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7.とある日の2人

アクセスありがとうございます。

前回の投稿の前書きで、閲覧数伸びないと嘆いてしまいましたが、ブックマーク初めていただきました!

ありがとうございます!!

めちゃくちゃ嬉しいです!!

本来なら直接お礼申し上げたいところですが、どうやってすればよいのかわかりません⋯⋯

なのでこの場をお借りしてお礼申し上げます。

改めて、ありがとうございます。

この嬉しさを糧に、最後まで書ききりたいと思います。

「死神さんって、お部屋の中でお仕事のときって何してるんですか?」

「あ? ───内職だよ内職」

「内職」


 普段は仕事で朝から夕方まで外出している死神だが、たまに1日中自室に籠もっていることがある。

 今日はそのたまにある日で、お昼ごはんのオムライスwithスクランブルエッグを一緒に食べているところなのだが。


「それって造花作りとかおしぼり畳みですか?」

「え、逆に今の時代にそんな内職あんの?」

「ないですかね?」

「つーかなんでお前がそんな内職知ってんだよ?」


 ちなみにオムライスの玉子部分は死神が作った。ふわとろ半熟が最高に美味しい。


「仕事で使う魔法陣描いてるんだよ」

「魔法陣!? ファンタジーですねぇ!!」

「俺にとってはクローンだとかサイボーグってのがSFなんだがなぁ」


 今日はオムライスを作ってみますと彼女が作り始めた。チキンライスはレシピ通り、お米に冷凍ミックスベジタブルと鶏肉、調味料を炊飯器に任せて。


「ちなみに何の魔法陣なんですか?」

「まぁ色々だけど───よく使うのは転移だな。あとは能力向上(バフ)とか」

「ファンタジー!!」


 そこからが酷かった。

 卵を割る。キッチンの作業台に卵を叩きつけて───1個目は無惨な姿を晒して、そのままシンクへと流れていった。


「瞬間移動は魔法陣のおかげだったんですね」

「まぁな。壁1枚とかなら魔法陣使わなくても転移できるんだけど。俺はまだランクが低いから、魔法陣を描いて足りない能力を補ってる」

「え、そうなんですか?」


 なんとか2個目3個目の卵をボウルに割り入れ、一緒に入ってしまった殻を一生懸命取り除き。少々こぼしながらもしっかりと混ぜ。


「ステータスを上げれば、そのうち魔法陣なしでもできるようになるんだけどな。今の俺じゃ無理だから、空いてる時間でそういうの作っとくんだよ」

「へぇ〜、死神さんって何でもできるから、手練の死神なんだと思ってました」


 しっかりと強火で熱したフライパンにバシャリと卵液を流し入れ、大きくかき混ぜている間に完全に火が通った卵はスクランブルエッグ、というよりも炒り玉子になった。


「ホント俺って何でもできるんだなぁ。例えばオムライスとか。初めて作ったとは思えないほど完璧なふわふわとろとろの半熟たまご」

「⋯⋯」

「いや〜この仕事やってんのがホントもったいないわ。それに比べて誰かさんは───」

「もうっ、言わないでくださいよ! 私だって自分の不器用さにちょっと落ち込んでるんですから!!」


 見兼ねた死神が、キレイに卵を割り入れ、キレイに卵液を作り、キレイなふわとろ半熟を完成させた。

 そして美味しい。

 彼女はプンスコしながらも、ふんっと気合を入れて宣言した。


「絶対死ぬまでには死神さんよりキレイなオムライス作ってみせますから!」

「⋯⋯そうだな、まぁ程々に楽しみにしてるわ」


〝死ぬまでには〟

 その言葉に死神は一瞬言葉を失いかけて、しかし気持ちを持ち直していつもの意地悪そうな笑顔を作った。

 クローンでサイボーグな人造人間の彼女との生活は、死神が思ってた以上に心地良くて。

 自分の言動ひとつひとつに応えてくれる。

 自分が帰ってくるのを待っていてくれる。

 この満たされるような感覚は───


「世話のかかるペットを飼ってるのと一緒だな」

「何の話ですか?」


 自分より彼女が早く死ぬこともわかっている、それを覚悟の上で生活してるということも、ますますそれと一緒だ。


「え、ペットって私のことですか!?」

「お前以外ないだろ」

「ひどーいっ!!」


 クククと笑いながら死神は食べ終わった食器をキッチンの流しに持っていく。


「チキンライスはうまかったよ、あと料理は慣れだから。じゃあ洗い物はよろしく頼むな」

「⋯⋯はぃ」


 ポンポンと彼女の頭を撫でると、死神は自室へ戻っていった。

 彼の入っていったドアを彼女は見つめる。死神に触られたのは頭のはずなのに、やけに頰が熱くなった。


 ───これはもう、恋じゃない?


「違う違う⋯⋯そんなんじゃない」


 きっとこの感情は。


「チキンライス褒められて嬉しかったんだ」


 研究所にいた頃は、褒められることなんてなかったから。

 常にデータとにらめっこの研究者たち、思ったほどは成果が得られなかったと遺伝子上の父親のため息に怯えていた。

 ペットでもいい、死神には充分大事にしてもらえてる。せいぜい壊れて死ぬまで心地良くお世話してもらおう。

 そう思うとキュウっと胸が痛むのは何でだろう。

 彼女はため息をつくと、ぬるくなってしまったオムライスを口に運んだ。それでも死神が仕上げてくれたオムライスは最高に美味しかった。


 使ったお皿を片付けて、彼女はひと息ついた。

 最近は1人で買い出しも行けるようになったし、掃除だってきちんとできる。

 しかし今日はもう買い出しに行く必要もないし、掃除も午前中に終わらせてしまった。よって夕飯を作るまで時間がある。

 でも大丈夫、こんなときのために用意しておいたものがある。それをキッチンの戸棚から取り出した。


「テッテレー! 初心者でも安心、クッキー作りキットぉ!!」


 誰も見ていないので自分でテンションを上げる。

 大丈夫、ちょっとやってて虚しいだけ。


「えっと、キットの中身は⋯⋯クッキーの素とチョコペンとネコ型ロボ───ネコ型の抜き型と。え、これだけ?」


 その他に無塩バターと卵黄を用意しなくてはいけないらしい。


「無塩バター⋯⋯普通のバターと違うの? え、常温に戻すってどういうこと? 卵の黄身だけって白身はどうするの?」


 ものすごく不安に思いつつも、料理は慣れだと死神も言っていたしとりあえずやってみようと、彼女は腕捲くりをして気合を入れた。



 キッチンからときどき「あれ?」だの「あっ!」だの「きゃー!?」だの聞こえてくるが⋯⋯ 死神はそれに気を挫かれながらも、自室に置いてあるローテーブルで紙に魔法陣を描いていく。

 クローンでサイボーグな人造人間の彼女と一緒に住むようになって、始めのうちはちょっとの悲鳴や失敗でもすぐに手助けしていた。しかしその頻度があまりにも多い、そのうち多少のことは放っておけばよいことに気づいた。本当に助けてほしいときは彼女からきちんと言ってくるし、それ以外は彼女が彼女なりに自分で解決している。

 今もどうせ時間があるからお菓子でも作ってみようと奮闘しているのだろう、キッチンの戸棚にクッキーの手作りキットが買ってあった。

 最近は買い物も自由に行かせている。アパートの部屋についていたパソコンでレシピを調べ、必要なものを買い料理をする。毎日「今日は大成功です」だの「ちょっと失敗しました」だの一喜一憂しながら意外と楽しくやっているらしい。


 しばらくすると甘い匂いが死神の部屋にも漂ってきた。時計を見ると午後3時を過ぎたころ。

 自分も休憩にするかと死神はひとつ伸びをして。その場に座ったままドアのほうに手を向けると。


「ひゃあっ!?」


 急に開いたドアから彼女が転がりこんできた。

 それを呆れた目で見る。


「な〜に人の部屋勝手に覗こうとしてんだ?」

「えぇぇええ、ななななんで⋯⋯」

「お前俺を誰だと思ってんだよ」


 ドアの向こうで先程から彼女が聞き耳を立てていたことも、こっそり覗こうとしていたのもわかっていた。魔法陣を使わずとも離れたドアを開けるくらいならできる。


「お仕事邪魔しちゃ悪いかな〜と思いまして」

「じゃあ覗こうとする前にノックしろよ」

「それもそうなんですけど⋯⋯どういうふうにお仕事してるのかなぁって」

「社会見学かよ───まぁ別に今さらお前に見られて困るものなんてないからな、見に来れば?」


 彼女は床に散らばっている何かが書かれた紙を踏まないように避けながら、死神の隣に座る。

 ベッドと目の前のローテーブルくらいしか家具がない、あっさりとした部屋。

 死神の手元には羽根ペンとインク壺、ノートを広げたくらいの大きさの紙に、漢字のようなアルファベットのようなアラビア文字のような───よくわからない文字が、ところ狭しと円になって書かれている。

 それは正面の壁一面に書かれている大きな魔法陣も同じ。それが部屋を不気味な感じにしている。

 とりあえず彼女は手元の紙を指差す。


「これは何の魔法陣なんですか?」

「これは治癒だな。まぁでも陣としては出来上がってるけど、このままじゃ使えない。今から最後の仕上げをするんだよ」

「仕上げ?」


 死神がその紙に手をかざすと、ふわりと文字が光った。幻想的と言ってもいいだろう、ファンタジー映画でしか見ないような光景に、思わず彼女から感嘆の声が出る。

 徐々に光が弱まりやがて消えると、死神は深呼吸をして手を下ろした。


「はい、これで完成」

「すごーい! これって私が怪我しても治してもらえるのでしょうか!?」


 実はちょいちょい怪我をしているのだ。包丁で指切ったり、ドアで足の小指打ったり───地味に痛いので、治してもらえるならありがたい。

 彼女は期待を込めて死神を見るが、彼は首を横に振った。


「残念だけど、俺が作った魔法陣は俺専用。だからお前大きな怪我すんじゃねえぞ、病院行けねえんだから」

「そうなんですね⋯⋯あれ、じゃあなんで転移は私もできたんですか?」

「それはお前が俺の付属物っていう認識だからだよ、俺とくっついてるのが前提」

「付属物」

「そ。だって考えてみろよ、付属物も一緒に転移できなかったら、転移先でいきなりスッポンポンで現れることになるんだぜ?」

「え、何ですかそのご都合主義」

「いいんだよファンタジーなんだから」


 そこまで言うと死神はぐぅ~っと伸びをした。


「大体なぁ、お前この1枚描くのにどれだけ時間掛かってると思ってんだ、1回限りの使い捨てなのにそうホイホイ使えねえよ」

「描くのが大変なんですね」


 ちなみに壁一面の魔法陣は転移用で、使い捨てではないものの相当な労力と体力と魔力を持っていかれたらしい。

 彼女は出来たばかりの治癒の魔法陣を手に取って、じっと見つめてみる。裏返したり透かしてみたり。変な文字みたいなものが描いてある以外は普通の紙のようだ。


「その羽根ペンとインクって特別なものなんですか?」

「いや別に」

「え?」

「筆ペンでもボールペンでもいいんだけどよ───雰囲気ねえだろ」


 そこまで言うと、死神はバツ悪そうにモゴモゴしてしまった。

 つまり───


「その〝いかにも〟ってかんじの羽根ペンとインク壺は、死神さんの趣味ってことですね?」


 彼女がクスクスと笑うと、死神はムスっとしてしまった。


「じゃあ私がお手伝いで描いたらどうなんでしょう」

「知らねえよ、他人にやってもらったことないし」


 まだ不機嫌続行中、よほど彼女に笑われたのが恥ずかしかったらしい。その様子も彼女にとっては面白いのだが、これ以上からかったら本気で怒らせてしまうかもと我慢する。

 まじまじと魔法陣を見ていて、ふと思った。


「っていうかコレ、コピーじゃダメなんですか?」

「───あ?」


 物は試しですちょっとやってみましょうという彼女に死神は強引にリビングに連れて行かれ、パソコンと一緒に置いてあるプリンターで出来たばかりの魔法陣をコピーする。

 当たり前だが見た目は全く同じものが印刷できた。


「どうでしょう?」

「⋯⋯ただの紙だな」

「さっきの光がふぁ〜っていうのやってくださいよ」


 しょうがねえな、面倒臭え、そんな顔をしながらも死神はコピーに手をかざすと。

 なんということでしょう、ただの紙だったものに、ふわりと光が灯ったではありませんか!


「マジか⋯⋯」

「これ! 出来たんじゃないですか!?」


 死神も半信半疑といった感じで、自分の手の甲に傷をつける。軽く血が滲んだところに、魔力を込めたばかりのコピーをかざすと再び文字に光が灯り。すぅーっと傷が消え完全に治るとその紙も一瞬にして跡形もなく消えた。


「マジかぁ〜」

「やりましたね死神さん! これで魔法陣作り楽になりますよ!!」


 大興奮の彼女に対して、死神はがっくりした様子で頭を抱えている。


「俺の何十年という苦労は一体何だったんだよ」

「まぁまぁ、これからまだ死神続けるなら楽になったって喜びましょうよ」


 彼女は自分の思いつきが大正解だったことを嬉しく思いながら、ルンルンでキッチンに向かう。

 絶賛落ち込み中な死神のためにコーヒーを、自分用にレモンティーを淹れ、先程焼いたネコ型クッキーをテーブルに出し、粗熱も取れていたのでチョコペンでネコの顔を描き仕上げていく。


「何それ、ブタ?」

「ネコです! も〜なんで気持ちよく描いてたのにそうなるんですか!!」

「じゃあこれのどこがネコなのか教えてくれよ」

「え〜⋯⋯ヒゲとか?」

「ヒゲだけかよ。鼻デカく描きすぎなんじゃねえの?」


 落ち込みから立ち直った死神が出来上がったばかりのブタ───ネコクッキーを口に放り込んだ。


「お、味はうまいじゃん」

「ホントですか!? よかったー!!」


 ブタでもネコでも味は一緒らしい。しかし死神がチョコペンで仕上げると、ちゃんと可愛らしいネコクッキーになった。


「死神さん相変わらず器用でいらっしゃる」

「俺の手に掛かればこんなもんよ───つーか、お前に魔法陣描かせたらヤバいことになってたかもしれんな」

「どういう意味ですか?」

「転移先が宇宙だったり傷口から手が生えたり」

「いいじゃないですかプリンターでコピーができたんですから」


 それを言われると何も言えなくなるらしい、死神はグっと押し黙った。しばらく黙々とクッキーにネコの顔を描いてはすぐに口に入れを繰り返し。


「いや、魔法陣はこれからも手描きする。コピーするなんて邪道だ」

「え〜? 時間対効果(タイパ)は重要ですよ?」


 彼女も負けじとブタクッキーを量産しながら。

 死神とクローンでサイボーグな人造人間の彼女の共同生活は、穏やかな時間が流れていく。


 それからしばらく日時が流れ、彼女が買い物に出掛けている間にこっそり魔法陣をコピーをしている死神と、彼が時々こっそりとコピーしているのを知っているがあえて指摘しないであげていた彼女が鉢合わせてしまって、なんとも言えない空気が流れた。


「いや⋯⋯お前がタイパは重要だって言うからよ」

お読みいただきありがとうございました。

明日も投稿予定です。

よろしくお願いします。


ブックマークもなんですが、評価2pt(☆1)もいただいております⋯⋯

こちらに関しては、面白くない、読む価値なし、という意味だと知りました。

私が初心者だというのに厳しいなぁと思ったのも事実。

でもその評価をするひと手間をかけていただいただけ、〝がんばれよ〟ということではないかと。

だって本当にどうしようもなかったら評価する価値もないと思いますので。

いつか☆5をいただけるように努力をしていきますので、今後もよろしくお願いします。

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