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6.新婚さんみたい②

アクセスありがとうございます。

オリジナル小説は難しいですね⋯⋯閲覧数も伸びないし心折れそうですが、最後まで投稿したいと思います。

初心者なのでこれも勉強、書き続けたらいつか上手になって、読んでもらえるようになると信じて!

今日の投稿もよろしくお願いします。

 そいうわけで翌日の夕飯は餃子パーティー。キャベツやニラのみじん切りが出来るか心配だったが、そこは家具家電付きのアパート、なんとフードプロセッサーも備え付き。あとホットプレートもあった。


「うぅ⋯⋯お肉を素手でネチャネチャするなんて」

「お前こないだジャンボタニシ素手で触ってたじゃねえか。まぁでもこれくらいでいいかな」


 肉ダネが出来上がったところで皮に包んでいくのだが。

 プシュッ、何かが弾けた音がしたかと思えば。


「あ、死神さん。もうビールですか? まだ食べられませんよ?」

「作りながら飲むのがいいんだよ」


 そう言って彼は冷蔵庫の前にもかかわらずゴクゴクと喉を鳴らす。


「くぅーっ! やっぱサイコー!!」

「美味しそうに飲まれますね」

「旨いからな、お前ビール飲んだことねえの?」

「ビールどころかお酒も飲んだことないです」

「そりゃ人生損してるな、飲んでみるか?」


 死神は飲んでいた缶ビールを彼女に差し出した。

 彼女は思わず受け取ってしまったが、それと彼を交互に見る。

 死神はいつものちょっと意地悪そうな笑顔。

 その彼の飲みかけのビール。

 これは、試されているのだろうか───ここで遠慮したら負けな気がして、彼女は缶に口を付けると恐る恐る啜るように飲んでみたのだが。


「うっ、苦ぁ!」

「この旨さがわからんとは、お子様舌の残念な奴め」


 彼女が一口で顔を顰めると、死神は嬉しそうにクククと笑った。そして彼女からビールを返してもらうと、こうやって飲むんだよとグイッと呷る。

 なんだかこのままでは悔しい気がして、彼女も少しだけ反撃してみることにした。


「死神さんは気にしないんですね」

「ぅん?」

「間接キス」

「ぶふっ!?」


 げほごほと咽る死神を見ると反撃は成功したようだ、彼女はクスクスと笑う。


「お前⋯⋯何を中学生のような」

「お子様から中学生になりました、順調に成長しているようです」

「〜〜〜〜っ!!」

「大丈夫ですよ、私虫歯ありませんので。さぁ、餃子包みましょう。早く食べたいです」


 彼女はしてやったり、満面の笑みで肉ダネと餃子の皮を持つとテーブルにつくと、思いつくままのイメージで包んでみる。

 意外と難しい。肉ダネを多く入れすぎて包めない、中身を減らしなんとか2つ折りにしたが、ヒダをキレイに寄せることが出来ない。悪戦苦闘しているうちに皮が破れてしまったが、無理矢理餃子っぽい形を作った。


「ヘッタクソだな」

「初めてだからこんなもんじゃないですか」

「俺初めてのときももっとマシだった」


 死神も椅子に座り、皮を1枚取ると肉ダネをキレイに包んでいく。あっという間にお店屋さんで売っているような餃子が出来た。


「上手ですね⋯⋯意外です」

「なんで意外なんだよ、俺うまいって言っただろ?」


 彼女が得意気にビールを呷る死神の口元をジッと見つめる。その視線の意味がわかり、死神は居心地悪そうに身動ぎした。


「やめろ、飲みにくいから」


 ほんのり耳が赤いのはビールのせいなのか。

 彼女はクスクス笑った。

 そして死神にコツを教わりながら、なんとか皮に全ての肉ダネを包みきった。


「それにしてもいっぱい作りましたねぇ」

「100個作ったな」

「作り過ぎじゃないですか?」

「米食わなきゃ余裕だろ、余ったら冷凍すりゃいいんだし」

「冷凍のごはんがあったから、私はそれも食べますけど?」

「食うんかよ」


 二人掛けのダイニングテーブルは、ホットプレートと包んだばかりの餃子でいっぱいだ。

 しかしその餃子の4分の1は───


「お前、自分で包んだ分は責任持って食えよ?」

「食べますよ! 見た目は()()ですけど材料は一緒なんですから美味しいはずです」

「違うんだなぁ、肉汁の量だとか旨味がな」

「え、そうなんですか?」

「しゃあねえから俺が作ったのも食わせてやるよ」

「なんかその言い方イラってなります! でも食べます!! ありがとうございます!!」


 ホットプレートに餃子を並べて焼き始める。

 ジュウジュウと小気味良い音と立ち昇る匂いに、たまらなく食欲がそそられる。

 死神は1本目のビールを飲み干すと、冷蔵庫から2本目を取り出した。そしてもう1本取り出すと彼女に渡す。


「ほい、お前はコレ。果汁100%アルコール1%のグレープフルーツチューハイ」

「えっ、私もですか?」

「そーそー、やっぱ餃子のときは飲まねえとな───そんじゃカンパーイ!」

「ええっ、あ、カンパーイ!?」


 カツン、缶を鳴らして。

 死神がビールを呷るのを真似して彼女もチューハイを呷ると、グビリ、喉が鳴った。


「んっ、美味しー!」


 ジュースより甘さは控えめ、ジューシーでさっぱりシュワシュワと弾ける。これが喉越しというものか。


「そりゃ良かった。だけど今日はその1本にしとけよ。自分の限界を知るまではちょっとずつな」

「でもこれなら何本でもイケそうです」

「だーめだ、そうやってみんな失敗するんだから」

「さては死神さんもそれで失敗したクチですね?」


 死神さんてずいぶん人間っぽいですよねとカラカラと笑う彼女は、すでに酔っているのか。 むすっとしながら死神は1つ目の餃子に手を伸ばす。


「んーっ、うめ〜! お前も俺が作ったの食いたきゃそれ以上バカにすんなよ?」

「バカになんてしてませんよー、じゃあ私もいただきます! うん、あ、熱っ!? でもウマ〜!!」


 彼女も初めて作った餃子を口に運ぶ。焼き目はパリッと中はジュワリと肉汁があふれ、はふはふしないと食べられないのに、ついつい次の餃子に手が伸びてしまう。


「あ、お前それ俺が作ったやつ」

「くれるって言ったじゃないですか───あ、ホントだ肉汁の量が全然違う!?」

「だろ? ありがたく食えよ?」


 ───いいね餃子パーティー、楽しい!


「うん、餃子パーティー最高!」


 たくさん作ったはずの餃子は次々と2人の腹の中に納まり、お酒との相性は抜群だった。死神は否定したが、餃子を白米の上でワンバウンドして溢れた肉汁とタレを白米に染み込ませ、餃子をパクついたあとにその白米を口の中にかき込むのも最高に旨い。

 手間は掛かったのになくなるのは一瞬だった。しかしこんなにも美味しいなら、またやりたいと思うのも不思議でない。


「ふぅ〜、食った食った。腹いっぱい」

「ホントに全部食べちゃいましたね⋯⋯しばらく動けそうにありません」

「いいよ、そこで休んでな。初めて酒も飲んでるし、後片付けは俺やっとくから」

「あっ、でも───」


 なんだかんだ言っているうちに、死神は使ったお皿やホットプレートをキッチンの流しに運んでいる。

 慌てて彼女も立ち上がろうとして、


「あれ?」


 ふわり世界が揺れたような気がして、すとんと椅子に逆戻りした。


「ほれ見ろ、酔ってるんだよ。にしてもアルコール1%で酔うヤツっているんだな〜」

「酔ってなんかいませんよーっ!」

「酔っ払いはみんなそうやって言うんだよ」


 死神はクククと意地悪そうに笑うが、手はお皿を次々に洗っている。

 その様子を彼女はむぅ~っとむくれながら眺めていたが、途中から死神の姿を見ることに真剣になってしまった。


 皿洗い終了後、死神は3本目のビールを片手にベランダへと出ていった。

 彼女は部屋のソファーに座りながらしばらく死神の背中を見ていたのだが。


 ───そばにいきたい?


「違う違う、そんなんじゃない⋯⋯ただ、何してるのかなって」


 彼女は頭をふるふると振るとベランダに出て、死神の隣に並ぶ。

 穏やかで心地良い夜。

 彼は柵に身体を預け、煙草を吸っていた。


「煙草───吸われるんですね」

「あぁ⋯⋯久しぶりに酒飲んだら吸いたくなって。こっちも久しぶり」


 そう言って彼は嬉しそうに煙を吐き出した。

 漂う煙は正直良い香りとは言い難い。それでも死神はこういうのが好きなのかと、彼女がふんふんと鼻を動かしていると、彼は場所を移動して左右逆に並んだ。


「?」

「そっちが風上」


 死神がふぅーっと煙を吐き出すと、それは彼女とは逆方向に静かに流れていく。本当に気遣いができる人だ。


「死神さんて───モテますよね」

「⋯⋯はぁ?」

「格好はちょっとダサ───ぅんんんっ」

「お前今〝ダサい〟って言ったよな」


 途中で咳払いで誤魔化したが遅かったようだ。

 死神は〝ダサい〟に相当ショックを受けているようで、この服結構高かったんだけど⋯⋯あれ、でも何年前に買ったやつだっけなどと言って頭を抱えている。


「口悪いけど優しいし面倒臭いって言っても面倒見てくれるし私が失敗してもフォローしてくれるし。結婚するなら優良物件じゃないですか」

「また〝新婚さん〟の話かよ」


 死神は呆れたように笑うと、短くなった煙草の火を消し、灰皿代わりのビールの空き缶に捨てた。


「まぁ、俺〝かっこいい〟し普通の人間ならモテてたかもな」


 ダサいと言われたことを相当気にしているらしい。かっこいいの部分が強調されている。


「なぁ、俺いくつに見える?」

「え? 合コンの定番の質問? それとも悪魔なロックバンドみたいに10万何歳とかですか?」

「閣下知ってるのかよ」


 死神はクククと笑いながら、新しい煙草を取り出し火をつけた。


「俺はもう何十年とずーっとこの姿のまんまだ⋯⋯普通の人間とは時の流れが違う」


 ふぅ、煙を吐き出し空を見る。


「少しの間一緒にいるのはいい。だけど深い関係になって長く共にすることはできない、普通の人間にとって俺は異質な存在だからな」

「死神仲間とかいないんですか?」

「会ったことねえなぁ」


 意外とこの死神は孤独なのかもしれない。

 彼女自身も実験体として寂しい人生を歩んできたが、それ以上に長い時間、死神はずっと1人なのか。


 彼女も一緒になって空を見る。すると、パタパタと飛ぶものが視界に入った。


「あ、ちょうちょ!」

「ばーか、あれは蛾だ。ここ前が公園だから結構虫が多いかもな」


 その蛾は死神たちの部屋の光に誘われたのか、ベランダに入ってきて───天井に張っていた蜘蛛の巣に引っ掛かった。


「あぁっ!?」


 憐れその蛾は、蜘蛛の巣の主にあっという間に糸でグルグル巻きにされてしまった。しかしまだ死ねずにジタバタと暴れている。


「今ならまだ助けてあげられるんじゃないですか!?」

「⋯⋯なんで助ける?」

「だって可哀想じゃないですか!」

「じゃあ逆に生きるためのメシがようやく食えると喜んでる蜘蛛からメシを奪うのは可哀想じゃねえのかよ」

「!!」


 しばらくすると蛾の動きが鈍くなり、やがて完全に動かなくなった。

 その様子を彼女は眉を寄せて見ていたのだが。


「え⋯⋯? 死神さん、ちょっと見て」

「あ?」


 蛾が淡く光ったかと思うと、小さな光の玉がふよふよと出てきた。それはベランダから外に出ると、すぅーっと空へ消えていった。


「え、今の何?」

「しまったな⋯⋯俺の近くにいるからか。お前、()()()()の存在になりつつあるな」

「こっち側?」

「今のはあの蛾の〝魂〟だよ。肉体が死んだから、魂があの世に向かった───この国では〝成仏〟とか言うかな」

「あの世に行ったらどうなるんですか?」

「さぁ、詳しいことは知らねえけど。〝輪廻〟とか〝転生〟とか。次の新しい肉体をもらって、またこの世に戻ってくるんだよ⋯⋯たぶん」

「たぶんって。死神なのに知らないんですか?」

「管轄外だ」


 蜘蛛は動かなくなった蛾に近付くと、どうやら食事を始めたようだ。見ていられなくなって、彼女は公園へと目を移した。


「あの蛾は幸せな人生だったのでしょうか」

「まぁ蛾だから〝人生〟ではないな」


 クククとバカにしたように笑う死神だったが、彼女は冷めた目で彼を一瞥すると、再び公園を見る。その意識はここではないどこかにあるようだ。


「次、生まれ変わるとしたら───蛾でもいい、蜘蛛でもいい。花とか草でもいい。複製(レプリカ)じゃない〝私〟として自由に生きたい」


 死神は彼女をちらりと見る。視界に現れたウインドウには、相変わらず〝Error〟の文字。


「西園寺百合子の複製(クローン)であるお前には〝魂〟ってもんがない───輪廻の中にいないお前は生まれ変わるということはない。壊れたらそこでおしまいなんだよ」


 彼女の顔が悲しそうに歪む。

 しまった、わざわざ言うことでもなかった。久しぶりの飲酒で口が軽くなっているようだ。しかし一度口にしてしまった言葉は取り消せない。

 死神は彼女の頭をわしゃわしゃと撫でた。暗くならないように、励ますようにニヤリと笑う。


「魂があってもどうせ生まれ変わったら前世なんて誰も憶えてないんだ。魂があーだこーだとか死んだらとか考えるなんて意味ねえよ。ここにいる間は好きにすればいい、悔いのないよう自由に生きろ。ただし、他所様への迷惑行為とか犯罪はダメだぞ?」

「⋯⋯はい」


 彼女は死神の手が頭を撫でる感触を心地よく思いながら。好きに生きろと死神が言うので、さっそく実践してみることにした。


「じゃあ⋯⋯デート連れてってください」

「お前酔ってんだろ」

「そうですね、酔ってるのかも。でも私デートってしたことないんですよ、可哀想だと思いません?」

「いや別に───それとこれとは違うというか」


 2人は火照った身体を夜風で冷まし、彼女がくしゅんと小さなくしゃみをしたところで部屋の中へ戻ることにした。

 蜘蛛は蛾を余すところなく食べると、巣の中央、定位置に戻っていった。

お読みいただきありがとうございます。


初回から23:10に投稿してましたが、前回だけ22:10になってました⋯⋯

焦って予約投稿すると間違えますね。


明日も23:10に投稿予定です。

よろしくお願いします。

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