20.「黒幕」
「この反応……どうやら、魔王が倒されてしまったようじゃのう」
「そのようじゃのう。せっかく儂らが若かりし頃に生み出したというのに」
虚空に映し出された二つの映像と、王冠を頭上に戴く老人たち。
肖像画で見た覚えがある……ディアルーズ帝国とローゼヴァウス皇国の皇帝だ!
どうやら、わざと……ではないらしく、まるで盗撮されているかのように、自分たちの映像が今現在流れていることに気付かない二人は、通信魔導具で互いに会話しながら、過去の蛮行を語りだした。
彼らとシュルデバーグ王国の国王の三人は、元々知り合いで、どうにか市民から重税を巻き上げて美味しい蜜を吸えないかと考えていたらしい。
そこで思い付いたのが、当時、力を暴走させた闇の精霊が閉じこもった大きな岩山だった。
以前から闇の魔力が漏れ出していると噂だったその場所へと赴いた三人は、事前に腕利きの職人に作らせておいた魔導具に巨大な魔石を嵌め込んで持っていき、そこに設置して、闇の魔力を常時魔導具に吸収させることに成功した。
その魔導具によって生み出されたのが、魔王であり、モンスターだった。
魔王とモンスターによって、彼らは目論見通り、国の外に目を向けさせることで、汚職から目を背けさせ、重税に対する諦めの感情を引き出すことに成功した。
また、死の商人と呼ばれるように、戦争を金儲けの道具にした商人たちが武器・防具・魔導具などの収益を伸ばして、それらの何割かを彼ら国のトップが受け取った。
「勇者パーティは邪魔だったが、家族や大切な者を人質にすることで、言うことを聞かせられたからのう。ふぉーふぉっふぉっふぉ~」
「そうそう。冒険者で優秀な者は、暗殺者に殺させれば良いからのう。ぐふふっ。ぐふふふっ」
くそっ! 何て奴らだ!
人の命を何だと思ってるんだ! 絶対に許せない!
俺たちが怒りで震えていると。
「なっ!? お主は!?」
「ま、待ってくれ! これは何かの間違いだ! 儂は何もしていな――」
「「ぎゃああああ!」」
映像の向こうが鮮血で真っ赤に染まった。
代わりに現れたのは、
「ん? これ、もしかして……精霊の仕業か? 映像が流れてるっぽいな」
「師匠!」
元勇者のガイアさんと。
「かっかっか! どうやらそのようだな!」
「師匠なの!」
元勇者パーティメンバーだったレイガさんだった。
恐らく空間転移指輪を使って王城に潜入した彼らもまた、通信魔導具で会話しているらしい。
「ライ。てめぇらも見てるのか、この光景を? だとしたら、教えておいてやるよ。シュルデバーグ王国の国王は、既に俺様が殺した」
「!」
「だから、これで元凶である三人は全て片付けた訳だ」
「長かったな……」
「ああ、本当に……」
勇者として国家に、そして世界に貢献した挙句、裏切られて許嫁と親友を殺されたガイアさんの胸中に渦巻く感情は、一体どのようなものだろう。あまりにも残酷過ぎて、悲惨過ぎて、想像すら出来ない。
でも、これで終わったんだ!
良かった! 本当に良かった!
そう安堵した、次の瞬間。
「グオオオオオオオオッ!」
「!?」
地の底から響く咆哮に、大地が揺れる。
「……ふぉっふぉっふぉ……ただでは……死なんのじゃ……この六十年の間……魔法使いどもに……研究させて……やっと……見付けたのじゃ……暴走のさせ方を……お主ら全員……道連れじゃ……!」
「!」
地面に亀裂が生じる。その隙間から現れたのは――
「てめぇら、逃げろ! この魔力は、ヤバ過――」
――世界に夜を齎す者――闇の精霊だった。




