15.「悲しい再会」
まさか、S級殺しが、元勇者パーティメンバーでありファラティアが師事したレイガさんだったとは。
小柄な彼が一体どうやってあのシルエットを、と思ったら、シークレットブーツみたいなのを履いていた。腕の長さも、同様の器具で誤魔化していたらしい。
それらを脱ぎ捨てて本来の身長になった彼が、俺たちと対峙する。
道理で、さっき拳の連打を見せた際に、違和感があると思ったよ。
そりゃ流石に偽物の腕じゃ打てないよね、あの絶技は。
「師匠、何でなの……? 何でこんなことするの……?」
本人を目の前にしても信じられない様子のファラティアが、これは何かの間違いなのだと祈るかのように問い掛ける。
「ファラティア……お前には悪いと思っている。だが、俺っちには、こうしなきゃいけない理由があってな……」
目を伏せるレイガさんに対して、エルラが横から口を挟む。
「ガイアと違って、あんたの家族は生きてるからね」
「!」
レイガさんの肩がピクッと反応する。
「ガイアは親友もろとも許嫁を殺され、残された唯一の肉親である両親も、老衰で死んだ。でもあんたには、妻と子どもがいる。それはつまり、「言うことを聞かないと家族を殺すぞ」という脅しが有効ということさ。違うかい?」
「………………」
レイガさんは答えなかった。
沈黙は、肯定と同義だった。
「ふぅ」と、小さく息を吐いた彼は、悲しい笑みを浮かべて、自嘲する。
「十代の頃の俺っちは、弱かった。この小柄な体格のせいでな。でも、血を吐くような努力を毎日毎日積み重ねて、強くなった。自分で言うのも何だが、今では世界でも五指に入るほどの武闘家となった自負がある。サシで戦えば、相手が剣士だろうが戦士だろうが武闘家だろうが魔法使いだろうが、どんな手練れだろうが倒せる自信はある。それなのに……それが、ちょっと家族を脅しの材料に使われた途端、このザマだ。今や俺っちは、ただの操り人形に成り果てた。いや、もっと酷いな。俺っちは、残忍な人殺しになっちまったんだ」
「師匠……」
ファラティアが目を潤ませ、エルラが険しい表情を浮かべる。
「あたいらを殺すのかい?」
その問いに、レイガさんは腰を落として、右拳を引いて構える。
「俺っちに選択肢は無いんだ」
どこか悲壮感漂うその声は、震えていた。
「師匠! 嫌なの! 師匠と戦いたくないの!」
ファラティアが叫ぶ。
「ファラは、師匠に憧れてたの! だから師匠の道場に入ったの! 同じように小さな身体だけど、そんなハンデを物ともせず、ただ実直に努力を積み重ねて誰よりも強くなった! そんな師匠のことを尊敬してるの! 憧れてるの! そうなりたいって思ってたの! ううん、今でもそう思ってるの!」
泣き喚く声が、荒野に響く。
「……悪いな」
「!」
ただ一言。
その返事で、レイガさんの気持ちは残念ながら揺らがないことが分かってしまった。
「だが、少なからず縁を持ったお前たちに対して、せめてもの情けだ。苦しませずにケリをつけてやる」
そう言うと、レイガさんは、左の中指に嵌めた指輪を撫でた後、俺たちに向けて手を翳した。
「『空間転移』」
マズい!
高空とか地下深くとかに飛ばされたら、死は免れない!
「みんな、逃げ――」
俺の声は間に合わず、俺たちは光に包まれて、空間転移させられた。




