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【ポンコツ系異世界日常コメディ!】魔人スカーレットは過労でしんどい   作者: 鳴尾リョウ


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第40話 魔人スカーレットはパーティーに出る

 パーティーに出る! たまにはフォーマルで。




「そういえば今日ですよね、パーティー」


 じいやがかなづちで釘を打ちながらスカーレットに聞いた。現在、スカーレットの部屋は先日の大爆発の影響で半壊状態である。


「こういうのって、次の話では何事もなかったように元通りなんじゃないの?」


「何を言っているのかわかりませんが?」


「……まあいいわ」


 同じく部屋の修繕に励んでいる彼女は時計を確認した。そろそろ向かわないと遅れてしまう。


「それじゃあ行くわ。じいやはホントに来ないの?」


「ええ、部屋の修繕もありますし。私のことは気にせず、楽しんできてください」


 珍しく乗り気ではない様子のじいや。いつもの彼なら喜んでついてきそうなものだが……。たくさんの魔人がやってくるから、会いたくない人がいるのかもしれない。


「わかった。それじゃあ、部屋お願いね」


「帰ってきたら、スカーレット様もまた手伝ってくださいね」


 去り際に何か言われたが、都合の悪いことは聞きたくないのでスカーレットはそそくさとボロボロの部屋から出て行った。


「逃げたな。……あっ、あのこと言うの忘れてた。まあ、行けばわかるからいいか」


 そうしてじいやは作業に戻った。



 魔人ランキング。年に一度、最も活躍した魔人を選ぶ権威あるランキングである。その発表はテレビでも放送され、注目度は大きい。


 スカーレットも毎回生放送を楽しみにしているが、最新の回はわけあってスマフォの見逃し配信で観たのであった。


 今日のパーティーは遅ればせながら、それに関連したものだった。


「遅いぞスカーレット!」


 会場に着くと、いつもよりおめかししたソニアが声をかけてきた。


「ちゃんと間に合ってるわよ!」


「三十分前に集合しようと言っていただろ! ギリギリじゃないか!」


 確かにそう言っていた。しかし、慣れないドレスに手こずったと言うのが恥ずかしいスカーレットは、話をすり替えることにした。


「あたしは忙しいんですぅー! 『八位』の人とは違うんですぅ―!」


「こいつ!」


「……ちょっと、やめてよ二人とも……」


 ランキング『八位』のソニア。『七位』のスカーレット。そして、『五位』のベロニカ。全魔人の中でも上位に位置する彼女たちは、実力だけでなくその美しさでも有名だ。一人でも目を引くところを三人がそろうと、周囲は注目せざるを得ない。


 だが、当人たちはそんなことはお構いなしにしょうもないことで騒いでいる。何とかベロニカが二人の仲裁をするとパーティーが始まった。


「皆様、お待たせいたしました。これよりパーティーの開始とさせていただきます」


 マイクを持った司会者が進行を進めていき、ランキング上位者によるスピーチとなった。


「スピーチって言っても、いつも通り全員そろってないじゃない。ホントに上位の魔人って、自分勝手よね」


 偉い人たちの長話に飽きて、テーブルの料理を食べるのに集中しながらスカーレットは言った。そんな様子を見て、あきれたソニアが返事をする。


「どの口が言って……。いや、なんでもない。それより、スピーチは大丈夫なのか?」


「へーき、へーき。適当でいいのよ、こんなの」


 嘘だった。昨日の夜、彼女はめちゃくちゃ練習していた。絶対に言うつもりはないが。


「そうか。ベロニカは……」


 ソニアがベロニカの方を見ると、滝のような汗をかいて小刻みに震えていた。あ、ダメそう。


「ま、まあ。そんなにかしこまらなくても大丈夫だ。……おっ、私の番みたいだな」


 司会者に呼ばれソニアが壇上に向かうと、スカーレットはベロニカに言った。


「あんた、大丈夫?」


「……無理そう」


「……でしょうね」


 毎年ベロニカはスピーチの度にこうなる。いつもは理由をつけて断っているが、今回はどうしてもと頼まれてしまい断れなかった。


 誰にでも得意不得意はある。無理する必要などないと思うが、スカーレットは彼女ができないとは思えなかった。


「……やっぱり、今からでも断ろうかな」


 今にも生気が抜け落ちそうなベロニカに、スカーレットは言う。


「しっかりしなさいよ! あんたはあたしを差し置いて、ランキング五位なのよ! 絶対できるわ!」


 すると、彼女の言葉を聞いたベロニカの体がフリーズした。……やっぱり無理か。諦めかけたスカーレットだったがベロニカの返事は意外なものだった。


「……わかった。がんばる」


 彼女の真剣な表情を見届けると、スピーチを終え戻ってきたソニアと交代でスカーレットは壇上に上がった。



「それにしてもスピーチ良かったな、ベロニカ!」


 全員のスピーチが終わり、食事をしながらソニアが言った。


「……ありがとう。ところどころ詰まっちゃったけど」


 ベロニカは壇上に上がると、大勢からの視線に倒れそうになった。みんなが注目している。早くここから逃げたい! そんな思いに駆られた。しかし、友達が応援してくれている。うつむいた顔を上げてまっすぐ前を向き、たどたどしいながらもなんとか乗り切ったのだった。


 彼女はちらりとスカーレットを見ると、小さくほほえんだ。ありがとう。


「それに比べて、スカーレットはひどかったな」


 ソニアの言葉を無視し、スカーレットはひたすらにテーブルの料理を食べ続けている。あれだけベロニカに言った手前、完璧にスピーチをこなそうとした彼女だったが、マイクの前に立った瞬間頭が真っ白になった。結局、何が何だかまとまらない話をダラダラと話し続け、微妙な空気で話を終えたのだった。


「今度はしっかりな! っと、そろそろビンゴが始まるみたいだぞ」


 壇上が再び騒がしくなっていた。スカーレットは食器をテーブルに置くと、前もって配られていたビンゴカードを手にする。この時を待っていた。


「皆様、お食事とお話をお楽しみのところ恐れ入りますが、ただいまよりビンゴ大会を始めさせていただきます!」


 司会者がそう宣言すると、スタッフたちが奥からたくさんの賞品を乗せた台車をガラガラと運んできた。


「今回の賞品は宝箱いっぱいの金銀財宝、高級車、豪華客船による旅行ツアーなどなど。そして、今回一番にビンゴをそろえた方にはさらに特別な賞品を用意しております!」


 会場は司会者の言葉にざわめく。ただでさえ豪華な賞品に加えて、特別な賞品など今までのビンゴ大会ではなかったからだ。


「特別な賞品! 毎年毎年当たらないけど、今回ばかりは絶対に当てるわ!」


 スカーレットのビンゴカードを握る手に力が入った。


「それではビンゴ大会、開始します!」



 そして、しばらくは淡々と数字が読まれる時間が続いた。五×五マス、縦、横、斜めどれかが一直線にそろえばビンゴになるが、数字が二十個読まれてもまだ誰も当てた者はいない。


「やっぱりなかなかそろわないな。ベロニカはどうだ?」


「……私もだめ。穴は開くんだけど一列にならない」


 二人はお互いのカードを見せ合った。どちらも惜しいところでなかなかそろわなかった。


「ところでスカーレット。さっきから妙に無口だがどうした?」


 いつも騒がしい彼女が先ほどから全然話さない。ソニアはそろそろ『全然そろわないじゃないの!』と彼女が言い出すと期待して聞いた。すると、


「ダブルリーチなんだけど……」


「えっ!」「えっ!」


 二人がスカーレットのカードを確認すると、ビンゴまで寸前というところだった。


「本当だ……。一か十五が出ればビンゴじゃないか!」


 ソニアの言葉にスカーレットは無言でうなずく。ここまで来たら、絶対に当てたい。


 三人は固唾を呑んで司会者の次の数字を待った。告げられた数字は……。


「十五番です!」


 その言葉にスカーレットは思わず叫んだ。周囲が驚くのを構うことなくカードを高く掲げ叫び続ける。


「ビンゴー! ビンゴビンゴ、ビンゴ―!」


 スカーレットは司会者に呼ばれるより前に、急いで壇上に向かった。


「はいこれ、間違いなく当たってるわ!」


 そうして証拠のカードを手渡す。しかし、司会者含め、周りのスタッフは慌てていた。ところどころで「どうする?」「まさかスカーレットさんが最初に当たるとは……」と聞こえてきた。


「何よ! あたしが当たると困ることでもあるわけ!」


 詰め寄る彼女の言葉にスタッフたちは動揺したが、すぐにやむを得ないと決断した。


「しょうがない……。一番にビンゴしたスカーレットさんには特別な賞品を差し上げます! それではどうぞ!」


 スモークがたかれ、カーテンの奥から彼女が良く知る人物が手を振りながら登場した。


 それは彼女の父、ヴァーミリオンその人だった。


「それでは特別な賞品、歴代で最高の魔人として称えられるヴァーミリオン様とのツーショット写真です!」


 会場の反応は様々だった。彼の登場に狂喜する者。ツーショット写真を逃した事実に膝をつき悔しがる者。まるで神でも見たかのように、泣き崩れる者等々。


 そんな様子に急に冷めたスカーレットは、大きく深呼吸をすると会場に響き渡る声量で言った。


「全然いらねぇー!」



 数日後、修繕が終わったスカーレットの部屋で、じいやはあるものを見つける。


「おや、これはパーティーの時の……」


 彼女のデスクの上には、不機嫌そうなスカーレットと、彼女の肩を抱いて満面の笑みで写っているヴァーミリオンの親子写真が飾られていた。


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