11.「邂逅」
「はっくしょん! ……ズビー……」
俺がくしゃみをして唾をまき散らしながら、涙を流し、鼻水をすすった直後。
「「ライさん!」」
ティジィとホルシィが、泣きながら駆けてくるのが見えた。
ああ、そうだ。
これだよ、これ。
救出されたまだ幼い姉妹と、今から感動の抱擁を交わすのだ。
これこそが、悪に打ち勝った証!
勝利の醍醐味!
「ライ君! またくしゃみしてる!」
「ライ! またかい!」
「ライライ! くしゃみしちゃダメなの!」
と思ったら、鬼のような形相のソティ、エルラ、ファラティアが先に到着、俺に詰め寄った。
「え? くしゃみ? いや別に、くしゃみくらい問題ない――」
「問題大有りよ! またそんな無理して!」
「そうさ! ライは頑張り過ぎなんだよ!」
「ライライはもっとファラを頼るべきなの!」
ええええ!?
くしゃみでこんなに心配されること、ある!?
いやまぁ、確かに風邪の症状の一つとして超有名だし、そりゃあ、もし本当に風邪だったら、俺もたかが風邪とかは思わないよ? こじらすと肺炎になって大変だって聞くし。
でもさ、俺のはただの花粉症な訳で。
そこまで心配されるようなものじゃ――
「もしライ君に何かあったら、私、私……! そうよね、私が弱いのが悪いのよね……ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……もっと私が強ければ、ライ君に無理させてそんな状態になることもなかったのに……こうなった以上、ライ君にはダンジョン攻略から手を引いてもらって、私が内臓を売ってライ君の借金を返すしかないわね……! 大丈夫よ、全部上手くいくわ! ウフフ。ウフフフフ」
「ああ! 死なないでおくれ、ライ! 嫌だよ! あたいを置いてかないでおくれ! もしあんたが死んじまったら、あたいは生きていけない! ……こうなったら、やっぱり、あたいの肉をあんたに食べてもらうしかないようだね! ハイエルフの肉で、きっと効果覿面! これでもう、あたいらは永久に一緒さ。フフッ」
「【超知覚】で内臓が丸見えなの! ライライはすごく無理してるの! でもそれは、ファラが弱いからなの……本当にごめんなさい……お詫びに、今度こそファラの血をあげるの! 混血だけど、きっと精霊の血でライライの症状は良くなるはずなの! キャハッ♪」
うわぁぁあああ!
重い重い重い重い!
いやマジで、くしゃみで!? ただのくしゃみなのに!?
「……分かった。今後は無理しない。自分の身体には気を付けるよ」
「本当!? 良かった!」
「ハッ! 約束だよ?」
「ファラの愛が伝わったの! 良かったの!
本当、みんなすごく優しいよなぁ。
たかがくしゃみで、ここまで心配してくれるだなんて。
良し! 決めた!
これからは、そんな素敵な仲間たちを助けられるように、もっと幻影魔法を使って、パーティに貢献していこう!
「っと。遅くなってごめんな」
放置してしまっていた幼い姉妹に向き直る。
「ライさん! 皆さん! 助けてくれて本当にありがとう!」
「うわぁぁあああん! 怖かったよぉぉおおおお!」
涙を浮かべて抱き着くティジィと、号泣しながらしがみ付くホルシィの頭を撫でながら、俺が心から安堵した。
刹那。
「まさか、ギガントメタルゴーレムすらも退けてしまうとはな」
「「「「「!?」」」」」
背後から声が聞こえて、慌てて振り返った俺は、ティジィとホルシィを庇い、前に立つ。
森の中に佇むのは、フード付きのローブを着用、顔どころか年齢性別全て謎の人物だった。
「誰だ!?」
即座に臨戦態勢に入った俺の問いに、その人物は、無感情な声で答えた。
「名などない。ただ、世間ではS級殺しと呼ばれているらしいがな」
「!」




