいぽい投げ捨てる。あとドアとかも酔っ払い四人組と一緒で躊躇もせず壊して開ける。お前らそれ犯罪行為だぞ。


 ただ女の子一人だけは、ホラーが嫌いらしくて「やめようよ」「怖い」「嫌だ」で常に半泣きだった。

 私もホラー嫌いだから気持ちがよくわかる。

 幽霊生活で夜中に一人でいることにもだいぶ慣れたし、昼に探索して幽霊がいないことも、大体の間取りもわかってるから多少は平気だけど、夜中に一人でここ放り込まれたら半泣きで出て行く自信がある。


 で、怖がってる女の子に対し、「大丈夫だって」「こんなの全然怖くないじゃん」「そんななるほどじゃなくね?」とかバカにしたように半笑いで言う始末。

 生きてると人付き合いやしがらみがあるから難しいかもしれないけど、こんな連中とっとと縁切ったほうがいいと思うよ、私。

 わざと大きな音を立てたり、怖がらせるようにあちこちライト当てたり、だいぶ有罪度が高かったが、それでもふざけ半分で置いていくほどクズではなかった。

 もしそんな真似しようものなら、本格的に祟りの習得を今後のプランに入れてたわ。

 この有罪三人組はともかく、怖がってる女の子が可哀想すぎて、さすがに私も脅す気にはなれなかった。


 最後!!

 男二人組だけどこいつらは本当に論外!! 

 というかもう普通にただの犯罪者!!

 不法侵入で肝試しどころか廃墟に残ってるものを物色、勝手にいくつも持ち帰る始末!

 普通に金目の物漁ってるだけじゃなく、「これ売れそうだな」とか「ここらへんに置いて出品写真撮っておくか」とか言ってたので、心霊スポットの呪いの品とか曰く付きの品とか言って見栄えのいいものを売りさばいてるようだった。

 さすがに見過ごせなくて、演出も噂もガン無視で眼の前に立ち、全力で「出てけ!!」と怒鳴ったが、案の定ですよ!! こういう輩だけ見えないの本当に幽霊界のバグだと思うの!! 早く修正パッチ当ててくれ!!


『水谷くんの動画で見た配信者さんはあんなによかったし、楽しそうだったのになぁ……ホラースポットに実際にやって来るやつ、なんでこんなろくでもないのが多いの……』


 あの動画は本当に面白かった。

 三人組で怖い廃墟をやいやい言いながら進むさまは、雰囲気は十分に怖いのに、賑やかで楽しかった。

 荒らさないよう慎重に探索し、かつきちんと許可を取って入るようにと動画の最後でも丁寧に案内していたし。

 再生数も十何万とかいってたからなぁ……きっと彼らはホラースポット探索者の中でも上澄みなんだろうな。


『こんなにひどいならホラースポット滞在は断念した方が良いかなぁ……こんなにも脅かしたくもない人間ばっかくるとは思わなかったし……。

 いっそもうどっかのおばけ屋敷のスタッフさんの枕元に立って、素直に住み憑かせてくれって直談判した方が良いのか……でもずっといるわけじゃないし、そもそもそれだとどれだけ時間かかるか……天ヶ原ワールドパークのときみたいに、スタッフさんだけ見えない可能性もあるし……』


 どうしたものかと悩んでいると、コンビニの駐車場に大きめのバンが二台も入ってきた。

 一台ならともかく、二台もこんなとこに来るのは珍しい。

 もう考えが擦れてしまって、お前らも肝試しという名の犯罪行為をしに来たのか……? という疑心が先に立ってしまう。


「目的地の廃墟まであとどれくらいです?」

「ここから十五分ぐらいですね。必要なものあればここで買っときましょう」

「皆さんはどうされますか?」


 やっぱりか! と思ったが、どうもこれまでの肝試しの連中と雰囲気が違った。

 まず人数が多い。全部で七人。男性三人の女性四人で、年齢も二十代から四十代とばらつきがある。


 次に雰囲気が「これから肝試しだ!」というより「これから仕事だ」と言わんばかりのぴしっとした雰囲気だ。

 

 最後に車の中を覗けば、一般人には縁がないレベルのごついカメラや機材がいっぱい積んである。

 明らかに普通ではなかった。


『えっ、なんの集まり……?』


 私の声が聞こえたわけじゃないだろうが、その声に答えたのは車に乗っていた若い、とても綺麗な女性達だった。


「本当に行くの……!? もう山、ここから見るだけで怖いんだけど……」

「まぁこれもアイドルの仕事だから」

「絶対アイドル関係ないじゃん! ちかち、なんでそんな平気そうなの……!」

「私はこういうの平気っていうか、怖くはないから」

「しょうがないよ、りんこちゃん……この間上げた心霊企画動画、めちゃくちゃ伸びたから……たぶん、これ一回じゃすまないと思うよ」

「嘘でしょやだぁ!!」

『アイドル!?』


 私が死んでる間にアイドルって歌って踊って心霊凸する人達のこと言うようになったの!? うそじゃん!!


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