9.「vs盗賊団(2)」
「「死ね!」」
盗賊団の団員二人が、姉妹に向かってナイフを振り下ろした直後。
「「「「「!」」」」」
凶刃が脳天に突き刺さった。
「……はれぇ……?」
「……なんでぇ……俺……?」
振り下ろした男たち自身の脳天に。
そのまま顎まで貫かれた悪漢どもが、白目を剥いて倒れる。
「魔法か!? ふざけた真似しやがって! おい、野郎ども! 全員ぶっ殺せ!」
「「「「「うおおおおおおお!」」」」」
盗賊団の頭目が腰の長剣を抜き、天高く掲げると、三十人のならず者たちが雄叫びを上げる。
びちゃっ
「あ? 何だ、雨か? それに、やけに重いじゃねぇか――」
頭目が頭上を見上げると。
「……頭ぁ……なんでぇ……?」
「!」
頭目が上に掲げた長剣が、部下の一人を貫いていた。
血飛沫が頭目の顔を赤く染める。
「一体何が起こってるんだ!?」
「あいつら、何しやがった!?」
二度目の不可解な出来事に、部下たちが青褪め、尻込みする。
「間違いない! 魔法だ! 防御魔法掛けろ!」
「はい! 『プロテクト』!」
男たちの中で唯一ローブを着た者が、両手を翳した防御魔法を発動。
荒くれども一人一人を、光が包み込む。
「これで問題ねぇ! やっちまえ!」
「「「「「うおおおおおおお!」」」」」
頭目の叫びに奮い立った男たちが、長剣・ダガー・ナイフ・曲刀と、それぞれの得物を手に、走ってくる。
「死ねぇ!」
一人の男が、ソティに斬りかかる。
「よしゃ! これで一人! 楽勝だぜ!」
余裕の笑みを浮かべる男だったが。
「……てめぇ……何で……俺を……?」
「!?」
倒れたのは、仲間の男だった。
そんな中、先刻のローブ姿の男と違い、見るからに荒くれものという見た目の男が、俺たちの背後――森の中に密かに回り込み、ボソッと呟いた。
「『氷柱』」
数多の氷柱が飛ばされる。
口角を上げる男。
「がはっ!? ……な……ぜ……!?」
男は自身の氷柱群によって背後から貫かれて、倒れた。
その後も、敵だと思ったら味方を殺し、または自分自身に刃を突き立てて死んでいく男たち。
……という幻影を俺は見せて、その隙を突いてソティたちが攻撃していく。
抜き身の長剣を手に、微動だにしないソティに、五人の男たちが同時に向かっていく。
「死ねぇぇえええ!」
「殺せぇぇえええ!」
刹那。
「ふっ」
ソティの姿がブレた。
悪漢どもの背後にソティが移動。
刀身についた血を振り払い、納剣する。
「あ……れ……?」
「なに……が……?」
ならず者たちの首が五つ、宙に舞った。
どうやら、俺が庇ったブラックドラゴン戦の時とは違い、ソティはいつもの冷静さを取り戻したらしい。実力を遺憾なく発揮している。
「俺たちはそっちの痴女エルフだ!」
「ぶっ殺せぇぇえええ!」
六人の盗賊が、エルラに襲い掛かる。
「誰が痴女エルフだ! おらあああ!」
「「「「「ぎゃああああああ!」」」」」
が、常軌を逸する膂力による棍棒の一振りで、地面が大きく陥没、男たちは吹っ飛ばされた。
「ロリだろうと関係ねぇ! 殺せ!」
「死ねぇぇえええ!」
七人の悪漢どもの魔の手が、ファラティアに伸びる。
「確かにファラは可愛いけど、でも立派なレディなの! たああああ!」
「「「「「ぎゃああああああ!」」」」」
炎そのものに変化させた拳による連続正拳突きにより、幾多の炎塊が飛翔、男たちに着弾すると同時にその身体を燃やし尽くした。
いつの間にか、頭目以外の全員が死んでいた。
「クソが! 調子に乗るなよ、冒険者風情が! こっちにはまだ人質が――」
「人質が何だって?」
「!」
俺の言葉に、頭目が目を剥く。
ティジィとホルシィは、俺の両脇にいた。
「うわああああん!」
「ライさん! ライさん!! ありがとう……! ありがとう……!!」
縋りつく二人の頭を撫でた俺は、「もうちょっとだけ待っててな」と、頭目の方に向き直る。
「あとはお前だけだ」
「観念しなさい!」
「ハッ! 年貢の納め時だよ!」
「大人しく死ぬの!」
頭目は、「ふざけんじゃねぇぞ!」と、苦虫を噛み潰したような顔をしていたが。
「ギャハハハハハハハ!」
突如、哄笑を上げた。
「この程度で追い詰めた気になってんじゃねぇぞ! こっちにはこういう時のために事前に渡された切り札があるんだからよ!」
頭目のポケットから取り出されたのは、魔石が埋め込まれた小さな箱だった。
恐らく魔導具だろう。
「『解除』! 出でよ! ゴーレム!」
地面に漆黒の魔法陣が展開、ゴーレムが出現した。
「コイツがお前らを殺してくれるって寸法だ! ゴーレムの硬さは知ってるだろ? せいぜい頑張って抗って――」
「ふっ」
ソティが頭目の背後に移動。
「隙だらけよ」
「ぐぁっ!」
頭目の首が宙を舞う。
振り返り、冷たく見下ろすソティに、だが地面に転がる頭目は不敵な笑みを浮かべる。
「やりやがったな……これで……完成だ……」
「?」
頭目の生首と胴体が、スーッとゴーレムに移動、中に吸収されると。
「!」
岩だったゴーレムの身体が、鋼鉄に変化。
と同時に、その巨躯が更に巨大化する。
「ギガントメタルゴーレムだ。コイツは、普通のゴーレムよりも巨大なだけじゃねぇ! ただでさえ硬いゴーレムが鋼鉄になったことで、防御力が更に高くなり、魔法耐性も持つのさ!」
その胴体部分に埋め込まれた頭目は、どうやら頭部と胴体がくっついたようだった。
「ふっ」
「おらあああ!」
「たああああ!」
ソティ、エルラ、ファラティアが、長剣、棍棒、炎で攻撃するが。
「んなもん効く訳ねぇだろうが!」
「そんな!?」
全て弾き、ギガントメタルゴーレムにはダメージを与えられない。
「さぁ、楽しい楽しい殺戮ショーの時間だ! ギャハハハハハ!」
頭目の高笑いが森に響いた。




