19.「vs魔王」
「クックック……情報通りやってきたな。死ね」
モンスター軍を従えた魔王が、事前に空に出現させていた幾多の氷柱を俺たちに向けて落とす。
「任せてなの! 『変身』!」
ファラティアの全身が炎に変化。
「『無限猛炎』!」
今までは両拳だけだったのが、両腕を広げた全身から、星の数ほどの火炎を射出。氷柱を次々と迎撃していき、決して近寄らせない。
「私も! ふっ」
「「「「「ギャッ!」」」」」
抜剣しつつ駆けだしたソティの姿が、モンスター軍右側手前で消えたかと思うと、右翼中心部まで一気に移動、モンスターたちの数多の首が宙を舞った。
「ハッ! 負けちゃいられないね! おらあああ!」
「「「「「ギャアアアアアアアア!」」」」」
エルラが大きく跳躍、左翼の密集地帯に着地と同時に棍棒を叩きつけると、オーク数匹の豚顔が一瞬でミンチになると同時に地面が大きく陥没、数十匹のモンスターが吹っ飛ぶ。
「俺も行くか。『ファントム』」
「「「「「ガァッ!?」」」」」
モンスターたちに互いが俺たちに見えるという幻を見せて同士討ちさせる、という幻影魔法を発動、その隙にソティとエルラが攻撃して、恐るべきスピードで屠っていった。
「あとはお前だけだ!」
だが、最後に残った魔王は、不敵な笑みを浮かべる。
「魔の王たる力をとくと味わえ。『死棘』」
魔王が無造作に手を翳すと、死を告げる巨大な棘が幾つも飛ばされた。
「せいぜい必死に避けることだ。その棘に触れた者は、何人たりとも死を免れん」
「!」
「させないの! たああああ!」
ファラティアの炎塊が巨大棘にぶつかるが、
「そんな!?」
まるで炎が死を迎えたかのように、黒く変質して消滅。
「それなら! ふっ」
「舐めるんじゃないよ! おらあああ!」
ソティとエルラが得物で迎撃を試みるが。
「なっ!?」
「嘘だろ!?」
オリハルコン製の長剣と棍棒もまた、黒く染まり、砂のように崩壊、そのまま巨大棘が二人に触れそうになる。
「『ファントム』」
「何だと!?」
が、巨大棘がどちらも消滅するという幻影を見せると、魔王が驚愕に目を剥く。
でも、武器破壊は痛い。致命的だ。
一体どうすれば……
「おお! こんな仕込みまでしてたのかよ!」
突如、空間転移指輪から炎が噴出、炎剣と炎棍棒の形を取り、スーッと移動してソティとエルラがキャッチする(持ち手部分は燃えておらず、握れた)。
炎の精霊の力だろう。
可愛い孫娘のためなら本当に協力を惜しまないな、あの人。いや、人じゃないけど。
「使わせてもらうわ、ライ君! 文字通り、命の炎を燃やして倒すから見てて!」
「ハッ! せっかくライから貰ったんだ。死んでも倒してやるよ!」
「魔王戦までヤンデレするのやめてね!?」
二人の気合に呼応して、剣と棍棒の炎が膨れ上がる。
「ふっ」
「おらあああ!」
迫りくる彼女たちを不敵な表情で見詰める魔王は、「『プロテクト』」と、手を翳した。漆黒に輝く半球状の光が、魔王の周囲を包み守る。
「くっ!」
「硬い!」
炎剣と炎棍棒が全く通じないが、
「『ファントム』」
「なっ!?」
防御魔法が自壊するという幻影を見せると、その隙にソティとエルラが一撃を加えた。
「やああああ!」
「おらあああ!」
「ギャアアアアアア! ……この我が……人間……如き……に……!」
魔王が燃え尽き、灰と化す。
「か、勝った……! はっくしょん! ズビー」
俺が喜びを爆発させようとして、しかしくしゃみをして台無しにしてしまった。
刹那。
「この反応……どうやら、魔王が倒されてしまったようじゃのう」
「そのようじゃのう。せっかく儂らが若かりし頃に生み出したというのに」
「!?」
空に、王冠を被り豪奢な衣装に身を包んだ高齢の男二人が、それぞれ違う映像に映し出された。




