↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/22

13.「元勇者vs剣姫」

「なら、ここでてめぇらを殺さないといけねぇな」

「「「「!?」」」」


 俺たちを殺す!?

 まさか……ガイアさんが、S級殺しなのか!?


 いつもはほぼ使わない長剣を一応抜いて臨戦態勢に入りながら、俺がいつでも幻影魔法を発動出来るように全神経を集中させていると、同じく棍棒を構えて迎撃態勢を取りつつ、エルラが口を開いた。


「いつも荒々しい言動の癖に、こういう時は分かり辛いんだからね、あんたは。要するに、弟子であるソティが魔王討伐に行くのが心配だから、ちゃんと実力が足りているかどうかを試そうってんだろ?」


 え? そうなの?


「……そんなんじゃねぇよ」

「はぁ。本当、素直じゃないねぇ」


 と、そこに、当人が答えた。


「師匠。是非とも手合わせお願いします!」

「温いな。俺様が今からてめぇと行うのは、殺し合いだ」

「! ……はい、望むところです!」


 ということで、ソティはガイアさんと手合わせを行うことになった。


 ……悪いな、ソティ。自分の力だけで戦おうとしているとは思うが、いざとなったら、俺は容赦なく幻影魔法を使わせてもらう。


※―※―※


 少し距離を置いて対峙する二人。


 いつもは片手で無造作に構えるソティが、緊張した面持ちで長剣を両手で持ち、中段に構えている。


 逆に、ガイアさんは右肩に担いで超自然体だ。にもかかわらず、隙が無い。

 っていうか、肩当てはそういう時にも役立つんだね。日本刀と違って両刃だしね。


 そのまま暫く睨みあっていると。


 どこからか飛んできた一片の葉が。


 ガイアさんのすぐ傍で。


 真っ二つに斬れた。


「ふっ」


 刹那、葉を両断したソティの長剣が、ガイアさんが剣を担いでいるのとは逆側から喉元に迫る。


「ほう。随分良くなったじゃねぇか。だがまだ甘い、そらよっ」

「くっ!」


 難無く防がれ、弾かれたソティが空中で一回転、着地と同時に跳躍、今度は上段から斬り掛かる――


「お?」


 ――と見せ掛けて一気に加速しながら軌道が変化、左の銅を狙った。


「フェイントもまずまずだ」

「!」


 が、これもまた剣で受け止められる。


「それなら!」


 そのまま右足でガイアさんの側頭部に蹴りを見舞った。


「剣技以外の選択肢も増やしたのは良いことだ。だがまだ温いな。使えるもんは何でも使え。どれだけ汚くても良い。勝ったやつが正義だ」


 しかし、腕で止められる。


 一旦距離を置いたソティは、腰を落とした。


「ふっ」


 突きの構えで距離を詰めた彼女の剣が伸びた。


「へぇ~」


 ――否、それは刀身ではなく、素早く留め具を外して投げ飛ばした鞘だった。


「面白れぇじゃねぇか」


 鞘を剣で弾いたガイアさんの眼前に、今度は全く同じ軌道で本物の剣の切っ先が迫る。


「まだ甘いがな」


 余裕の表情で迎撃に移ろうとする彼の眼前から――


「!」


 ――剣が消えた。


 腕のみで刺突と思わせておいて、既に体勢を低くしていたソティが、腕を下に引き寄せると同時に踏み込み、死角から一気に剣を振り上げる。


「っと!」


 後方に跳躍したガイアさんだったが。


「やるじゃねぇか。攻撃が当たったのなんて、三十年振りだ」


 顎先に掠めていたらしく、血が一滴垂れる。


「じゃあ、ここからは本気で行かせてもらうとするか」

「!」


 ガイアさんから、圧倒的な重圧(プレッシャー)と殺気が膨れ上がる。


「みんな、もっと離れて! 巻き添えにならないように!」


 ガイアさんから目を離さないまま、ソティが叫ぶと。


「お優しいこった。だが、まずは自分だろ。じゃねぇとすぐ死ぬぞ?」

「!」


 たった一瞬前まで眼前にいたはずのガイアさんが、先程のお返しとばかりに、強烈な突きを繰り出した。

 上空から一直線に。


「くっ!」


 ソティがギリギリで横に跳躍、回避すると、地面が衝撃で陥没、クレーターが出来る。


 一体どのように動けば、地面に立っていた次の瞬間に頭上からロケットのように高速で刺突を繰り出せるのか、全く分からない。


「おら、どんどん行くぞ?」

「!」


ガイアさんが頭上から降ってくる。


 そうとしか表現出来ないくらい、連続で上空からの突きが襲い掛かり、ソティは何とか身体を翻し、跳躍し、躱していく。


「縦に追加して、横だ」

「くっ!」


 そこに、横からの刺突が加わる。


「斜めもな」

「うぐっ!」


 いつしか、全方位から攻撃がなされ、剣で必死に弾き、防戦一方となる。


「あっ!」


 ソティが体勢を崩した。


 マズい!


 俺が幻影魔法を用いようとした瞬間。


「たああああ!」


 ファラティアが炎に変化させた拳を高速で突き、無数の炎塊が飛翔、ガイアさんが避ける。


「おらあああ!」


 回避先を読んでいたエルラが頭上から棍棒を叩きつけた。


 間一髪躱したガイアさんは、息を一つすると。


「やめだやめ」


 納剣した。


「俺様の弟子として、まだ合格点はやれねぇが――」


 ガイアさんは、俺たちを一人ずつ見る。


「仲間の戦力も考慮したら、魔王と戦うのにギリギリ及第点ってとこだな」

「師匠!」


ソティが目を輝かせる。


「そうなんです! 私はまだまだですが、仲間たちは本当にすごいんです! 特にライ君が!」


 !?


 いやいやいやいや! お願いだからやめてえええ! 


「じゃあ今度はてめぇの力を試してやる」とか言われかねないから!

 あんな化け物と戦ったら、命が幾つあっても足りないから!


「へぇ~」


 だが、ガイアさんは意味深な視線を俺に送るだけで、戦おうとはしなかった。


 ……まさかとは思うけど、俺の幻影魔法のこと、バレてたりしないよな?

 相手は元勇者とはいえ、まさかな! そんなことある訳ないか! あはははは!


 こうして、元勇者と剣姫の対決は幕を閉じた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。